再会の熱海

断捨離は、心の風通しもが良くしてくれます。
できた余白が爽快で、今までの自分を一新したくなります。
それが功を奏したようで、わたしの一番大きなしこりが思わぬ展開で解消されたことがありました。

記憶の断捨離として古いアルバム整理をした頃の、演歌みたいな話です。

数年前、父方の従姉から電話だったかメールだったか、祖母宅終活についての確認連絡が来ました。
そんなのは初めて、わたしの携帯番号を知っていたことも驚いたけど、子どもの頃の従姉との記憶が還ってきてとても良い気分になりました。
昔の想い出でそうなることは、わたしにとっては珍しいこと。

ただ、お知らせの内容は、またうちの爺の謎行動により、きょうだいのなかで一人だけ未処理になったままの件があるということ。
全く頭ん中どうなってんのか本当に疲れる、結局今回もわたしにお鉢が…

これがわたしの地雷トリガーの一つ、でもこの時はなんかもう感情を動かすのさえもったいない気がして。
どうせ説明しても逆に嫌な思いさせられるので、本人に伝えず、無機質に作業進めました。

些細な気の持ちよう、だけど、これはわたしにとって大きな新しい転換。
いつも激昂してたのを真逆にして淡々と作業。
その効果か、関係各所が感じ良く知恵をくれたりして、案外スムーズに事なきを得ました。

従姉へ作業の完了報告後、名産品を送ってくれたり、折に触れ連絡くれたり…
このいつもの厄介ごとは、従姉とのささやかな交流が始まる吉事となり、そちらを大いに喜ぶことにしました。

母脱藩の際、わたしが悪者にされたため、母方親類とは絶縁になって久しく、盆正月の主人のドヤ顔に辟易していたこともあって、
わたしにも親戚がいる🌸
それが予想外に心丈夫になれました。
血縁信仰の気持ちが、初めて少し理解できたかも。

従姉の人柄も大好きだったのです。
歳上の優しいおねえちゃんともっとお近づきになりたかったあの頃、大人の思惑でなかなか一緒に過ごせなかったのが、今になってこんな形で話が出来るなんて。

それからまた少し後、現実逃避の旅へ出たくなり、検索し始めると、急におねえちゃんを誘ってみたくなったのです。
親に悩まされる同士で慰労会したいねと話していたけど、ずっと会って無かったのに、なにか変に誤解されるかな？警戒されるかな？ と少しは懸念しました。
でも思い切って誘ってみると、定宿にしてる温泉宿ちょうど予約してあるからどう？と返事がありました。

わたしの範疇超えた予算オーバーだけど、こんな機会は滅多にないから、としばし迷うも清水の舞台から飛び降りることに。
従姉のご主人様に予約を譲ってもらい、2人で満喫させてもらうことになりました。

従姉の結婚式以来、30年ぶりの再会は、熱海の高級旅館で。
スパエステ受けて待ってるねとのことで、後追い私もエステ受けすっぴん状態で客室へ案内してもらいます。
部屋の扉を開けると、抱きつかんばかりにおねえちゃんが飛びだして来てくれました。
お互い老けはしたけど面影そのまんま、涙ぐんで挨拶かわし、なんとすぐ2人すっぽんぽんになって、客室の露天風呂に。

全く緊張も恥ずかしさも無く、なんだか不思議な再会体験です。
オバサン同士だけど、小さい女の子同士みたいな、時間を超越したような楽しさ。
それぞれの歴史を語り合い、親苦労・祖母武勇伝で大爆笑、ビールに始まりワインに日本酒、飲んで飲んで飲みまくりました。
夕食の静かな雰囲気のレストランで懐石コースを食しながらも大爆笑、話弾み過ぎて腹筋も顔筋も痛いくらい。
こんなに気の合う何でも話せる仲、知らなかったし思ってもみなかった、おねえちゃんがそう言ってくれて本当に嬉しかったのです。

あぁもっと早く親交したかった、でもここまで各々頑張ってきたからこそ、今おもしろ話できるのかな、なんて労い合いました。
包み隠さず気を遣わず話が出来たことも有難い、何より「よく堪えて頑張ったね」と言ってくれるひとが現れたことが神様からのご褒美なのです。

弟を護りたくて、対外的には両親の騒動は全てわたしが被るようにして、ずっとやって来ました。
わたし自身、悪い行いで思わぬ騒動を起こしたことも数々あったので、余計にそうしてきました。
それもあってそんな風に労ってもらうことなど皆無、望みもしませんでした。
頑張ったねよくやったね、と言葉をかけてもらえ胸の奥がじんわり温かくなりました。
あぁわたしはそう受け止めてもらいたかったんだ、誰かにも、わたし自身にも。

断捨離のあと、必ず何か素敵なことが起こります。
今回は、わたしの何かが確かに変わって、いつもと違うことに踏み出せるようになって、不思議な展開で、今までずっと願っていたことが叶いました。
自分でも気づけてなかった本心の願いです。

このあと、知らなかった父方のルーツ含めた色んな話を聞ける事にもなります。
ずっと疑問に思っていたことのこたえも、わたしが気づかないといけないことも、このご縁から得られることに。

人生ってほんとに不思議な旅です。