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You will be quiet #4
1
……あ。どーも、隈取っす。
そう言った途端、電話の向こうの空気が変わったのがわかったっすね。いやマジで。出たのはお義父さんでした。
娘になんの用だ、っていうから、いや、なんの用も何も、陽子と小宇宙を早くこっちに帰してくださいよ、って答えたんす。そしたらもう、烈火のごとく怒りだして。お前のようなDV男のところに、大事な娘を帰すわけにはいかん、の一点張り。
一点張りなんすが、でも多少、こっちに対してある種の得体の知れなさ、みたいなビビりもあるようなんで、まあもうひと押しかな、ってところっすか。はい。いやマジで、陽子がいねーと毎晩のメシとか超メンドくさくて。しょーがねえから秘書の玉木に作らせたり、コンビニになんか買いに行かせたりしてるんすけどね。
とにかくお義父さん、早く陽子を電話に出してくださいよ。そんで一言謝らせてくれればそれで終わりなんだし、あとはそっちまで自分が車で迎えに行ってもいいんすから。そう言ったら、お前はDV防止法ってのを知ってるか、なんてぬかす。
その申し立てが受理されれば、接近禁止命令が出て、それを破ればお前は刑務所行きだ、ってところで、俺もカチンときたんす。陽子を殴った証拠なんてどこにあるんだ、やれるもんならやってみろコラ、こっちもいい弁護士知ってっからよ、って怒鳴りつけて黙らせました。
そこでようやく陽子が出て、超暗い声で、あんまりお父さんをいじめないで、なんて言う。
小宇宙は元気か、って聞いたら、おばあちゃんのご飯食べて毎日走り回ってるわ、やっぱり東京みたいなゴミゴミしたところより、子育てするには田舎の方がいいのよ、なんてくっだらねえことぬかすから、それでまたムカムカしてきて。
お前がどんだけ長野のど田舎嫌って東京出てきたか、耳タコになるまで聞かされてきたの忘れるわけねーだろうが。いまもし俺の目の前にいたら、ソッコーで張り倒してるところですよ。
とにかく俺は早く、連れ去られた小宇宙の顔が見たいだけなんす。でも当然、そのためにビタ一文払う気もない。
陽子は実家に帰ってすぐ、内容証明郵便で離婚請求してきました。その内容といやあ、小宇宙の親権は陽子、慰謝料は二百万。養育費は月十万、財産分与は総額の二分の一。
……ふざけんじゃねえよ、っつー話で。こんな申し入れ飲めるか、っつったら、こんどは家裁に調停の申し立てしてやる、なんてぬかしやがる。
もしそうなったら、仕事休んで出頭しなきゃなんないんすよ。
……いや、こう見えて、俺もけっこう毎日忙しいんすから。そんなヒマなんて、毛ほどもないんす。デリヘルの経営なんすがね。いまのところ、都内で五店舗っす。
で今度、横浜にも店出そうって考えてて。
コロナのときは、とにかくまー、ハゲるほどに大変でした。お客さんまったく来なくなっちゃって。うちはデリなんで、箱ヘルほどの打撃はなかったのかもしれませんけど。それでもキツいもんはキツかった。
店のジャンルとしてはマニアック系で 主に「地雷系」の女の子ばっかり集めてやってます。
正直同業者からも「そのコンセプトは思いつかなかった」って、よく褒められるんすよ。まあ、俺自身がそーゆー女が好き、っつーのもありますが。絶対ニーズあるに決まってるやん、ってもー、やる前から確信してましたし。ちなみにサービスする女の子は、みんなどっか包帯巻いてたり、眼帯してたり、って感じなんす。そんでカラコンしてたりヅラ被ってたり、口元に血糊付けてたり?
それまではわりと、ジミに普通の人妻専門だったり、ぽっちゃり専門だったりしてたんすがね。でもなっかなか業績伸びないんで、思い切ってコンセプト変えしてみたら、二ヶ月後には黒字化したっつー。や、べつにそんな、ドヤってるつもりもないんすけど(笑)。まあでも最近、知り合いのユーチューバーのチャンネル出て喋ってくれって言われたり、雑誌の取材受けたりして、いらい俺を名指しして仕事の面接来てくれる女の子も増えて、まあ願ったりかなったり、ってところなんすが。
まあ、とにかくそんな感じで 仕事はおかげさまで、そこそこ順調なんすけどーーそのぶん日頃のストレスも、まーもんのすごいわけで。
……ねえ。わかるっしょ?
だからとにかく、疲れて家帰ったら、まずは陽子の顔見た瞬間ぶん殴らないと気がすまねーっつー、そんな感じでした。で、そのあとシャブをアブりで一発キメる、っつーのが、いつもの流れなんです。
そんな状態なのにもかかわらず あのバカ嫁に突然、子供連れ去られて帰られた以上、そのはけ口がなくなっちまってた。まあそんなわけなんですよ。
今後離婚調停始まったときのこととかも含めて、いろいろとにかくムシャクシャムシャクシャしつつ、毎日鬱屈として過ごしてる。まさにそんな感じだったんす。
……で、ハナシは、こっからなんすよ。ええ。
フダン俺は、恵比寿の事務所まで車で通勤してるんす。
でも、その日はたまたま 横浜から東横線乗ってたんすよね。
というのも、例の新店舗の物件探しで。
前日にシティホテル泊まって、朝早くに向こう出たんす。や、ちょっと渋谷の店舗で問題があって 午前中までに戻んなきゃいけなくなって。
……でまあ、帰りも電車かあ、っつって。
でも、俺けっこう実は、電車乗るの好きなんす。だからあえて、今回も電車で移動したんです。
っていうのは 女の子? その観察っていうか。そういうの込みでね。
まあ、いわゆる仕事の一環、っていうんですかね。っていうのも、駅とか電車の中って、わりといまの世の中いろいろ如実に現してる、って感じしますから。
その手の感覚が、めちゃくちゃ大事なんす俺の仕事は。
でまあ そんな感じで、つり革握ってその電車に乗ってたんすよね。
ちょうど、朝の通勤時間帯で。やっぱ混んでそうだな、なんて思いつつ、でもどんくらいキチキチなんだろう、って興味もまあ、多少はありました。え、なんかヘンですかね?
いや、ちょっとした怖いものみたさ、っていうか……なんせフダンは車通勤ですから。
……で、電車が武蔵小杉に着いたときなんす。
ちょうど俺は扉の近くに立ってたんすが、その目の前に、なんかとんでもねー女が乗って来たんすよ。
や。ただ単に可愛いとかなんとか、そういうことじゃなくて。なんていうんすか、とにかくすげー子だな、ってのは、直感でそう思いました。
俺一応、仕事柄、これまで会ってきた若い女の子の数は、千人はヨユーで超えてるんです。なのでその、なんつーんすか、見る目、っつーんすか? そういうのは自身あるんす。
そのおめがねに、そのブレザー着た女子高生は、秒で叶いました。それぐらい、がっつりオーラ出してるんす。ほんと、紫色のオーラっすね(笑)。や、黄色かもしんない。あ、すんません、なんかテキトーなこと言ってますね。
で 俺と向かい合うような形で、しばらくぴったりと、そいつと身を寄せ合ってたんす。
……いやいやだって、しょうがないじゃないっすか。電車の中身動きとれないくらいに混んでるんだから。
……そしたら、なんすよ。
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