光ってスキップ(一人輪読会)
【概要】
RNA-binding proteinの一つであるtranscriptional antiterminatorタンパク質(LicT)に光応答タンパク質Vividを結合させて青色光依存的に翻訳が延長するタンパク質Lic Vを作った。
【背景】
RNAは翻訳以外にもさまざまな機能を持つことがわかっており、そのような機能を時空間特異的に制御することは1つの課題である。しかしそれにはいくつかの問題があった。
1、RNAの翻訳活性制御として最も使われてきたものとしてcaged-RNAがあるが、活性化する場合紫外線(365nm)を照射する必要あり。
2、そもそもcaged-RNAを作成するのが難しい
caged-RNAについては↓の論文より
そこで筆者らはRNAそのものからRBPに注目点を変えることでこの問題を解決しようとした。すでにDNAと光依存的に結合するシステム(Gal4-VVD)を作っていた著者らはそれを応用する形で今回の問題に取り組んだ。
【結果】
Fig1:LicVの設計とスクリーニング
設計ではLicTと呼ばれるRNA結合タンパク質のCAT domainにVividという光スイッチタンパク質(LOV domainが内在している)をリンカーで結合させている。
Vividは光で活性化されると2量体を形成する。これによりantiterminator配列(RAT)を活性化させterminatorを飛び越えての転写が可能となるという寸法である。最適化のためにFACSベースでスクリーニングを行ったのちvalidationしてS/N比の高いものを選択している。
Fig2:LicVを用いたmethodの提示
LicVをいくつかの既存テクノロジーを用いてRNAを光依存的にコントロールするということを行っている。
1、LicVを膜にアンカーして光依存的に局在化させる
2、LicVにsplicing factorの一部(具体的にはSRSF7のarginine/serine-rich domain / hnRNP-A1のglycine-rich domain)を結合させてsplicingを上昇させる
3、転写因子eIF4Eと結合させて転写を行う
4、RNA分解酵素であるBarnaseと結合させRNAが分解されることを示している。なお、分解されるRNAとしてPepperを選んでいる。
Fig3:dCas9との組み合わせによる転写調節(LA-CRISPER)
sgRNAにRATを組み合わせる+LicVに転写活性化ドメインVPR(VP64,p65,Rtaをfusionしたもの)を結合させ転写調整に応用している。LicVとVPRの間のリンカーを後半のパネルではいじっている。(GGGGS*1かつ8×RATがS/N比最大)
Fig4:LA-CRISPERを用いて遺伝子座の標識化
LicV-GFPとdCas-mCherryを用いてセントロメアの標識化を行っている。光依存的にGFPの集合が起こり、4-5hで消退する。既存のblue light receptorであるPALとの比較も行っている
【感想】
antiterminatorを利用したLicVの発想自体はとてもおもしろいと思った。CIBN-CRY2のように2つのタンパク質が必要になる構造ではなくVividを持ってくるというのもより簡便な使用に繋がると思うので個人的に良いと思う。ただ後半のLA-CRISPER周りの話(特にFig4のあたり)は既存のシステムでできてしまうのではないか。専門家ではないのでわからないが遺伝子座を一時的に標識するということにどれほどの意味があるのかもう少しDiscussionで説明があると良かった。