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採用の足を引っ張る自社の風評集めと、その改善

年々採用が難しくなっています。少子化、有効求人倍率の上昇、企業の求めるレベル感の上昇など、様々な要因が存在します。

スタートアップ元年の掛け声と共にスタートアップ企業が増え、VC投資とともに成長速度も加速しているため、ITエンジニアのみならずバックオフィスもたりません。CFOの引き抜き合戦は目を瞠るものがありますし、法務が居なくて契約周りが危うい企業もあります。

ITエンジニアに限らず採用が難しい中にあって、早期に気付かないとマズいのが「自社の評判が悪い」と言うものです。過去に一人だけ「評判が悪すぎるので逆に興味があって入社しました」という方の話をお聞きしましたが、99.9%の人は好き好んで評判の悪いところには行きません。

自社のエゴサーチからはじめよう

まず自社の評判を把握する必要があります。私が顧客と向き合う際に気にしているポイントは以下のものになります。

就活情報サイト、転職情報サイト

以前のnoteで「マイナスの感情で書く人が多いので参考程度にしましょう」とお話をしたのですが、企業目線では無視はできません。実際に手元に来ている組織崩壊のお話と照らし合わせると、これらの口コミサイトに書かれている内容は点であっても、数字は極端に低い傾向にあります。ここに書かれている点は改善ポイントとしてリストアップしておいて損は無いでしょう。

Googleマップの口コミ

直接Google検索にヒットしないため、気がつくと恐ろしいことが書かれていたりするのがGoogleマップの口コミです。製品サポートが酷かったというようなものもあれば、元社員による不満、候補者体験としての酷さが書かれることもあります。口コミの中では申請しても消えにくい部類のものであるため、ご注意ください。

GoogleMapクチコミの例
採用に言及するGoogleMapクチコミの例
転職サイトのクチコミに言及するGoogleMapクチコミの例

一般的なWebサイト、SNS

私がよくやっている手法ですが、Google Alertに企業名を仕込み、チェックする方法です。概ねプレスリリースや連携しているアフィリエイトサイトなどがヒットしますが、稀に危うい風評があります。Slackに流し込みつつ、気になるものは企業内部にエスカレーションしたりしています。ベースはGoogle検索なのでsite:などの絞り込み検索も可能です。

社内の定期アンケート

定期的に従業員にアンケートを配布するシステムです。エンゲージメントサーベイなどと呼ばれています。従業員満足度のモニタリングと、改善点の拾い上げをしましょうというコンセプトです。社内から自社の状況、任意の組織の状況を知りましょうというものです。

私も過去の在籍企業でいくつか取り組んでいたのですが、懐疑的なポイントがいくつかあります。

一つはパルスサーベイと呼ばれる現象です。定期的にアンケートが来ることで「あぁ、またか」と思い適当な回答になるというものです。

一つは自由入力欄で上長の心が折れるというものです。驚くほど組織運営の苦情が来るケースがあります。サーベイが有効であるということを示すために回答が上長の仕事として回ってくるわけですが、好き放題言われる自由記入欄はなかなかに辛いものがあります。自由に入力をして良いフォームが目の前にあったときに、感謝の言葉を述べる人よりも苦情を詰め込む人が多いコミュニティはあります。

ポジティブに捉えると苦情が来るということは改善の期待されていると捉えることができることもありますが、エンゲージメントサーベイのゴミ箱化のようなことが発生するケースもあり、個人的には自由入力欄は嫌いです。ちょうど立教大学中原淳先生が「告げ口ツール化するパルスサーベイ」についてお話しされていたのでご紹介しておきます。

エンゲージメントサーベイでは数字化され、グラフで推移も取ることができるためデータが好きな経営層には非常に喜ばれます。しかし組織によっては健全に運用されることは難しいため、盲信は禁物です。

採用像に近しい知人へのインタビュー

最近やってみているのですが、候補者になりえる友人知人に対象となる企業の印象をヒアリングするといったものです。特に選考とは関係のないところでのやりとりなため、フラットな印象を回収することができる他、それを企業内で「よそから見たこの会社はこういったイメージです」と第三者の意見を伝えることで決まる会社方針の意思決定はあります。

気心の知れた人材紹介会社担当者にインタビュー

人材紹介会社は担当者の脳によって処理されていることが殆どであるため、一度ネガティブなイメージが波及するとSEO施策のように改善できるようなものではなく、個別のコミュニケーションが必要です。

過去に私が経験したものは、人事採用担当者が「お金を払っているのはこっちだ。だからいい人を寄越せ」と劇詰めするタイプだったので非常に悪評が厳しかったというものです。概ね払拭するには3年かかりました。

また、人材紹介会社の担当者は他社の人材紹介会社へ転職をしたり、独立することが多く、悪評を払拭する間もなく想定外のところに人とともに噂が拡がっていきます。このため、担当者交代から5年経過しても尚、悪評が残っているケースがありました。

もう一つの風評:あの会社、業績が悪くて採用していないらしい、という噂

これまで自社の風評についてお話をしてきました。最後にもう一つ注意しなければならない風評があります。それは業績に応じて採用を止めるような場合の対応策です。

急に全ての採用を止めてしまった場合や、ストレートに「業績都合で取り下げます」といったことを伝えてしまうと、採用界隈で「あの会社はやばいらしい」という噂が駆け抜けています。

例えば「予定数よりも採用しすぎてしまった」と伝えてみるであるとか、止めた後も自社の採用サイトの求人は開けておくといった工夫が望ましいです。前述したように、一度落ちた風評を挽回するのは3年以上かかります。くれぐれもご注意ください。

噂への対応策

基本的には外部への発信と、個別対応になります。

自社の状況がクリーンなものであることを外部露出することは必要不可欠です。ブログであったり、イベントのようなものに出て行くのも有効です。

人材紹介会社への対応

また、人材紹介会社に対して「紹介できるイメージを持って貰い、紹介を躊躇うような企業ではない」とアピールを重ねることも重要です。人材紹介会社は自社に変わって候補者にアピールする機会を持っているだけでなく、前述したように人材紹介会社の中の人自身が転職していくことで口コミが拡がるため、それをポジティブに利用しようというものです。

ここで効いてくるのはフィードバックです。たとえお断りする人であっても

「弊社であればここを改善すれば採用できる」
「弊社では厳しいが、こういうところは良かったのでこういった企業では採用できるのではないか」
「こういったところが拙いので、御社内で対応をしないと厳しいと思います」

といったように次に繋がるイメージを持って貰うことで、ポジティブな印象に変わっていきます。もっとも、あまりに採用が決まらないと「付き合っても費用対効果が悪い会社だ」と認定されるためご注意ください。

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