20.出雲へ②
午前中の出雲大社を後にし、午後は佐太神社へ向かった。
佐太神社は、今回、初めて知った神社で、
Insatagram makana.7のアカウントで息子の日常的な発見を投稿しているのだが、因幡の白兎が出雲へおいでとメッセージがという投稿をすると、
1週間前に出雲へ行ってきたばかりのフォロワーさんが、教えてくださった神社で、
出雲には毎年11月に神在祭というのがあるけれど、その半年後の5月にも裏神在祭をやっている神社があり、11月の神在祭と同じように全国の神さまがそこに集合するという。それが佐太神社だと教えてくださったのだ。
出雲大社から佐太神社まで、一畑電車と、バスがないのでタクシーで計約1時間程。なるべく15時前には到着したいと先を急いだ。
電車を降りて手配していたタクシーの運転手さんがなんとホームまでお迎えに来てくれていた。
道中、佐太神社のことをタクシーの運転手さんに尋ねると、タクシーの運転手さんが子供の頃には餅まきによく行っていたという神社らしく、その地域では大きな神社で、観光客も多かったが、このご時世で、タクシーで佐太神社に案内する人も減ってしまったとのことだった。
10分程で到着して、境内へ行ってみた。
あまりの静けさに、息子と顔を見合わせ、
「ねえ、随分静まり返ってない?ほんとに今日は裏神在祭なの?」と息子に言うと、
「そうだよね。神さまがなんかいないんだよ。オーブも少ししか飛んでないよ。」
お賽銭箱の前には、結界を張るがごとく、紙垂が何個もぶら下がった細いしめ縄が端から端まで張られており、この先は一歩の踏み入れられないようになっていた。
気になって宮司さんに尋ねてみえると、
「神様は先ほど14時に到着しております。今頃、中の方で集まって色んなお話をされているかもしれませんね。」
「え~?こんなに静かですけれど?」と思わず言うと、
神在祭というと、祭りなので賑やかなのを想像するかもしれないけれど、
静かに慎ましいお祭りとされていて、お祭りの期間は、宮司さんでさえ、中には入れず、ご祈祷があっても、太鼓や笛など音がでるものは一切使わないとのことだった。
時計をみると14時過ぎ。今、全国の神さまが中の方に集まっているんだね。すごいね!だから、こっちの方には出てこないのかな?なんていう話をしながら、
その日の宿泊地、松江へバスで向かった。
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翌日は、フォロワーさんに教えて頂いた美保神社を予定していた。景観のすばらしい美保関で、恵比寿さまの本宮でもある神社ということで、水木しげる記念館に行く途中に立ち寄ってみることにした。
美しい海岸線沿いを小さな路線バスで走る。美保神社がある場所は、昔は日本の貿易の港にもなっているところで、小高い神社の境内から見下ろすと、いまだに多くの小さな漁船が停泊しているのが見えた。
美保神社の境内へ入ると息子が言う。
「お母さん、神さまがぜんぜんいない。」
「え?!ということは、やっぱり、昨日の佐太神社に神さまが集まっているからっていうことかな?」
「そうだよ、だって、オーブも一つも飛んでいないし、神さまも一人もいないよ。」
息子にそう言われて、ちょっとがっくりきたのと同時に、神在祭の時期は、裏神在祭の時期でも、神さまは一か所に集合して他の神社からは姿を消してしまうという確認もできた。
一応、ご参拝もし早々と次の目的地に向かいたいところだったが、バスの時間までまだ、1時間以上もあった。
せっかくだからと、昔の停泊港だった頃の面影が色濃く残る通りに足を踏み入れ散歩することにした。
石畳を少し歩くと、店先に土偶や埴輪、縄文式土器のようなものが沢山並んでいるお店があった。
「体験できます。」の紙がドアに張られていて、
息子を顔を見合わせると、
「どうする?体験してみたい?」
「やりたいやりたい!」
お店に入ると、店内には一人の女性が粘土で何かを作っていた。
「息子が土偶を作ってみたいんですけれど、体験できますか?バスの時間まで1時間なんですけれど、作れますか?」
「こういう土偶はどう?でも、完成まで2時間はかかるわよ。」
バスを1本遅らせれば約2時間の時間はある。でも、その代わり、水木しげる記念館にいく時間が遅くなるけどという話をすると、息子がそれでもいいから作りたいということで、土偶を作ることにした。
私も手伝わないと、子供だけで2時間ではできないということで3人で協力してパーツパーツを作ることにした。
粘土をねじり、細くして、手動のろくろを使い粘土をなめらかにしていく。
パーツをくっつけ、ドライヤーで乾かす。
途中途中で、お店のきくえさんから、どうしてここで一人でこのお店をやられているのかなどのお話をお伺いしながらの濃密な時間。バスの時間ギリギリで完成した。窯で焼いたら送るねと、まるで逃げるように、ごあいさつをしてお別れした。もうちょっとゆっくりお話ししたかったな。
旅先で土偶を作るなんて、想像してなかったな。素敵な出逢いだった。
(水木しげる記念館へつづく)
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