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消防団定員数の問題点と改革案 #009

とても長くなったので、稿を改めました。
前回記事の続きです。


1. はじめに

日本の消防団制度は、地域の安全を守る重要な役割を長らく担ってきたらしい。

しかし、黒ノ巣消防団の事例に見られるように、昭和25年から定員数が変更されていないケースは全国で散見され、かつ存在します。
この状況は、社会の急激な変化に対応できていない可能性を示唆しています。客観的には、少なくとも対応しようとしているようにも感じられない。

本記事では、この問題に焦点を当て、現状分析、問題点の洗い出し、そして具体的な改善策を考察します。

2. 現状分析:昭和25年から変わらない消防団定員数

黒ノ巣消防団の事例を詳しく見てみましょう。
昭和25年(1950年)以降、定員数が全く変更されていないという事実は、以下のような問題を孕んでいます。

  1. 社会変化への対応不足:70年以上の間に、日本社会は劇的に変化しました。人口動態、都市構造、技術環境など、あらゆる面で大きな変革がありました。

  2. 硬直的な制度:定員数が長期間変更されていないことは、制度自体が硬直化している可能性を示していて、思考停止な組織と断定されても弁明できない。このため団員が不足しているかどうかの、そもそもの判断基準にもなりえません。つまり真に必要な定員数が硬直的であるれば、現状より更に深刻な不足かも知れないし、実は満足しているかもしれない。ということが単純な引き算で判別すらできない、ということです。

  3. 地域ニーズとの乖離:現在の定員数が、実際の地域ニーズを反映していない可能性が高いです。

  4. リソース配分の非効率:変化する環境に合わせてリソースを再配分する機会を逃している可能性があります。

3. 問題点の詳細

3.1. 人口動態の変化への対応不足

日本の人口動態は、昭和25年から大きく変化しています:

  • 総人口の変化:1950年の約8,300万人から、2021年には約1億2,500万人へと増加しました。しかし、2008年をピークに減少傾向。

  • 年齢構成の変化:高齢化が進み、65歳以上の人口比率は1950年の4.9%から2021年には28.9%に上昇。

  • 地域間の人口移動:都市部への人口集中が進み、地方の過疎化が進行。

大まかな事象に限定しても、これらの変化は、各地域で必要とされる消防力に大きな影響を与えているはずです。高齢者の増加は、火災時の避難支援ニーズを高めます。また、人口減少地域では消防団員の確保が困難になる一方、都市部では高層建築物の増加により、新たな消防戦略が必要となっています。

3.2. 都市化と地域開発の影響

昭和25年以降、日本の都市構造は大きく変化しました。

  • 都市の拡大:農村部や郊外が宅地化され、都市域が拡大しました。

  • インフラの整備:道路網の整備、公共交通機関の発達により、地域間の移動が容易になりました。

  • 産業構造の変化:工業地帯の形成、オフィス街の発展、大規模商業施設の登場など、土地利用が多様化しました。

これらの変化により、火災リスクの分布や種類が変化しているにもかかわらず、消防団の定員配置がそれに追いついていない可能性があります。
例えば、新たに開発された地域では消防力が不足している可能性がある一方、人口が減少した地域では過剰な人員が配置されている可能性があります。同じ基礎自治体の範囲内であっても、人口の流出入はごく自然に生じるので、過去に定めた定員数が今日現在もフイットしているはずが、ありません。

訓練やなすべき活動内容にも、それなりの変容が必要ですが、それらは論旨が少しだけ異なるので、また別の投稿で。
本質的にはかなり近い結論にはなりますが。

3.3. 技術革新と消防需要の変化

消防技術と災害の性質も、70年間で大きく変化しています。

  • 消防設備の進化:高性能な消火器具、救助機材、通信機器の導入により、少人数でも効率的な活動が可能。

  • 建築技術の進歩:耐火建築物の増加、スプリンクラーシステムの普及により、大規模火災のリスクは低下。

  • 新たな災害リスク:化学物質による事故、テロリズム、長距離飛翔体、大規模自然災害など、新たな脅威が出現。

これらの変化により、単純な人数だけでなく、専門知識や特殊技能を持つ消防団員の需要が高まっています。しかし、定員数が固定されていること、固定されたまま何の考慮もなく硬直していることで、こうした新たなニーズに対応できていない可能性があります。
最も恐れるべきは、団員自身の思考まで硬直化され、社会の一員かつ社会的な役割をおうものとしての、責任意識を失い、同時にモチベーションと問題意識までをも喪失する可能性が高いことです。

3.4. 社会構造の変化と消防団員の確保難

日本の社会構造も大きく変化しており、消防団員の確保に影響を与えています。

  • 就業構造の変化:第一次産業従事者の減少、サラリーマンの増加により、地域に密着した仕事に従事する人の減少傾向。

  • 価値観の多様化:個人主義の浸透、余暇時間の重視などにより、ボランティア活動への参加意欲が変化。

  • 女性の社会進出:女性の就業率上昇により、従来の男性中心の消防団構成を見直す必要。

これらの変化により、従来の方法では消防団員を確保することが困難になっています。しかし、定員数が固定されていることで、この問題に柔軟に対応できていない可能性があります。
一方で、定員数が社会のニーズに対して過剰なまま固定されている可能性も無視できません。後で詳しく述べますが、実際には団員が50人でも充分なのに、500人の定員をターゲットにしている、住民人口600人の町があるかもしれません。

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