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【第21章 手垢のついたステイショナリー】

🎵くしゃくしゃのえり ケシゴムの粉 きみはもういない 手垢のついた画用紙に きみが残した メモリーズ しょっぱすぎたね~🎵

僕は一人、自分の部屋のベッドに横たわり、壁に貼った千里さんの等身大ポスターを見ながら、思いにふけっていた

受験の勝負時と位置付けていたこの夏に、いったい自分は何をしているのだろうかと、半ば途方に暮れて……

🎵くだらないわけで 大切なきみを失った 若さが今もせつないよ~🎵

ただ、かすかな望みは抱いていた

一つは、彼女が言ってくれた言葉を思い出したのだ

僕がキラキラちゃん❇のことを暴露し

「それって、二股よね?」

と彼女が表情を豹変させた時……

僕は完全にひるんで、記憶を飛ばしてしまっていたが……

後々、ぼんやり思い出したことがある

彼女はたしか、こう言ってくれた……

「私、(りんたろうさんのこと)想ってるよ」

悔しそうな顔をしながら……

やりきれない気持ちの中で、彼女はそう言ってくれた

あれは本当だよな?

素直な気持ちだったんだよな?

あの一言に望みを託そう

🎵手垢のついた画用紙がほこりをかぶって メモリーズ 泣き出しそうさ~🎵

キラキラちゃん❇の出現により、僕は紛れもなく、二人を天秤にかけた

キラキラちゃん❇が、こんな僕に好意を持ってくれたことに浮かれた

あまりの目映さに引き込まれた

もしも、僕がキラキラちゃん❇になびいていたら、ナカネさんもヨコちゃんも、全面的に応援してくれていたに違いない

そんな中、但馬の高原で、やっぱり僕は彼女のことが好きだと、本当の気持ちに気付いた……

その時点で、僕の中ではもう天秤は必要なかったのに……

誰にも気付かれぬうちに、そっと天秤を仕舞うべきだったのに……

僕はわざわざ、彼女に対して、もう片方の皿に載っていた分銅の値打ちについて語り始めたのだ

あの分銅よりも君の方が重かったと……

それは極めてシビアなジャッジだったのだと……

恩着せがましく解説したのだった

彼女にしたら、迷惑なごたく以外の何物でもない

🎵くだらないわけで 大切なきみを失った 若さが今もせつないよ~ 時々胸が熱くなる~🎵

そして、もう一つの望みは……

先月の予備校での模試の結果が届いた「関西私立大学模試」

これが事実上、初めての本格模試だった

僕たち現役生クラスでは、担当のチューターが、まずはこの模試を照準に頑張りましょうと叱咤激励してくれていた

僕は高2の冬から受験勉強をスタートさせたが、超進学校でもない高校の下位グループにいた者が巻き返すには、かなり遅めのスタートだった

それでも、独自の学習パターンを編み出して、たゆまず努力はしてきたつもりだ

だが、マラソンで言うと僕はいったいどの辺りの集団にいるのだろう?

前方なのか、中団なのか、後方なのか、全くわからない……

判定結果の入った封筒を恐る恐る開けてみた……

第1志望 関西学院大学・経済学部

→判定C(合格可能性50%程度)

第2志望 関西学院大学・商学部

→判定B(合格可能性60%程度)

おっ?これは何とかなるぞ‼️

判定D以下でなければいいと思っていたので

よ~っし、これなら勝負できるぞ‼️

彼女に電話をかけた

お盆明けに唯一あるオフの日を、彼女と過ごしたかった

僕にとっては、夏休み最後のオフの一日だ

彼女の街と僕の街の中間辺りにアイススケート場がある

そこをデートの場所に選んだ

真夏の屋内スケートリンクは、清涼感に包まれていた

手袋の着用が必須だったが、手と手をつないでの氷上は、まるで童話で読んだ舞踏会のようだった

その次に、スケート場に併設されている人工芝のパターゴルフで遊んだ

今度は二人でのゲーム性を楽しみたかった

真剣な眼差しで、ゴルフボールとカップの距離を測る彼女の表情

至近距離からのパットを外し、下唇を軽く噛んで、はにかみながら悔しがる彼女の表情……

死ぬほど愛おしいと思った……

その時、施設の有線放送で、たまたまサザンオールスターズの『栞のテーマ』が流れていた

🎵彼女が髪を指で 分けただけ それがシビれるしぐさ 心にいつも アナタだけを 映しているの~🎵

千里さんの曲でなくて申し訳ないのだが、今でもこの曲を聴くと、あの場面がよみがえり、泣きそうになる💧

自分の中で妄想していた来春クランクインの自作自演ドラマ「六甲GIRL」

早々に彼女をヒロイン役に決めていたのに……

なぜか途中で、新進気鋭の新人を秘密裏にキャスティングしようかと企てた、ぼんくらプロデューサーの僕……

「六甲GIRL」のヒロイン役はやっぱり彼女で……と

都合よく、配役し直した夏の一日だった

🎵I say good-bye my sweet memories, 'cause I love you, I need you wow wow🎵

……………to be continued

#大江千里
#大江千里ファン
#大江千里さん好きと繋がりたい
#大江千里好きと繋がりたい
#大江千里ファンでした
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