【遊戯王ゲートボール】昭和ミラーのすゝめ
0.Introduction:
「昭和ハイランダーミラー」をみんなで遊ぼう
昔のカードを使って遊ぶ、TCGの「ゲートボール」が、昔カードゲームを遊んでいたアラサー世代を中心に人気となっている。
その中でも東京大学遊戯王サークル発祥の「東大04環境ミラー」(以下:東大04)は遊戯王OCGにおける代表的なゲートボールの一つである。
東大04は2004年9月環境のカードプールと禁止制限リストに基づいたデッキリスト固定の【カオスグッドスタッフ】によるミラーマッチであり、1:1交換を重視する競技性の高いゲームが楽しめる。
……という触れ込みなのだが、先攻ピーピングハンデスや逆転要素の乏しさなど、言葉を選ばずいうと「おもんない」要素が多く、昔遊戯王カードを遊んでいたりアニメを観たりしていた元決闘者がフリー対戦で気軽に遊ぶにはあまり向かない、というのが実情である。
そこで本稿では、筆者が流行らせたい新しい遊戯王の遊び方の一つとして、「昭和ハイランダーミラー」(以下:昭和ミラー)を提案・紹介する。
1.Background:東大04はなぜ面白くないのか
以下が東大04のデッキレシピである。
東大04の面白い点・おもんない点
Good
デッキリスト固定による40枚デッキ2つを用意すれば遊べる手軽さ
2004年9月における実際の禁止制限に基づいたデッキリスト(史実に存在しうるデッキ)
現環境で禁止になっているパワカの応酬による気持ちよさ
Bad
横行する先攻ピーピングハンデス(《強引な番兵》《押収》)
【次元斬】に寄りすぎた除去が強すぎる構築(ハイランダー気味だがそうでもない)
《死者蘇生》《聖なるバリア━ミラーフォース》などの「遊戯王を象徴するカード」が不採用なこと(当時の制限上仕方ないのだが)
また、それらのカード不在に伴う劣勢の切り返し・逆転要素の乏しさ
総じて、「デッキリスト固定の2人用ボードゲームにするという発想は斬新で面白い試みだが、このゲーム面白くないよ〜ゲームとしてはいまひとつ」という評価である。
「1アド1アドが大切になる」ということは、裏返せば「ちょっと差がつくととそのままなし崩し的に負けてしまう」ことを意味する。
昭和ミラーのコンセプト
上記を踏まえて、東大04の良い点を残しつつ以下のコンセプトをもとにデッキリストの改造を行ったものが「昭和ミラー」である。
ハイランダー構築(同名カードはデッキに1枚のみ)にすることで再現性を下げ、毎度異なるゲーム展開が楽しめるようにする
禁止制限リストは具体的に「○年○月のもの」と定めない(~2005年頃、DM期のカードプールを用いる。実質すべて制限カードとなる)
昭和の遊戯王初代DMの原作漫画/アニメなどに登場した象徴的なカードを中心に採用する(「昔アニメや漫画は見てたよ」という層が楽しめるように。思い出アド)メインデッキ40枚で完結していること(融合デッキ/サイドデッキを考えると大変なので)羊トークンはしゃーない
3. Method:どうやって遊ぶんすか?
ルール
・ライフポイント:8000
・先行ドロー:あり
・召喚時優先権:あり(=モンスター召喚時に起動効果を発動可能)
・エラッタカードは旧テキストを使用(自社の調整不足を揉み消そうとするK○NAMIを許すな)
いわゆる「当時ルール」である(このレシピが存在した「当時」は実際にははないのだが)
デッキリスト
2024年7月現在における昭和ミラーのリストは以下の通りである。
デッキリスト解説
モンスター:21枚
まずは元からいたやつらから解説していく。
《開闢の使者》
パワカ。【カオス】の中核。
このカードのためにデッキ内の光属性枠を調整するのに(というか採用候補となりうる光属性のカードを複数種考えるのに)苦労した。
筆者は最終的にレリーフと20thシクでこのミラーを作りたいと考えている。
《人造人間サイコショッカー》
24打点の上級モンスター。罠を無効化する永続効果を持つ。エスパー絽場枠。
対策可能な速攻魔法を何枚か追加したので相対的に弱体化?
《天空騎士パーシアス》
貫通効果と戦闘ダメージを与えると1ドロー効果を持った19打点の上級。
特に原作には登場しない。
大半の守備モンスターを咎められるが、打点が低めなのが弱点。
《魔導戦士ブレイカー》
19打点。ニコ厨爺にも狂戦士の魂でお馴染みなのでは。
月読命がプールに加わったことで少し弱体化?
