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【第26章 きみと生きたい】

🎵激しさだけの 若さはいらない 無口なほど情熱を感じるから~🎵

緊張で喉が渇いたので、僕はレモンスカッシュにした

一方、彼女はホットレモンティー……

やはり今日も「冷」に抗う「温」なのか?

かつてない、ただならぬ空気だ

彼女に表情がない

まずここは、お土産を渡してくれるタイミングなのに、その気配もない

今日はお土産を持ってこなかっただけなのか?

それとも、買っていないから、僕に声を掛けてこなかったのか?

いやいや、これまでの流れを考えると、お土産を買わないなんて考えられない

とりあえず僕は、近頃忙しくてなかなか余裕がなかったと釈明っぽい話をして繕った……

じゃぁ次は、彼女に話題を振ろう

今日のメインテーマである修学旅行の土産話を……

「それで、修学旅行はどうやった?楽しかった?」

彼女は、何から話をしようかと頭の中を整理し始めて……

いやいや、違う‼️

何かを覚悟するかのように……

一度スーッとを大きく吸った……

何かを言い出すぞ……

あっ、、、ヤバい‼️

これは来るぞ‼️

彼女がいきなり僕に銃口を向けてきたような気がした……

しかも、向かい合う席の、こんな至近距離で……

えっ? ウソ??

別れを切り出してくるのか???

まさか今、このタイミングでいきなり???

何とか回避はできるのか???

…………と思った瞬間、引き金を引いてきた

ズッド~~~~~~~~~~ン‼️ 

爆音が轟いた……

ような幻覚がした……

僕に向かって発砲してきた……

その言葉……

「好きでもない人と、これ以上はもう……」

あわわわわわ……

えっ???

何て言ったの???

ウソだろ? そんな言葉??

あまりにも強烈……

好きでもない人って、僕のことが???

何でそんなキツい言葉???

それはいつからなの???

ずっと我慢してたってこと???

別れを切り出してくるのは、そりゃ仕方ないよ……

僕も想定してないことはなかった……

どこかで覚悟はしていた……

だけど、だけど……

好きでもない人と、これ以上はもうって……

そんな厳しい言葉をぶちかましてこなくてもいいやん……

きっついよ~

今、この時期に言うかなぁ~

もうちょっと待ってくれてもいいやん……

好きでもない人って……

とどめを刺すには最強の言葉やん……

さすがに、こんな言葉は予想できていなかったよ……

もうちょっとソフトに言ってくれたとしても……

しぶとく食い下がったりはしないよ……

スマートに別れる覚悟はできているよ……

よりによって、そんな厳しい言葉を選ぶなんて……

すると、彼女が続けてこう続けてきた……

「もしも、よかったら、お友達でいてもらえたら……」

「僕でよかったら、もちろん」

そんなの僕がイヤだと言うタイプの人間じゃないことは知ってるやん……

あぁ~終わったな……

幕引きの準備に入るか……

こうなったら、あれだな……

「寿限無寿限無 五劫の擦切れ……」のように暗記したあのコラム

『彼女が別れを切り出してきたら』

まさかこんなに早くあのコラムの出番が回って来るとは……

お土産をもらうためだけに声をかけたはずの今日が、まさかこんな終焉の日になるなんて……

でも、受験本番を控えた今、ここでぶっ倒れるわけにはいかない

しっかりと地に両足を着けて立っていくしかない

気持ちを取り乱すまい……

ほぼ手のつけられていない彼女のレモンティーに目をやった……

すると、楽しい思い出がふとよみがえった……

彼女を後輩達と一緒に僕の家に招待した日……

自宅の応接間で6人でトランプをした

負けたら、紅茶用で使わずに残ったレモンスライスを食べるという罰ゲーム

彼女も一度だけ負けて、酸っぱいレモンスライスを口にしたあの時の表情が可愛かったなぁ……

あの時のレモンスライス……

今日のレモンスカッシュとレモンティー……

そしてここ、喫茶リモーネ……

僕たちの思い出の象徴は、まさに

「レモン」だったな……

あぁ~ もう吹っ切るしかない……

「さあ、帰ろうか?今日は最後だから○○駅まで送っていくね」

リモ一ネに入店して間もなかったが、僕たちは席を立った……

僕たちが別れることは、きっとマスターに悟られただろうな……

恥ずかしくて、もう来れない……

リモ一ネを出るとき、僕は心の中でお礼を言った

「お世話になりました。またいつの日か、僕が大人になった時に帰って来ますね」

「カラ~ン コロ~ン🎵」

店の扉をそっと閉めた……

僕の街のJRの駅の改札を通過し、階段を降りて二人でホームに立った……

「ホントはね、今日はお土産をもらえると思っててんよ」

と、僕が言うと……

「買ってきてたのよ」

と、彼女がカバンからチラリと包みを覗かせた

「せっかくだから、それもらっていいかな?」

乳白色をしたビニールの巾着型の包みを手渡してくれた

中を開けて見ると、ステンレスのマグカップ……

ローマ字で離島の地名……
そしてキャラクターと海のイラストが描かれてあった

「お土産、ありがとう」

ステンレスかぁ……
ステンレスって、朽ちないんや……

電車に乗って5分ほど

隣街の駅に着いた

二人でホームから階段を上がり、改札を出た

ここは、夏にキラキラちゃん❇からのハンドタオルを捨てようとしたあの改札口だ

さあ、とうとうお別れの時が来てしまった……

彼女の顔をしっかりと眼に焼き付けた……

そして、最後は用意していたあのコラムのとおりに言おう……

「本気で好きやったよ。じゃあね」

僕は、自分の帰る方向、私鉄の駅に向かって歩き始めた……

もう後ろは振り返らない

10月最後の夜だった……

🎵これからもう歩けない きみなしじゃ 生きていけない~🎵

……………to be continued

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#大江千里さん好きと繋がりたい
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