製薬会社におけるエンジニアの仕事
医薬品メーカーに勤めていて、いつも思います。エンジ会社にできなくて、我々社内エンジニアにしかできないことって何だろうと。いくつか思いつく限りを以下に記します。
1. 設備保全
修繕などの作業は外注できるにしても、会社の経営を踏まえた修繕費や用役費の予算策定、保全計画の立案、そして生産プロセスの理解に基づいた設備故障解析など、ユーザー視点での設備保全は社内エンジニアの強みだと思います。
2. 工事安全管理
工事自体の安全管理は工事請負業者が担うべきであるが、安全に工事ができる状態を工事請負業者に引き渡し、業者の安全を配慮することは労働安全衛生法で求められている。業者が安全に工事ができる環境を整えることで、結果的に工事による事故を防止することが社内エンジニアの役割だと考えている。その環境を整えるところにノウハウや技術が必要であり、社内エンジニアにかできないことだと考えています。
3. 内製化
修繕、設計、校正、バリデーション(IQOQ)など、外注する方がコストがかかる場合が多いため、社内リソースを考えて何を外注して何を社内で実施するかの計画立案は社内エンジの役割だと思います。その際に、内製化できることを増やしておくことが重要であり、社内での人材育成も社内エンジの大切な役目だと思っております。
4. ユーザー要求の具現化
社内エンジをしてていつも反省するのが、設備を導入してから、現場のユーザーから「思っていた設備と違った」と言われることがある。ユーザーの要求をどのように実現するのかをまとめたユーザー要求仕様書(URS)の作成が肝であり、様々な関係部署を巻き込んで取り纏めていくことが、社内エンジにしかできないことだと思います。
5. 設備投資
会社の利益を考えて設備投資を立案することは、社内エンジニアが出来ることの一つだと思います。設備を設計して金額を弾くことや、投資効果を検証することなど、社内エンジでしか出来ないことだと思いますし、経営判断に関わる重要な仕事だと考えます。そのためにも、社内エンジニアは設備の減価償却費の推移や製品数量・製品原価を十分に理解する必要があると考えております。
6. 環境対策・省エネ
ESG投資が活発になり、投資家は目先の利益ではなく社会にどれだけ貢献しているのかに目を向けるようになりました。SDGsなる社会貢献のグローバルな目標も現れ、環境対策と省エネはコスト削減だけを考えれば良い時代ではなくなったと感じています。環境対策と省エネには設備が大きく関わっているため社内エンジニアが関わることが多く、これまでコスト削減や法令遵守といったネガティブな活動から積極的に社会に関わっていくポジティブな活動にシフトしていくに伴い、社内エンジニアが活躍する機会が増えていくものと考えております。
7. 新設備技術の導入
社内に新しい技術を導入して生産性や安全性、品質を向上させることは、社内エンジニアが常に社内ニーズに目を向けながら外部から情報を収集し、メーカーとコラボするなどの調整を行っていく必要があると考えてます。現状の問題に対して、これまでの延長線ではない新しい解決策を見出すのも社内エンジニアの重要な役割だと思います。
8. 技術の伝承
最後に、会社の技術やノウハウは伝承され、その上に新しい技術やノウハウが積み重ねられ、発展していかなければなりません。これが会社の競争力になりますし、社内エンジにしかできない最も大切なことだと思ってます。社内エンジは常にこのことを意識して行動していく責任があると、私は考えております。