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生きるために書く。書くために生きる。ラベルでも人のためでもなく、自分の幸せも大事に、言葉を紡ぐ。-Misato
MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?7期生、小田実里さんに詳しく聞いてみましょう。
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簡単に自己紹介をお願いします。
小田実里です。高校生の時に『今日も明日も負け犬。』という、福岡で高校生だけで創った映画の脚本家を担当していました。最近はコラムとエッセイ、小説など、物書きをしてます。
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映画の脚本を書くようになったきっかけはどのようなものだったんですか?
小学生とか中学生とかの頃はテニスしたりバレーしたり、わんぱく小学生でした。全然インドアじゃなかったです。
でも、高校1年生の時に、それまで7〜8年ぐらい続けていたテニスを辞めたんです。
親の意見、先生の意見、先輩の意見とかも全部無視して「辞めます!」って。入部してまだ半年もたたないぐらいの時に、「ごめんなさい!辞めます!」って言って。
それで、辞めたあと、することがなくて、本を読み始めたんですよね。
「暇だなあ」と思って、いろんな本を読んでいたときに、著者のみなさんの共通点を見つけたんです。
「この人たち、300ページとかに渡っていろんな言葉を連ねとるけど、結局言いたいことって最初から最後まで、ずーっと一つなんだなあ」って。
それに気づいたときに、「何か自分も書いてみたいな」って思い始めました。
テニス部を辞めたのも、自分が高校生活に満足いってなかったりとか、背伸びをして入った高校だったので、「上にはさらに上がいる」ということを知って劣等感に押しつぶされそうだったのが理由で。
そんな悩みを吐き出すような友達も作れなくて、感情の吐き場所を探していたときに、「本を書く人」っていうものを知って、「私が私の気持ちをそのままストレートに吐き出さなくても、小説だったら、登場人物に私を憑依させて、そのキャラクターが言ったことにすれば、これは私が言ったことにはならないんだ!」みたいな。(笑)
それが自分の中の正解かな、と気づいて、部活辞めて3ヶ月後くらいには、短編ストーリーみたいなものを書いてました。
文章やストーリーを書くのが得意だと感じたんですか?
そうは思ってなかったです。書いていて、でもそれを人に見せるっていうこともなかったから、「自分は執筆が得意」って思えるタイミングに出会えなくて、ずっと。
でもある時、友達に、書いた文章をもう無理やりに見られたんです。その時、その友達がものすごい感動してくれたんですよ。それで、「ああ、自分が輝けることがここにはあるんだな」って思いました。だから強いていうなら、そのときかな。そのときに、自分ってちょっと文章を書くことが得意なんだなっていうのは、感じました。
それで、監督の西山さんと「今日も明日も負け犬」を作り始めるんですね。
そうですね。原作を3ヶ月ぐらいで書いて、ちゃんと本にして、「100冊ぐらいノリで売ってみようぜ」ってなって、そしたらなんか売れちゃって。そしたら、「映画化しようぜ」ってなって、脚本を書いて、スタッフ集めて、映画化して、っていうのがノリでトントンって。
『今日も明日も負け犬。』あらすじ
中学2年生の西山夏実は、素敵な先生や友達に恵まれ、順風満帆な学校生活を送っていた。
しかし、ある日突然『起立性調節障害』という病気が彼女の体を襲う。
遅刻、欠席が増え、教室に入ることができなくなった夏実は、保健室登校を始める。
病気を周りに理解されないことが、身体だけでなくいつのまにか夏実の心までも苦しめていたのである。
そこで出会った 蒔田ひかる という少女が夏実の運命を左右することに。
生気を失ったような彼女は、口を開くことも微笑むことも全くしない。
夏実はそんなひかるを見て、鏡を見ているような気分になっていた。
夏実は〈ひかるを笑わせる〉という夢を抱き、保健室生活を二人で過ごすが、ひかるは突如姿を消す。
果たして、夏実は病気を抱える体で夢を叶えることができるのか。
二人が紡いだ【奇跡の物語】が、あなたの心に寄り添う。
『今日も明日も負け犬。』は初上映から2年、2023年7月4日の映画DVD/Blu-rayリリースをもって全活動を終了されました。本インタビューはその約4ヶ月前に撮影しています。
「自主上映で2万人を動員! 女子高生だけで作った映画「今日も明日も負け犬。」の活動が終わるわけ」
小説から映画化と急展開だったと思うのですが、振り返ってみてどうですか?
