ジェネリック医薬品業界の現状を考える
医療費抑制の観点から、国はジェネリック医薬品の使用割合を80%以上にすることを目標に掲げて以来、ジェネリック医薬品は広く国内で普及したと共に、参入するメーカーも多くなりました。私の勤務する製薬会社でもジェネリック医薬品を扱っておりますが、そんなジェネリック医薬品業界で起きていることを考察したいと思います。
1. 競争よりも分業が進んでいる
参入企業が多いが、自由に価格設定できない、メディア等で製品広告ができない、エンドユーザーである患者さんはメーカーを選べないことにより、競合他社と競争できない、または競争してもメリットがないのが現状であり、各社自分の得意な製剤の生産に特化しているように感じています。ジェネリック医薬品は、多品種少量生産を行うと設備稼働率を上げることができず採算が取れないことが多いため、各社苦手な分野は生産しない、または生産を同業他社に委託することになり、その結果、分業が進んでいると考えています。
2. 品質保証システムの歴史が浅い
全てのジェネリック医薬品メーカーに当てはまるわけでは無いが、特に近年新規参入したメーカーにとっては、医薬品の製造に関する品質保証の仕組みが構築されたばかりであると思います。医薬品の品質保証システムは初めから良いものを構築できるものではなく、GMP(医薬品製造のための基準)が日本に導入された1990年頃から製薬メーカー各社がノウハウの蓄積や文化・風土を醸成してきたものであり、各メーカーによって成熟度に差が出てしまうものと思っております。また、近年、医薬品の品質は研究開発段階から作り込むという、Quality by Designという考え方が浸透し、開発に関わっていないジェネリック医薬品メーカーにとっては、製品を十分に理解するという点で不利な状況を被っていると思います。先般起きてしまったジェネリック医薬品の薬害問題についても、こういった背景が原因の一つにあるではないかと考えております。
今後、ジェネリック医薬品業界はどうなっていくのでしょうか。さらに分業が進み、得意な製品を持たないメーカーは撤退を余儀なくされると考えております。また、品質保証システムについてもさらなる向上が求められ、長い歴史を持たないジェネリック医薬品メーカーが高度な品質保証システムを構築するためには、システムをデジタル化して運用をガチガチに固めていく流れになるではないかと考えております。医療費がますます増大している中、今後もジェネリック医薬品が果たす役割は大きく、高品質のものを安価に生産することで最終的に患者さんと株主の方に何らかのメリットを有して頂けるよう、日々精進して参ります。
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