《ブレイドナイト》
海馬の下級。リバースモンスターを安全に処理できる。
この効果に意味を持たせるため複数種リバースモンスターを考えるのに苦労した。
《同族感染ウイルス》
手札を捨てることで種族一つを全滅させられる16打点。
効果は1ターンに何度でも使える。
原作には「ウイルスカード」とかいう謎区分のカードが登場するが、特に関係はない。
《異次元の女戦士》
穴。縦置きしても横置きしても強い、素晴らしいデザインのカード。
0503環境といい東大04といい、3枚採用可はやりすぎじゃないか?
《ならず者傭兵部隊》
召喚時優先権があるので《神の宣告》で召喚を無効にされなければ効果を確実に使用できる。
《お注射天使リリー》
穴。少しテキストがややこしいが、要するに「このカードが戦闘を行う際、2000ライフポイントを払うと攻撃力が3400にアップする。この効果は1戦闘につき1回だけ発動できる」ということである。
(筆者は「この効果を使えるのはフィールド上にいる限り1回だけ」だと勘違いしていた)
《魂を削る死霊》
通称「たけし」。戦闘破壊耐性とハンデス効果を持つ。
対象を取られると破壊される効果は、効果解決後に表側表示でフィールドに存在していなければ適用されない(対象に取られた瞬間死ぬわけではない)
つまり《月の書》や《月読命》の効果では破壊できないので注意。
ハンデス効果の方も「戦闘ダメージを与えた時」ではなく「直接攻撃に成功した時」なので要注意。(n敗)
《キラー・スネーク》
墓地にいると自分スタンバイフェイズに回収できる小粒モンスター。誘発忘れに注意。
【変異カオス】では《突然変異》の的にして《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を出せるのが強みだが、昭和ミラーでは採用していないので本領は発揮できていない。
《天使の施し》などで捨てるのが主要な使い方だが、他のセットモンスターが強いため、裏守備でセットするだけでもそれなりに牽制になる。
《聖なる魔術師》
穴。リバース効果で魔法を拾ってこれる。
正直他にめぼしい光属性が少なく複数枚採用したかったが泣く泣く1枚に。
以下は変更・追加したカード。
《ブラッド・ヴォルス》
海馬の下級バニラ。
身内の「ブラッド・ヴォルスとかいれてえな」の一言により採用。
2002年頃にはガチ構築に普通に入っていたらしい。
何気に守備力が1200あり、月読命に突破されないのが《ブレイカー》との差別化ポイント。
《ホーリー・エルフ》
バニラその2。穴。守備力2000。
何気に原作では穴であることを活かして孔雀舞攻略の鍵になるなど、王国編の遊戯さんをずっと支えてきた立役者だが、《ブラック・マジシャン・ホール》に枠を奪われてしまった。
貴重な光枠として採用。
他の壁モンスターと比べ、パーシアスを止められるのが地味に偉い。
《魔鏡導士リフレクト・バウンダー》
光枠。17打点。《サイコ・ショッカー》に続くエスパー絽場2枠目である。
効果は要約すると「攻撃を受けた際、自身を破壊し、突っ込んできたモンスターの攻撃力が1700以下なら1700ダメージを、それ以上ならその数値に等しいダメージを相手に与える」となる。
何気に制限カード経験者だったりする謎のカード。
こいつと《魔法の筒》、《神の宣告》などが存在することで、残りライフを意識する必要性が上がったのではないか。
煩わしいので《月読命》で寝かせて叩き割るといいだろう。
《深淵の暗殺者》
リバースモンスター枠。《人喰い虫》の亜種。
裏守備モンスターの読み合いに寄与するため採用。
手札コストにすると墓地からリバースモンスターをサルベージすることもできる。
《メタモルポット》
リセットカード枠。デュエル動画のお供。ポッド枠だがこいつだけポット表記。なぜ?
「サイバー・ポッド」「ファイバー・ポッド」ほどそれまでの試合の流れを無に帰さないということで、このカードにした。
アニメ王国編見てたらバクラくんが追っ手のモブ襲うのに実体化させて使ってた。打点は700。
《マシュマロン》
器の方の遊戯が使用した1枚。 少し未来のカードだが、光枠として採用。 おおむね《魂を削る死霊》。パーシアスに弱い。
《月読命》
歩く《月の書》。
リバースモンスターの再利用、守備力1000以下の縦置きモンスターの処理など色々できる。
《魂を削る死霊》はこいつの効果で破壊できないので注意。
《混沌の黒魔術師》
「混黒ちゃんと機能するか疑問なんだけど」
「施しで捨てて蘇生で釣ると気持ちええぞ」
「はい」
《クリッター》
場から墓地に行くと15打点以下をサーチ。あまりサーチが多いと再現性が高まり毎回同じような展開になりそうなため、サーチ系はこれだけに絞った。
サーチ対象は11種と幅広い。《キラー・スネーク》をサーチすることが多いか?