まず、身内でやってたものが世に出て、知らないどこかの誰かに評価されるのはすごい嬉しいなって思って。メディアとかにもめっちゃ出るようになって、ありがたいなとも思いつつも、「だがしかし」っていうところもあって。
自分にラベルがついていくんですよね、どんどん。メディアに出るごとに。
しかも、ラベルがついていないと、メディアには出れないみたいな。そういう感覚。
例えば「脚本家 : 小田実里」っていう、そのセット感が、なんだろう、しっくり来なくて。自己紹介のときに「脚本の小田実里です」って言うんですけど、それを言うと、相手はもう「脚本家」というフィルターを通しての自分しか見てくれていないような気がして。
話も「小田美里と話している」のではなく、「映画の脚本家と話している」感覚なんだろうな、というのを、相手の目を見て感じました。
別次元にいる、隣にいる「自分」と相手が喋っているみたいな感覚で自分も誰かに喋らされてるような感覚があって。「本当に自分のやりたいこと」とか、「人からの見られ方」とか。「あれ、どっちなんだろうな?」みたいな。「本当にやりたいことって何だろう」と悩んだ時はあります。
今はどうですか?
今は前ほど悩んでいないです。
最近自分の中で大事にしている言葉があって。知り合いの映像作家さんが、
「人のためとかじゃなくって、周りはあなたが幸せだったらもうそれで全部いいんだよ」
っていうことを言ってくれたときに、「確かに」と、すごく腑に落ちたんです。
でも、それはその時に初めて言われた言葉ではなくて。今まで、おそらく友達にも言われたし、いつも支えてくれてる人、応援してくれてる人にも言われてた言葉だったけど、それを完全には受け入れられてない自分がいたから、やっと自分本位に、生きられている気はします。
それで今は、コラムや小説などを書いているんですね。
コラムは、毎日新聞の「ひとシネマ」っていう企画に参加させていただいて書いています。
Z世代が90年代とか80年代とかの映画を観て、コラムを書くっていう企画です。エッセイは、インターネットサイトの誰でも自由に投稿できるサイトに書いていたり、とか。
https://hitocinema.mainichi.jp/
正直、「これ」っていう道も見つけられてないのですが、本当にやりたいことではあるので、コラムを書いています。
私、周りから「人間じゃないよね」みたいな評価をいただくんですけど(笑)、コラムを書いていると、「意外と私って人間だな」って思うんです。コラムを書いていると、10分前までは自分の中になかった考えとかが、「ポンッ」て出てくることがあって。
その瞬間に出会えたときの、「あ、自分ってこう思ってたんだ」とか。綺麗ごとじゃない、自分の「ナマ」が出た時に、何か「なんか自分、面白いな」って。自分を好きになる感覚はあるかなって感じです。
小説の方は、人から依頼されて書いているのですが、それがすごい依頼でして。
「自分の初恋を小田さんに小説にしてほしいんです」って、ボンってDMが来たんです。当初2ヶ月くらいの想定で引き受けたんですが、気がつけばもう3ヶ月くらい書いています。
「今日も明日も負け犬。」の時は、同じクラスの友人の実体験だったので、距離も年齢も近く、キャラクターの気持ちとかを表現しやすかったんですけど、今回の依頼はまだよく知らない方で。依頼主の方に、初恋のエピソード1から100まで事細かに語ってもらって、私が文字に書き起こす、という作業を延々とやっています。他人ですし、歳も離れていますし、結構難しいですね。少し停滞しています。
書くことへのモチベーションはなんでしょう?
モチベーション、なんでしょう…。
1個は自分の「人に話せない気持ち」とかを吐き出す場所みたいな。
なんか、面と向かって話せないこと、例えば、「これ言ったら嫌われるだろうな」とか、「気まずい関係になるだろうな」っていうことを、日頃私は貯めてしまっていて。文章として形にすることでそれを解消して、そしてそれを読んでくれた人が共感してくれることとかはモチベーションになります。
あとは、それを文章を書いて世に出すっていうことが、どこかの知らない誰かに聞いてもらえてるような感覚になるので、それが割とモチベーションだったりします。
書くことは好きですか?
