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誰がためにマルシェやる?その2:人口減少という大競争時代に向けて

前回記事ではマルシェ、会場となる「防災空地」、そして小田エリアの概要をお伝えしました。

今回はもう少しその内側の軸となるような観点を書いてみたいと思います。

まもなく首都圏の人口ボーナスが終了する

地方は以前より特に若者の人口流出に苦しんできましたが、都市部は未だ人口増加を享受しています。この人口増加というのは生活レベルでは様々な課題を引き起こすことがありますが、一方で経済的には「人口ボーナス」とも呼ばれる強みでもであります。要は、働く人が増えて生産量や需要量も増えれば、それに従って経済も成長していくというわけです。人口が減ればその逆、「人口オーナス」という現象で経済は苦しむことになります。

そんなわけで、首都圏などの都市部は実際のところ人口減少社会のあおりを実際にはまだ浴びていないわけです。川崎市もそのとおりで、おそらく日常に密接した危機感を持っている方はほぼいらっしゃらないのではないかと思います。

しかし、将来人口推計によれば、10年後の2030年頃をピークに川崎市でも人口減少が始まるのです。都市部が非常に高い出生率ゆえに人口が増加しているのではありませんから、他地域からの流入人口が途絶えてしまうということです。要は、ついに我が国では地方部から都市部に流入する人口すらいなくなってしまうのですね。

この2030年に何が起こるのか?おそらくこのままでは、東京から同心円状にある各都市において、一斉に人口減少がはじまるだろうということです。なぜならば、川崎市も含む各都市が一様にして「東京のベッドタウン」であり、差別化された価値を十分に見いだせていないという現状があるからです。

今までは共に成長しあってそこまで意識もしていなかった隣人が、一気に現実的にパイを食い合うライバルになる。なかなかの地獄絵図ですね。

この先迎える10年というのは、都市やエリアに差別化価値という体力をつけておき、来たる困難にソフトランディングするための最終猶予期間になるでしょう。

これは行政や政治だけがステークホルダーとなる問題ではありません。人口が減れば地域の産業も弱くなりますし、空家が増えれば不動産オーナーはもちろんですが、一市民であろうマンションの区分所有者だって保有資産に悪影響を受けることになるでしょう。

ではどうすればよいのでしょうか?

スモールビジネスで”輸入置換”し強みを尖らせる

ジャーナリスト出身である異色の都市経済学者、ジェイコブズが「発展する地域 衰退する地域」で述べているところによれば、都市の力の源泉は、「イノベーションによって他都市から輸入していたものを自都市で生産する」ということにあります。

例えば、明治維新初期の日本というのは、先進的な技術や物品を全て欧米列強からの輸入に頼っていたわけです。しかし、技術や生産手法を吸収することで、例えば東京でそれを自前で生産できるようになり、さらに東京から輸出を受けていた国内他都市でもやがて自前で生産できるようになっていきました。こうして、自立した経済力を持った現状に繋がっていったのです。

2030年に向けた首都圏各都市の打ち手のヒントもこれと同じではないでしょうか。つまり、「イノベーションによって、他都市で生産され消費しているものを、自都市で生産し消費されるようにする」ことと、「自都市に集積された資源から”強み”を見つけてその分野を尖らせる」ということです。

間違っても、他都市と横並びでの戦略を選べば、未来はありません。重要なのは他都市との”違い”です。

マルシェはその最初の、最初の、最初の第一歩なのです。「住民が他都市で消費しているもの」から、エリア内置換を引き起こしていく可能性を探ること。その過程で都市資源をさらに発掘していくこと。イノベーションを起こし得るプレイヤーを呼び込むこと。

このマルシェでは、「ちょっとワクワクする良いものへの消費活動」がそれなりの量で小田エリア外ないし川崎市外で行われており、これを地域内での消費に呼び戻せるのではないかという仮説を検証するという目的があります。

また、密集市街地という「弱点」を、むしろ天然ウォーカブルシティとして表現できないかとか、市場があることをアピールしてもっとプレイヤーを呼び込めないかとか。

ともかく、一度きりでなく定期的な開催によってそんな仮説を検証していきながら、例えば空き家リノベーションによる産業創出などに連鎖的に繋げていきたいと考えています・・・。

つづく。

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