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【第22章 POWER/孤高のジョー】
🎵きみだけを あの日 見失ったことから始まり ぼくはぼくの生き方を強く試し続けてる~🎵
今日から長い夏期講習の終盤戦が始まる
8月末までは、ここ十三の予備校の後期の講習だ
教室の座席は指定されていないので、僕は大抵、右サイドの前から4、5列目に着き、決まって隣りにもう1席分を確保しておく
しかし、昨日のデート……
楽しかったけど、やっぱり彼女はどこか心に傷を負っている感じだったな
思えばこの夏、「惚れた腫れた劇」で随分、おセンチに過ごしてしまった
🎵もういいさ 考えるだけじゃ 一歩も前へ進めやしない~🎵
そこへ、ポンっと僕の背中を軽く叩き、自らの到着を知らせて、隣りに座る友がいる
ジョーだ
同じ高校で、この予備校の現役生クラスに通う友だ
と言っても、ここに通うまで、学校では話をしたこともなかった
話す機会もなかったが、そもそもキャラからして全く違うのだ
もしも高校だけなら、僕たちはきっと打ち解けることはなかったと思う
ザ・高校生の僕とは対照的に、ジョーの外見はどこから見ても成人男性だ
かと言って大学生や会社員でもない
フリーランスというか、まるで駆け出しの俳優かモデルのようだ
ジョーは高校でも私服だが、アメカジではなく、ヨーロピアンテイストだ
容姿もスマートで脚が長く、小顔でやや濃いめの顔立ち
つぶらな二重瞼に、秀麗なまつげ
惚れ惚れするような男前だ
そんなジョーだから、学校でも有名人だった
ただし、取り巻きのファンが群がるようなタイプではない
文化祭などの学校行事で目立つ、よくいるタイプの人気者と違って、徒党を組まず、ニヒルで寡黙なのだ
言い換えると、冷めている
まるで、幼稚園で
「先生、僕は、お遊戯なんてやりたくないので、あっちでグリム童話を読んでいてもいいですか?」
と言うような、おませの園児のようだ
そう、孤高の存在なのだ
ジョーが席に着く時には、お決まりの所作がある
まず、息を大きくフーッと吐き、右手でグリーン仁丹の箱を振って左の手のひらに何粒か落とし、それを手のひらごとパッっと口に運ぶ
ヤニの香りを消すためだ
そして、ズボンの前ポケットに忍ばせている「Peace」と百円ライターをこっそりバッグの奥底に仕舞う
この予備校での最初と言えば……
「隣り、ええかな?自分、マツガタニ高やんな?」と静かな口調で話しかけてきた。
もちろん、こちらは学校の有名人を知っていたが、向こうが僕のことを知っているとは意外だった。
「自分、どこ目指してるん?」
そう聞かれた僕は
「関学やねん。何学部でもいいから、関学に行きたくて」
と答えた
するとジョ一は
「やっぱり関学しかないで。俺も関学一本や」
と言い切った
こうして、予備校では毎授業を隣りで受けるようになった
ジョーは、僕の独自の勉強法にも関心を示していた
僕の力を認めてくれているようだ
「ちょっとええかな?それ見せてくれ」
と、しょっちゅう僕のノートを手に取り、つぶさに目を通す
けれども、ジョ一が僕の勉強法を真似ているのは、見たことがない
それどころか、授業以外で一体いつ勉強しているのか、全く気配がない
空き時間には、カバーを外した新潮文庫を少し丸めて、読書をしている
「カフカ」「アラン・ポー」……??
当時の僕には、知らない作家だった。
おそらくジョーは、関学なら現役での合格は諦めて、浪人を視野に入れているのだろう
そう言えば、3年生になって、ジョーを高校でほぼ見かけたことがない
ジョーに直接尋ねると、予備校のある日は、早めに十三に来て、パチンコをしたり、喫茶店で過ごしたりしていると言う
真面目な僕には想像を超えた世界だったが、それがまた刺激的で格好よく見えた
ジョーとは、恋愛関係の話はほとんどしたことがない
だけど、一度だけ尋ねたことがある
「ジョーは、彼女、いてるん?」
こんな大人びた男は、どんな女性がタイプなんだろうと
すると、ジョーは
「フフッ」
と軽く笑って
「そんなん、今は、いてへんよ、面倒くさいしな」
とクールに言った
おそらく僕たちの通う高校内では、ジョーのお気に召すようなタイプの女性はいないのかな?
もしもいるとしたら、学校外かなのかもな……?
きっと、僕なんかとは、見えている景色が全く違うのだろう
僕は、時々センチメンタルで、ナイーブな自分がイヤになる……
これを打破するPOWERが欲しい💪
ジョーに言わせれば、この夏の僕の「惚れた腫れた劇」は、まさに「お遊戯」同然なのだろうなぁ
ジョーのように、ニヒルでタフな男になりたい
🎵声に出して叫び続けてたい こうしてこのまま終わりたくないのさ 自分一人じゃ もうかなわぬ夢 きみだけに伝え続けたい~🎵
夏期講習が終われば、いよいよ受験戦線も第3コーナーへと突入する
……………to be continued
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