好きなんでしょうね。好きなんですけど、なんか書かなければ自分は死んでしまうような気がしていて。死んでしまうというか、心が死んでしまうみたいな感覚がずっとあって。だから書かないと生きていけない人間なんです。
だからこそ、「本当に好きなのかな?」ってなるときもあるかもしれないです。たまに。
「楽しい」という100%の気持ちの中の、奥底に隠れた0.002%ぐらいのところに、「自分の心を保つ方法」というか、「自分が自分でいていいって思えるための手段」という思いが隠されていると思います。
仕事としてと自分の中の表現では何か違いがありますか?どちらの方が好きですか?
ムズイですね。私的には、もう全く別物だな、と思いました。
私情を挟んでいいものと私情をはさんではいけないものみたいな感じで。
お仕事としてだと、求められているものと自分が描きたいものが違ったときに、自分の中から出てくる感情とか、たまに「ああ、なんか、自分これ本当にやりたいのかな」ってマジで本当に思うんですけど。
でも、自分がやりたくてやってる時って、誰かに見られてるとか誰かに届いてるとかっていう感覚がないまま、やっていることが多くて。それも案外孤独で。
でも求められたり、依頼されてやっていると「義務」がそこで生じるから、苦しむ期間はめちゃくちゃ長いけど、でも、いい意味で「仕事」だなって思えたり。やってるところはあって…え〜何かこの質問、すごいな、際どいな。
でもやっぱり思うのは、仕事って本当に「仕事」だから、思い出も何も残らないんですよ。「自分、ここつらかったな」とか、そういう「仕事における思い出」とかはあるけど、「この仕事に対して自分がこういう思いで取り組んだ」とか、「こういう思いで取り組んで、この人を笑顔にできればいいなと思って」とか、「自分は元々こういう悩みを抱えてそれを克服するために〜」みたいな、「思い出の細分化」が、多分仕事だとできなくって。どんどん事が進んでいって、それを1個1個思い返す場所もないから。
だから余計に、高校生のときの、本当に自分がやりたいと思って「ウェイウェイ〜」ってやってたときの、仕上げようっていうよりも、とにかく楽しもうと思ってやっていた時間っていうのが、いつどんなときも、鮮明になるんです。
例えば、映画のロケ地とかを未だに通るときがあって、そのときにやっぱり思い返すんですね。
「ああなんか、ここで水かけあったな〜」みたいな、「馬鹿なことしたな」とかっていう思い出とか。成果物を生み出す以外の、それに付随した時間の過ごし方みたいなものを思い出すのが好きなんですけど、仕事をしているときは、その「横にくっついてる」ものがなくって。とにかく思い出すことがなくてっていう。
そういう「思い出が残るか残らないか」みたいなのが違いとしてあるかなって思います。
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1〜2年後、何をしていると思いますか?
1〜2年後か…いうても2年後、ですよね。でもずっと書き続けてたいなとは思います。
現に私の言葉が響いてくれてる人を目の前で見ているから、自分にできることがもっと何かあるんじゃないかな、っていう。全然大きいことじゃないけど、目の前の人でこんなに響いてくれてる人がいるんだったら、もう私もそれだけでもう十分です、って感じだから。でもそういう人たちにもっと出会いたいな、とは思います。
物書きとして意識していることはありますか?
嘘はつかない。それしかないかもです。
どういう感想をもらうことが多いですか?
毎回言われるのは、「情景が伝わってきますね」というのは誰にでも言われる言葉ですね。
いやでも「小田っぽい」とも言われるかも。でも「小田っぽい」…って?ってなっている自分も毎回いる。「小田っぽい」ってなんなんでしょう。
でも何かこういうのを考えてると、全てのことを疑ってしまう気がするので、「ダメダメダメ!ダメだよ!」って言って自分を現実世界に引き戻していますね。
小田さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援しています!
[取材日]2023/03/07
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