魔法カード:13種
《強欲な壺》
藤田ニコル。
筆者のよく行くボドゲバーの店主(遊戯王をほぼ知らない)も藤田ニコルの下りは知ってた。
《抹殺の使徒》
裏守備を安全に処理できる。リバースモンスターを踏んだ後の処理がやや面倒。
《大嵐》
うまぶりポイント的にも城之内が使用している《ハリケーン》と迷ったが、雑なガン伏せを咎める意味でこちらに。
《心変わり》
穴。現代だと無制限なんですって。怖いわね。
奪ったモンスターは上級の生贄に捧げたいところ。
《光の護封剣》
3ターン相手の攻撃を封じる。
原作最初のデュエルから登場している由緒正しき遅延カード。
《スケープ・ゴート》
城之内の防御札。
本懐である《突然変異》からのサウサク召喚はオミットしているが、高い遅延性能は健在。
《サイクロン》
伏せ除去。《リビングデッドの呼び声》に当てるのが良いか?
《天使の施し》
穴。3ドロー2ディスカード。
《混沌の黒魔術師》などの上級モンスター、《キラー・スネーク》などを捨てられるとうまい。
0503三種の神器でお馴染み《いたずら好きの双子悪魔》は流石に不採用。
《ブラック・ホール》
穴。盤面全除去。
切り返しのほか、裏守備を安全に処理できる。
《死者蘇生》
お葬式の副葬品に入れてほしがられるカード推定第1位。
相手のモンスターも釣って来れるが、チェーン《リビングデッドの呼び声》で対象不在にさせられないように注意。
「遊戯王」という作品を象徴する一枚だが、シンクロ期以前のゲートボールでは基本的に使用できずやや不満。
《月の書》
歩かない《月の書》。
用途は幅広いはずだが、このミラーだとそこまででもない印象。
筆者も知らないうまぶりギミックがあるかもしれないのでキミの手で探してみてくれ!
《エネミーコントローラー》
おもちゃ。音MAD素材。
キラスネや羊トークンをサクれるとうまいか?
《収縮》
海馬のカード。あいつ魔法罠結構いいの使ってんな(彼モンスターは青眼とかいう観賞用カードしか使わないので)。
《死のデッキ破壊ウイルス》は流石に没(腐りやすいと思われる)。
罠カード:6枚
《激流葬》
召喚反応の全体除去。
何気に梶木のカード。
《破壊輪》
海馬のカード。
フリチェ除去として使ってもよし、引導火力として使ってもよし。
《リビングデッドの呼び声》
フリーチェーンの蘇生札。ゴースト骨塚枠。
原作漫画だと《ソウルチャージ》のノリで延々モンスターを蘇生しまくってた。
《聖なるバリア━ミラーフォース》
攻撃反応罠。
全体除去だが横に寝かせれば除去を免られるあたり、素晴らしいデザインのカード。
《魔法の筒》
LP4000の児童館環境にて最強でお馴染みの攻撃反応罠。何気に制限カード経験者。
王国編で遊戯さんが多用しまくってた一枚。
アドが取れないが、ノーケアで突っ込んできた開闢30打点を跳ね返して逆転勝利、みたいなことも稀にある。
《炸裂装甲》ピン投入よりはよかろう。
《神の宣告》
万能カウンター。
ライフ半分がコストなため前半は重いが後半も腐らず使える。
当時は特に規制もされていなかったため、「入れるなら3枚」という感じだったらしい。マジ?
「3枚入れてナンボのカードだから制限だったら弱いっしょ」とか言われてたらしいが、制限でも普通に強かった。
採用しなかったカード
東大04よりリストラしたカード、採用を検討したが見送ったカードなどを中心に解説する。
60枚版をいずれ作ってもいいかと思っているので、その際は採用するかも。
《押収》《強引な番兵》《首領・ザルーグ》
ハンデス多過ぎ。これらは有利な状況をさらに有利にするカードなので、リスクの大きい《たけし》のみに絞った。
《苦渋の選択》
いうほど相手に苦渋の選択を強要できていないためリストラ。伝説のクソヤバ禁止カードのこんな微妙な姿は見たくなかった。
役割の近い《天使の施し》と入れ替わった形か?
