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無知の知、知恵の果実の甘さ、知らない幸せ

こんにちはアンリ・アンリです。
数年前の事を思い出しましたので、忘備録がてら書いております。



ある年配の人が「携帯メールのやり方を知らないからやってくれないか?」とお願いされた事がある。

全くの機械音痴でデジタルについて全く知らないそうで、
自分は親切でやり方を教えてあげた。
それは大変喜んでくれた。
正直自分も喜んでくれると嬉しい物だった。

数日後、ニコニコして色々質問して来た。
どうも友達に話をして、知らない事を自慢できたり
羨ましがられたり、すごく楽しかったそうだ。
それで自分でも色々調べてちょっと興味が出たそうだ。
新しい事を出来るのが嬉しいそうだ。

単純な事なのでその質問には教えてあげた。
職場の先輩でもあるので、自分への教え方も少し変えてくれた。
とは言えそれを恩を着せるような事をすれば今後の仕事に支障が出る為
一歩引いて先輩は先輩として立てるようにした。

そこから自分としては想像していない事柄が起こっていった。

どうも今まで出来なかったネットの世界のサービスが余りにも楽しかったようだ。例えばアプリのインストールや会員登録で、無料割引とかクーポンを総ざらいするかのように暇を見ては試したいと言って携帯を渡して来た。

何せ自分のアドレスもフリック入力も何もかもが分からないけど、そういうサービスを楽しみたい。そして遠くの店にクーポンを利用する為だけに行く。
安く利用する事が目的では無く、使う事や体験する事が目的なのだ。

表示の仕方や再表示、店での利用の仕方など、事細かく説明して、時には書いてあげた。とにかくそれが楽しいという。
楽しいのなら、まあそれも良いかと先輩への感謝やサービスの意味でもやってあげた。

ネットの世界はデメリットもある。
スパムや迷惑メールなどがより多く入るようになった。
変なショートメッセージ等もいきなり入ったり、
「自分が利用しているサービス名の所からも来ているが、やったかも知れないしやってないかも知れないけどどうしようかな」
正直 知らんがな 中々難しい問題だが、まあ色々調べたりして対応した。

スパムが入るようになって、ボソリと「お前んせいでめんどくなった」みたいな
ぼやきも言い出し始めた。

「自分で以前なんか(メールアドレス)作ったけどパスワードとか忘れたけどどうしようか」
等、まあ初心者あるあると思いつつ、そんなこんなを色々と対応して行った。
一杯クーポンアプリとかの登録して整理がなっていなく分からないからと管理用のファイルも作ってあげた。

この他にも色々あるが、想像できる事は大体対応した。


ある時、自分にとって事件が起こった。

認知症の母がその時老人ホームでお世話になっており、
他県で住んでいる兄弟も帰って来て、母も含めて家族が勢揃いする事を計画した。そして自分は有給を取り、家族水入らずで久しぶりに母の対面(アクリル板越し)を行った。中々面会出来ない時期だったので、自分も嬉しかった。

その時、携帯が鳴った。

「おい!俺の携帯でクーポンとふるさと何とかの登録したいからすぐ来い!」

正直辟易した。
そこまでに至るまで散々色々やった。
我慢するレベルの八つ当たりもあった。
とは言え家族が来ている為、必死に平心平頭で
今日は勘弁してくれませんか、しかも有給取っているのですよと答えたが

「いいから来い!」
の一点張りだった。

その様子を家族が見ており、
「アンリ、どうしたんだ」と質問され、全て答えた。

兄弟は憤慨した。
「面白え、それじゃあみんなで行ってやろうじゃねえか」

結果的に母を除いた家族で職場に乗り込んだ。
先輩はこちらの顔を見た時ニコニコしていたが、
家族も来た事で事は急変した。

まともな常識はあるのかとかそういった一般常識のオンパレードを
矢継ぎ早に質問され、もう恐縮するしか無かった。
同時にこの事を横で見ていた上司に当たる人にも質問が飛び、
この事に何も思わなかったのかと質問され、常識的におかしいと認め
自分の事では無いので見逃していた事を認めた。

結果として、今後は気をつけますやりませんと
先輩は答えたが、
これ以降すごく当たりが強くなった。

そして業務的な事を教えて貰えなくなり、
結果的に会社が能力不足として自分を解雇するように仕向けられた。

元々、母の都合でどんな理不尽な左遷でもと思って働いていた場所だった為
それでもクビにすると言うなら正直そこまで未練も無かった。


まあそんな顛末を以前経験した訳だが、
そもそも自分で対応出来ないものを全丸投げで利用すると言う考え方もおかしい。それで詐欺メールに引っ掛かるくらいなら欲張らず身の丈に合った利用法をすれば良いのではと思う。

なまじ美味しい経験をしてしまった為に、欲深い部分が出てしまったのだろう。
知恵の実を齧って追放された話を思い出したが、
平和で生きているのにより何かを求める事で要らない問題事まで引き寄せてしまうのは果たして利口な事なのだろか。

世の中知らないなら知らないままの方が考えるリソースを他に裂かず楽しく生きる事も可能なのでは無いだろうか。

求めるなとは思わない。
ただリスクだってあるんだぜ、と。


ちなみに元の会社は普通に大きな会社で、今でも普通に運営しています。
その先輩もまだ居るようです。
世の中何が正しいか分かりません。











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