アールヌーボー建築~幅3.75mの邸宅
アールヌーボー建築家、グスタヴ・ストローヴァンが自宅用に建てた邸宅の内見に行ってきました。ストローヴァンは、ヴィクトル・オルタの弟子で、ブリュッセルで活躍した第二世代のアールヌーボー建築家です。
外観と構造
曲線美を活かしたアールヌーボー様式のファサードがひときわ目立つ極狭の建物。幅わずか 3.72メートルの隙間に建てられた4階建ての家は、「く」の字型をしており、正面玄関はルター通り、背面はカルヴァン通りと、二つの通りに面しています。
建物内部
中に入ると、明るくて快適な印象を受けます。建物の幅の狭さや、くの字型という構造も不自然な感じがしません。
1階
建物正面のゲートを通って階段を上がると、玄関と応接室があります。応接室を抜け、右手にある階段の脇を通ると、背面側に面したダイニングへと続きます。
正面側と背面側の間に階段があり、ここにはガラス張りの天井から自然光が降り注ぎます。
2階・3階
各階に正面側と背面側それぞれ一部屋あり、2階には仕事部屋と書斎、3階には寝室とバスルームがあります。正面側、現在は通りを挟んで向かいに建物が見えますが、当時はテラスからのんびりした公園の景色が望めたらしいです。
地階
地下には台所があり、建物の正面ゲートを入って階段を降りると入口があります。使用人が外から直接台所に出入りできるように配慮されています。
追記
この家を建設するに際して、建築家のグスタヴ・ストローヴァンは行政当局とかなり揉めたらしいです。例えば、背面側のバルコニーは、当局の指導で建物を 80cm 内側に引っ込めるよう指示されたため、やむなくバルコニーに改築したとのことです。
アールヌーボー建築として当時は贅を尽くした邸宅が多く建てられましたが、この家の建設を通して、ストローヴァンは中流階級でも手の届く建築の可能性を示したとされています。