《霊滅術師カイクウ》《イグザリオン・ユニバース》
特にアニメや漫画にも登場しないのでバニラ2種と交代。
《ファイバー・ポッド》
リセットカードだがそれまでの試合の流れを全部壊してしまうため《メタモルポット》と交換。
《早すぎた埋葬》
蘇生を追加したので代わりにリストラ。手札に戻して再利用などうまぶりポイントがあるため、60枚版では追加してもいいかもしれない。
《増援》
サーチ・リクルートは再現性を上げるだけなので減らした。60枚版はアドリブでサーチ対象が変わりそうなため入れてもいいかもしれない
《砂塵の大竜巻》
60枚版行き。
《炸裂装甲》
ピン投しするカードではない気がする。
《奈落の落とし穴》
召喚反応罠は「『あっハイ』で終わるのでおもんない」という意見があり採用を見送ったが、《収縮》《月の書》など対策カードがあるので入れても良いかもしれない。
《ミスティック・ソードマンLv2》
器の方の遊戯が使ったカード…ではない。
裏守備が多いので追加してもいいかもしれない。
後半のレベルアップ効果がややこしい。
《サイバー・ドラゴン》
巻き返しに強い、光属性と非常に要求定義に合致したカードだが、
GXのイメージが強すぎるため今回は採用見送り。
《冥府の使者ゴーズ》
遊戯王Rのカード。やや未来のカードだが入れてもいいかもしれない。
《死霊の騎士デスカリバーナイト》
獏良君のカード。
《ダークヒーロー・ゾンバイア》
花咲くん。
《シャインエンジェル》《巨大ネズミ》《キラー・トマト》《黒き森のウィッチ》
各種サーチ・リクルーター。60枚版では入れてもいいかも。
《ガジェット》各色
3ガジェは流石に狂気か?
《強奪》《洗脳─ブレインコントロール》
コントロール奪取は《心変わり》《エネコン》があるため入れ替わった形。
特に《強奪》は裏守備変更などによるうまぶりがあるので60枚版ではあっても良いかも。
《突然変異》
【変異カオス】の主要パーツ。《サウサク》や《ドラゴンに乗るワイバーン》で遊べるが、結構腐る上にエクストラデッキが必要になるため割愛。
《メタル・リフレクト・スライム》
マリク枠。《同族ウイルス》に耐性があるのであってもいいかも。
《封印の黄金櫃》
遊戯vsアテムのラストデュエルを締めた非常に象徴的なカードだが、なぜかOCGでは万能サーチになった。60枚行き。
4 Result:プレイしてみての感想など
筆者のプレイした感想としては「疲れない」(クリッターぐらいしかサーチがないので、引いたカードを手なりに使うしかないため)。遊戯王の疲労はデッキ内カードのサーチによる選択肢の多さに由来しているのかもしれない。
また、逆転や延命の手段も多いため、最後まであきらめずに試合を行うことができる。
1戦も5〜10分程度でサクサク終わるので、当日使用するデッキをバラしたくない大会前や、大会後の疲れ切った状態で箸休めや時間調整のフリー対戦に適していると思われる。
遊んだプレイヤーからはおおむね好評のようで、「面白い」「味がする」「(いい感じに)メンコ」などの感想をいただいている。
何も言わずとも自然にもう1戦、もう1戦で4〜5戦ぐらい連続で遊んでくれることから、結構気に入ってもらえているものと筆者は捉えている。
5.Conclusion:おわりに
筆者はこのデッキを2個セットでイベントなどにこっそり持参しているが、遊ぶ機会がなく困っている。もし「遊んでみたい」という方がいればお声がけいただければ幸いである。
レアリティにこだわらなければそれなりに安く組むことができるし、0503変異カオスやGOAT formatの余り物を転用しても作成可能である。
「久しぶりに遊戯王カードで遊んでみたい!」という元決闘者の皆様や、リアルアラサー杯の環境変更で開闢など自慢の光り物を使う当てがなくなってしまったゲボ爺諸兄などは組まれてみてはいかがだろうか。
また、本ミラーの原型となった「東大04」を開発した東大遊戯王サークルの皆様には敬意を示したい(特に面識はないが)。記事内ではだいぶDisってしまったが、今日の「ゲートボール」という遊び方がここまで普及したのは彼らの功績も大きいだろう。
「このカードよりこのカードを採用した方が良いのではないか」「このゲーム面白くないよ~」などのご意見があれば筆者(@linkentrpg)までご連絡頂ければ幸いである。
本稿が読者諸兄のゲートボールライフの一助になれば幸いである。
皆さんも絶対に組んでみてください。絶対だからな。
約束だぞ。顔、覚えたからな。
6. Reference:参考文献・資料
・04環境 基本ルール/東大遊戯王サークル公式ブログ
・遊☆戯☆王(1996)、 集英社