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デビフレ6 決闘

私の家系は代々聖職者として、神に使えて来た。

私も物心ついた時から聖なる力について学び、エクソシストの称号を枢機卿より与えられ、悪魔祓いを従事して来た。

己を制御出来なくなった悪魔に説得は通じない
ただ力を爆発させ、破壊衝動のままに人を襲い続ける。

私はキュミルを浄化する為に精神を集中させた。

敏感に殺意を感じ取りキュミルの抵抗も激しさを増していった。しかし、私達の覚悟は固かった。

ジェミニマは国家に命を捧げる軍人として、どんなにその身を危険にさらしても、市民に危害を加える可能性のある悪魔を決して見逃しはしないだろう。

私は、我が一族の名誉とプライドを保つために、決して後退しないと誓っていた。

結局、力の暴走には力で抑制するしか方法は無い。

ジェミニマの覚悟と私の決意が一つの念動力になりキュミルを貫く。

私は高らかに叫んだ!「この世界は、お前だけのものではない」

しかし、キュミルは、なおも抵抗し悪魔的なエネルギーを全身から放出させた。

力の狂乱が再び始まった。キュミルの荒ぶるエネルギーが私達を襲う。しかし、ジェミニマは奴の怒りを物ともせず、勇敢に立ち向かった。

「貴様がどれほどの力を持っていようとも、私は譲引かない!」ジェミニマの声は強く、確固たる信念に満ちていた。

その一方で、私もまた力を溜め始めた。キュミルを制止するには、武力行使以外に道はない。だからこそ、我が一族が代々守り続け、培ってきた力を全て解き放つ準備を整えていた。

"悪魔よ、父と子と精霊のみ名において命じる!私に従え!"

私の声が空間に響き渡ると、一瞬、全てが静寂に包まれた。その次の瞬間、強力なエネルギーが私の体から放出され、キュミルに向かって突進した。

キュミルは驚愕の表情を浮かべながらも、エネルギーの衝撃に耐えようとしていた。だが、多くの人々が信仰して来た強大な念力は、悪魔と言えでも争う事は出来ない。

圧倒的な数と、長い歴史に裏付けされた、揺るぎ無い正義の力がキュミルに襲いかかる。

キュミルは苦痛の表情を浮かべながら必死にもがき最後の抵抗をしている。
「嫌だ!嫌だ!俺は誰にも従わない!」

しかし、私とジェミニマの力が合わさった瞬間、キュミルはガクガクと震え出し、その場に座り込んだ。

暴走していたエネルギーは次第に静まり、落ち着きを取り戻しつつ有った。

キュミルは涙を流しながら心の中で改宗を拒んでいた。

しかし、たった1人で抗う事など出来るはずもない。

それは、自らの意思で改心したと言うよりは、絶対に勝てない相手を前に屈服し従属する動物の本能の様なものだ。

恐怖で身体が動けなくなり、その身を完全に相手に委ねる状態だ

逃れようとしたり、抵抗しようとすれば返って自分の身に危険が降りかかると脳が判断して身体が動かなくなる。

キュミルは完全な無力感に包まれていた。

彼は、自身が抵抗できない恐怖に直面し、その恐怖が彼の意識を完全に奪った。

キュミルを取り囲む聖なる存在感が彼の全身を震わせた。その瞬間、彼は抵抗の意思を完全に失い、ただただ屈服するしかなかった。

しかし、彼の心の中で何かがうずき始めた。それは抵抗の意思ではなく、生き延びるための原始的な本能だった。彼は膝をつき、土に額をつけ、自身の存在をできるだけ小さくした。それが彼にできる唯一の、かつてないほどの孤独な行為だった。

その時、突然空気が凍りつくような静寂が広がった。

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