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組香の「おもてなし」



第1章: 組香とは

組香という言葉を耳にすることは、あまりないかもしれません。音楽には組曲と呼ばれるものがあり、三味線や箏の地唄にも組歌がありますが、組香とは香りを使って楽しむ芸道です。私たちは美しい景色を見たり、感動的な音楽を聴いたりしたときに、それを表現したいという欲求が生まれます。これを香りで表現するのが組香です。

組香は一人ではなく、十人ほどが一つの場に集まり、香木の香気を楽しみながらイメージを膨らませるゲームのようなものです。参加者は「連衆(れんじゅう)」と呼ばれ、亭主である「香元(こうもと)」と記録を担当する「執筆(しっぴつ)」が集まります。香炉を順番に回し、香りを聞きながら楽しみます。ここでは、秋の紅葉をテーマにした「紅葉香(もみじこう)」を例にして、組香の魅力を紹介します。

第2章: 紅葉香の背景

紅葉香は組香の題名で、演目や曲目に相当します。今回の紅葉香のテーマは花鳥風月ですが、人物や植物、動物、有職故実、天文、地名など多様なジャンルが組香のテーマとなります。組香の歴史は室町時代に始まり、「十炷香(じゅっちゅうこう)」が基本形として定着しました。その後、様々な流派で十種類の組香が選ばれ「古十組(ことくみ)」と呼ばれるようになりました。

江戸時代には多くの組香が作られ、五百種類以上が今に伝わっています。新しく創作された「新組」や古典をアレンジした「替○香」など、日々新しい組香が生まれ続けています。紅葉香には、テーマとなる和歌「証歌(しょうか)」があります。今回の紅葉香の証歌は『古今和歌集』に収められた歌です。

第3章: 証歌と香組

証歌は組香の雰囲気を支える重要な要素です。紅葉香の証歌は「秋霧は今朝はな立ちそ佐保山の ははそのもみじよそにでも見む」というもので、『古今和歌集』に収められています。この歌は、秋の霧が立たないようにと願いながら、佐保山の紅葉を遠くからでも楽しみたいという気持ちを詠んでいます。

香元はその日の香木の配役「香組」を決めます。紅葉香では「ははそ」「まゆみ」「あふち」「ぬるで」「かへで」という五つの紅葉樹が登場します。香元はこれらの役にその日の香木を割り当てます。この配役表は「小記録(こぎろく)」と呼ばれ、最初に香元から連衆に回覧されます。

第4章: 組香の進行とおもてなし

組香は、香炉を順番に回して香りを聞き、その香りからイメージを膨らませる遊びです。紅葉香では、「ははそ」には「すおう」という銘の伽羅、「まゆみ」には「ほのか」という銘の佐曽羅など、各香木が割り当てられます。このようにして、香りを通じて季節や風景、歴史などを感じ取ることができるのです。

組香は、参加者同士のコミュニケーションや共感を深める場でもあります。香元は香りの組み合わせや進行を工夫し、連衆が心地よく香りを楽しめるように配慮します。おもてなしの心が組香の醍醐味であり、香りを通じて心豊かなひとときを共有することができるのです。


組香は、香りを通じて自然や歴史、文化を感じることができる素晴らしい芸道です。紅葉香を例に、その魅力と楽しみ方を紹介しました。香りを聞きながらイメージを膨らませることで、心地よい時間を過ごすことができます。組香を通じて、香りのおもてなしを体験してみてはいかがでしょうか。

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