第2話 オウサマペンギン
テクテクテク
わたしはペンギンのへやをとびだし、サギのハルカがとんでいったほうこうへあるいてる。
ハルカはもうにみえなくなっちゃったけど・・・。
とべるとりはなんかずるい。
どんどんとんでいっちゃうんだもんなー。
「ん?あのこえは?」
わたしのななめうしろのほうから、ききおぼえのあるこえがきこえた。
わたしはきょうみもっちゃうとダメなんだー。
きがついたらそっちにむかってあるいてる。
「くるしゅうないぞ。」
あのえらそうなくちぶりは・・・
「オウサマだー!」
ペンギンのへやのそばにあるちいさなたてもののなかのガラスのむこうにオウサマペンギンたちがいた。
「オウサマ―!」
キョトンとしてる。
4わのオウサマがそれぞれのほうこうをむいている。
いつもそう。
よくしってる。
ペンギンのへやにふゆだけいっしょにいる。
はるからあきはどこかにつれていかれてる。
おかあさんは
「ああいうのを『わたりどり』っていうのよ。」
っておしえてくれた。
ほんとかどうかわからない。
わたしたちフンボルトペンギンより5ばいぐらいおおきい。
たいどは10ばいぐらいおおきい。
だからきらわれてる。
じぶんたちはきづいてないみたい。
わたしはすきでもきらいでもない。
なんだかいやなかんじだけど、くびのところの「きいろ」がかっこいいんだ。
いま、なんであいにきたかというと、
どんなところにすんでいるのかというきょうみ
と
じゆうになったすがたをだれかにみてほしかったんだ。
「オウサマ―!」
てをふりながらおおきなこえでさけんだ。
やっとこっちをみてくれた。
おどろいてる。
けど、おどろいてないふりしてる。
「くるしゅうない。ちこうよれ。」
そういったのはヒガシのオウサマ。
いわれなくてもちかづくわ。
「くるしゅうない。なにをしておる?」
これはニシのオウサマ。
そらをとびにきたなんていえない。
「くるしゅうない。どうやってそとにでたのじゃ?」
これはミナミのオウサマ。
どこからしゃべればいいの?
「くるしゅうない。そとにいるとはおかしなやつじゃ。」
こんどはキタのオウサマ。
「なんでこんなところにいるの?」
オウサマたちがかおをみあわせている。
そして、かいぎをはじめた。
はげしくはなしあってる。
けっきょくはジャンケンだ。
ジャンケン??????
なにきめてるの?
いちばんまけたニシのオウサマがしゃべりだした。
「こんなところというな。ここは『きゅうでん』じゃ!」
き・ゅ・う・で・ん?
「『き・ゅ・う・で・ん』ってなに?」
「オウサマがすむところじゃ。」
ん?おかしいぞ。
ふゆのあいだはいっしょにいるのに。
「ふゆはなんでわたしたちといるの?」
オウサマたちがまたかおをみあわせている。
そして、かいぎ。
こんどはぜんぜんはなしがはずまないみたい。
また、ジャンケンだ。
またいちばんまけたニシのオウサマがしゃべりだした。
「それはじゃ・・・・・そう!しょみんのくらしをひとふゆけいけんして おるのじゃ。」
ほかの3わのオウサマたちはなっとくしたようにうなづき、やがてはくしゅ。
ニシのオウサマはむねをはって、えらそうにしてる。
「そとがあついからここにいるんでしょ?」
またオウサマたちはかおをみあわせた。
またかいぎ。
こんどははげしいかんじだ。
「ちがう!」
「そうだ!」
「ちがう!」
「そうだ!」
オウサマたちもわかってないみたい。
やがて、それぞれのほうこうをみながら、だまっちゃった。
こたえるのあきらめちゃったのね。
「もうきかないわ。」
オウサマたちがまたあつまってきた。
かおがあんしんしてるわ。
「なんでそとにでておるのじゃ?」
きかれるとこまるくせにききたがるのね。
「サギのハルカっていうのがきてね。」
ひととおりしゃべった。
オウサマたちはポカーンとしてる。
すこししてから、まともになったミナミのオウサマが。
「つまりどういうことじゃ?」
きいてなかったのね。
ムカッとするわ。
「だからそらをとびによ!」
オウサマたちがいちどにわらいだした。
なによ、しつれいねー!
「よくきくがよい。」
こんどはキタのオウサマがどうどうとしゃべりだした。
「ペンギンとはそらをとべないものなのじゃ。」
「なんで?」
「そこにぎもんをもつでない。」
「サギはおなじとりなのにとべるのよ。」
「それはサギだからじゃ。ペンギンはとべないのじゃ。」
「だからどうして?」
「そうきまっておるからじゃ。」
「それはなにかふこうへいだわ。」
「そうではない。」
とくいげにせきばらいをひとつする。
「サギはそらをとべる。ペンギンはとべない。
しかし、
ペンギンはおよげる。
サギはおよげない。
ここがだいじなのじゃ!
とべるとり、
およげるとり、
はやくはしれるとり、
とりにはさまざまなとくいなことがあるのじゃ。
なのでふこうへいじゃないのじゃ。
とくいなことをこころよりほこるがよい!」
むねをはってみおろしてくる。
きっとはくしゅがするのをまってるんだわ。
だれがするもんか!
「ということは、ペンギンはとべないから、およげるってこと?」
まだむねをはったままのキタのオウサマがゆっくりとこたえた。
「まあ、そういうことじゃ。」
ん?それってひょっとして・・・・
わたしはおどろきでむねがいっぱいになった。
それから、わらいがこみあげてきた。
「じゃあ、およぎがにがてなペンギンはそらをとべるのね!!!!!」
なんでわたし、およぎがにがてなのかやっとわかったー!
わたしはとくいげにとびはねてる。
おうさまたちはなにかあわててる。
ひっしでてをふってくる。
「ちがう!!!!! ちがう!!!!!」
それをみたわたしは、えがおでふりかえす。
そうそうわたしはハルカとそらであわないといけないんだった。
こんなところであそんでられないわ。
「オウサマたち、さようなら。またねー。」
オウサマたちはなぜかガラスにかおをすりつけながらみおくってる。
わたし、けっこう、にんきものだったのね。
「ちょっとまつのじゃ!」
わたしにいってほしくないのね。
でも、ごめんなさい。
そらをとべるペンギンにはあそんでるひまないのよ。
オウサマペンギンの「きゅうでん」をとびだしたわたしはむちゅうで、はしった。
はしった、はしった、はしった。
はしってるうちにとびかたをおもいだすかもしれない。
ハルカも
すぐにおもいだすよ。
っていってたし。
そらとぶペンギンとしてそらからどうぶつえんをみおろすわ。
おとうさん、おかあさんもおどろくかなー。
はやくとびたい!!!
じゆうをてにいれたわたしは、つぎにとびかたをてにいれるわ。
そらがわたしをまっている。
あのときのわたしはほんとにそうおもった。
つづく
絵 あぼともこ