26歳、サラリーマン。
電車に揺れる23時。
2人しかいないのはもう慣れた。
あなたは薄暗いベールに包まれ音楽を聴く。通り過ぎる踏切、無意味な開閉、唐突なブレーキ。ランプは光る、見上げれば前に座る貴方は笑う。
飛び降りたい物語のテーラーは自分。じゃあ、依頼者はどなた?
雨にきらめく傘を眺めて赤青黄色に混ざる天井。うっとうしくて高く突き上げたら風に揺られて。雨にずぶ濡れ。ぶら下がる傘を見つめて今までの自分を愛しくて蹴り捨てた。
依頼者からの伝言は空耳。勘違いだから知らん顔。でもちょっと聞き返した。戯言を鼻歌で追い返し靴紐を締め直した。
やってやる。
馬鹿にした奴らを見返したいわけではなかった。信頼できなかった自分自身を見返したかった。