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将来の不安に乗じた未経験ITエンジニアや独立開業のススメ/言説の流布と、乱用される承認
これまで本コンテンツでは未経験エンジニアやフリーランスを対象とした情報商材について何度か取り上げてきましたが、どうやら更に変化を遂げているらしいというのが今回のお話です。
【傾向】狙われるライフステージの転換期
以前のコンテンツにて下記のようなことを書かせていただきました。
先日、「40代になって気づいた人たちがSocialDogを使ってTwitter投稿する傾向がある」というポストが流れてきました。
(略)
45歳定年説を前提として上で40代を決め打ちしたり、これから40代に差し掛かる層に対して「これからはエンジニアになり、フリーランスにならないと生き残れない」という文脈で過度にエンジニアフリーランス礼賛をする一派が現れることが予測されます。
その後、ちょくちょく異業種からの40代未経験エンジニアというお話を耳にするようになりました。各インフルエンサーやアフィリエイターも転職成功事例として「40代未経験でAWSエンジニアとして転職できた方も居られます」などと語り始めました。「も」に自信が感じにくいですが。
これまで未経験からITエンジニアを志す方々は20代が中心で30歳が少々というのが主だった構成でしたが、ターゲット層が拡大しているようです。一例としては下記のようなものがあります。
・45歳でのリストラがニュースになり、手の打ち方を考えたい
・コロナ禍による現職の不安定化(飲食や観光など)
・予定になかった出産、一人の予定が双子だった
・身体が資本の仕事だったが、怪我をした
元々ある程度の年収や待遇だった方であったり、良い大学を出ている方であっても、上記のような不安があり一発逆転を願っているところに各種情報商材はよく浸透するようです。
【傾向】オンラインサロンでもスクールでもなく、友達や家族に勧められる動き
ITエンジニアに関する行き過ぎた言説のうち、今でも残っているのは下記2点のようです。
・いつでもどこでも働ける
・フリーランスになって年収1000万円
(年商の誤用や、「ITフリーランスエンジニアのなりかた」という有料情報商材による収益を含む)
少し前まではこうした「他業種に居ましたがこれからはITエンジニアで稼ぐ時代だと思うので来ました!」という方はオンラインサロン、LPが派手なプログラミングスクール、及びYou Tube登録者でした。そしてそのまま一次情報発信者であるプログラミングスクールやオンライサロン主、You Tubeチャンネルにそのまま入って終わりでした。
しかしここに来てプログラミングスクールやオンラインサロン、ユーチューブ視聴者登録などせずに「友人知人に勧められた」「親に勧められた」という経緯で上記と同等のマインドを持たれている方が現れ始めました。
先立ってTwitterでも「久々に友人からLINE来たと思ったら、『エンジニアって儲かるみたいだな!プログラム教えてくれ!』と言われた」という内容がありました。過激な勧誘合戦を引き金に広まった過激な言説がキャズム超えし、独り歩きしたり口コミとして拡がったりしているようです。こうなると沈静化するには時間がかかりそうです。
年齢問わず、
— 久松剛 (@makaibito) October 1, 2021
「未経験から〇〇(エンジニアとは限らない)になって数ヶ月で人生逆転」
という文脈は
・企業によるLP
・中小情報商材
というムーブメントを経て
・上記の情報が伝搬浸透して友人知人親族からのススメ
という動きが見えるようになってきた。現場からは以上です。
【傾向】「独立して稼ぐ力を身に着けよう」という文脈でのマルチまがい商法
IT界隈だと「フリーランスになって自由な働き方をしよう」という情報商材が流布していますが、他業種では伝統的なマルチまがい商法も進化をしているようです。フリーランスとも共通した「独立」「自分で稼ぐ」というキーワードが入っているようです。
具体的な勧誘内容として私が耳にしたものは下記のフローでした。
・販売員から主にクチコミで美容機器を購入
・商品が届くもマニュアルがなく、使い方セミナー(※1)に参加しなければならない
・セミナーに参加
・通常会員であっても友人知人に売るとインセンティブが入る
・一定条件をクリアすると社内の資格試験が受けられる
・社内資格試験に合格すると※1のセミナー講師が担当でき、インセンティブが増える
・「これであなたも独立して自分の裁量で稼げる」と鼓舞する
どう見ても当該企業に依存しているので「独立して稼ぐ」という表現は違うのではないかと思いますが、インセンティブや承認のロジックはよくできているなと感じます。
整体師さんとリラクゼーション界隈におけるスビリチュアル、及びマルチ商法との相互作用が半端ないですね、という話をしてた。
— 久松剛 (@makaibito) October 16, 2021
目に余る承認の乱用
いずれの情報商材やマルチまがい商法であっても、共通している手法として「承認」がトレンドのようです。
NHKのオンラインサロン特集(本編)でもありましたが、多くのオンラインサロンの場合、規約レベルで「承認しなければならない。否定してはならない」という条項があるとのことです。
先の美容機器販売は「宇宙エネルギー」「宇宙との更新」の文脈でスピリチュアルなものに興味がある人達を取り込んでいるとのことですが、何を言っても受け止め承認してくれるそうです。話を聞く限り天動説を唱えても行けるんじゃないでしょうか。
日常生活でありのままの自分を表現すると「何言ってるんだ?」と思われて怪訝な顔をされてしまう。しかしここでは承認してくれる。自分の居場所ではないかと思える。ありのままの自分を表現しても笑われない。しかしその代償は高く、良いように主催者にお金が入る仕組みに組み込まれてしまうだけというお話です。
承認されるというのは生きていくで大切なことではありますし、気持ちよくなれます。しかし「無条件で承認してくれる場所を探す」と貧困ビジネスに遭いやすいので「体系だった知識と経験を元に言語化し、承認して貰えるように努力する」というのが結果的に損をしないでしょう。
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最後に:未経験からITエンジニアを志される方へ
人生100年時代ではありますが、学習コストは低くないので万人にオススメはしかねるのがITエンジニアです。現役のITエンジニアでも苦悩を抱えているので、ミドルからの新規参入はオススメしかねます。
それでもITエンジニアを志されたい方は、まずは適性から見てみることをオススメします。よほどこれまで培ってきた何かとリンクしない限り、未経験の年収は230万円程度からだということ、苦労してITエンジニアになれたとしても数ヶ月で辞めてしまう方も少なくないことを合わせてお考えください。
重ねてになりますが、他職種から見たITエンジニアについてのイメージは情報商材屋さんのPV稼ぎのために作られた虚像です。下記コンテンツについてもご参照ください。
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