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【第30章(最終章) BOY MEETS GIRL】

5日間連続の関学入試が終わった

最終日の経済学部は手応えが悪かった

でも、商学部、社会学部、法学部の3つは、いけたような気もする


翌週、2つめの大学を2日間連続で受けた……


その翌日……

いよいよ関学初日の商学部の発表の日だ

合格者には通知が郵送されるが、父の仕事が休みだったので「関学まで発表を見に行こう」と車に乗せて連れてきてくれた

正門を進み、芝生広場の手前を左方向に曲がった所に合格者番号の掲示板が設置さいれていた

しかし、僕の受験番号はなかった

「残念だ」

期待していたのに

父にも申し訳なかった


その翌日……

文学部の発表は家で待つことにした

が……合格通知は来なかった


そして翌日……

自分の中で滑り止めと位置付けた3つめの大学を受けに来た

今日で僕の入試の日程は終わる

しかも社会学部の発表の日でもある

途中、家に電話をして合否は尋ねずに、夕方に地元の駅まで母に車で迎えに来てもらう約束をして家を出た

この学校の入試には一人で来た

他に誰が受けるのか知ろうともしなかった

昼休みも、校舎の裏手の花壇のへりに腰を掛けて一人、弁当を食べた

今日、合格通知が来なかったら、関学は全敗かもな

そうなると、4月からはここに通うことになるのか

それなら、浪人をさせてもらって再度、関学を目指そうか

いや、いっそ来年は早稲田を目指してみようか

一人でいろいろと思案していた

社会学部のあの国語の出来からすると……

今日がヤマ場だな


そして、今日の試験が終わった……

私鉄を乗り継いで、地元の駅に戻ってきた

改札口で母が待っているのが見えた

母の表情でわかった

「受かってたよ‼️」

「ほんまに~⁉️」

飛び上がるというより、脱力で腰が抜けそうだった……

家に帰って、分厚い合格通知の封筒を弟と妹に見せびらかした

あのパウンドケーキをもらった時のように

家族も皆で喜んでくれた

ありがとう

学校案内に「Mastery for Service」と書いてある

これがスクールモットーなのか


自分の部屋に戻ると、壁に貼ってある千里さんのポスターに報告した

千里さん、やりましたよ‼️

後輩になれましたよ‼️

ダメダメりんたろうが、何とか合格できました‼️

千里さんのおかげです

ありがとうございます‼️


そして、2月の終わりを迎えた……

卒業式の予行演習で3年生の登校日があった

みんな悲喜こもごもだった

どうやら、うちの高校で関学に合格したのは、私立志望組の男子では僕だけのようだった

英語頼みの僕を救ってくれたのは、国語教科だった

あとで古典の先生と国語表現の先生にお礼を言いに行こう


翌日、卒業式の日……

式典終わりの午後から、混声合唱部の顧問と現役生たちが、僕たち卒業生のために送別会を催してくれる

その中には、もちろん彼女もいる

部活の部屋に入ると、僕は一番に彼女のもとへ向かった

「関学の社会学部に合格したよ」

と報告をした

これがスジ論というものだろう

言葉を交わしたのは、あの別れの日の改札口以来だ

彼女は「そうなんですか?よかった、おめでとうございます」

と優しく応じてくれた

この誠実さが彼女の魅力なんだよなぁ

今日はちゃんと喋れた

あの時、手紙を交わしておいてよかった


和やかな送別会も終わり、最後の花道……

部活の部屋から出る廊下状の通路に、現役生が並んで花道を作り、卒業生が一人ずつ握手をして退場していくという、部活伝統の儀式だ

僕たちもこうして、先輩たちを見送ってきた

この通路……

あの別れを告げられた日に、部活終わりの彼女を待った通路だ

現役生が並ぶ中、卒業生が一列になって順番に去って行く

僕はなるべく卒業生の列の後ろの方に付けた

次第に順が進み、僕はとうとう彼女の前に来た

彼女の眼を見た

右手を差し出して、敢えて軽めで手に触れた

「ありがとうね……」

その言葉しか思い浮かばなかった

「ありがとうござぃ……………」

そう言う彼女の唇が震え出した

瞳も潤みはじめた

いつもクールな彼女の瞳に涙が溢れそうになっている……

ダメだ、もう見ていられない💦

目線を外した……

後ろにまだ卒業生の列が続いている

僕は振り切るように前へと進んだ

花道の最後まで進んで、列が終わってから、後ろを振り返った

通路の向こうの方で、長身の彼女が誰かに慰められながら、両手で目を押さえて泣く姿が見えた

初めて見た彼女の泣く姿

泣いてくれたんだ……僕のために……

胸が張り裂けそうだった

でも、そこにはもう戻れない……

断ち切るような想いで通路を飛び出し、去った

さようなら……ありがとう💧


学校を出た後、僕たち卒業生は二次会で近くのファミレスに向かった……

さっきの花道の場面

ヨコちゃんは、僕の少し後ろにいたらしい

「見たよ~‼️りんたろう君とメグミちゃんとの最後のシーン

も~う感動したわ~‼️

私までもらい泣きしそうやったもん‼️」

みんなの前で、ヨコちゃんが悪びれず、大きな声で言った

まったく、ヨコちゃんらしいなぁ

もらった記念品の紙袋に現役生からの寄せ書きの色紙が入っていた

僕に宛てられた寄せ書きの色紙……

後輩たちが、縦横斜めにカラフルに僕への言葉を思い思いに綴ってくれている

一番に彼女の名前を探した

あった、この字‼️

濃いめのピンク色で縦書きの彼女の名前

その右側には……

「ご卒業おめでとうございます」

あぁ~これだけなのかぁ?

やっぱり彼女も「平凡すぎる言葉」を選んだんだなぁ。。。

………………the end

《written by りんたろう👓》


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