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デビル・フレンド18 処分
私とキュミルは、聖教区最大の大教会へ召喚された。
私達は巨大な教会の中にいた。それは古い石壁が見守る中、深い静寂が包む巨大な空間。
2人は黒ずくめのローブをまとい、ステンドグラスから降り注ぐ色とりどりの淡い光が照らす、立派な聖堂の中央に立っていた。
遠い異国の地、スペインから訪問されてる司教様の前に、2人は直立する。
司教様は私たちに向かって話し始めた。
「貴方達の役目は、ここで学んだ事を外の世界にもたらす事です。信仰は行動によって示される。」
彼の話し方は厳しく、言葉は断然と我々に向けられていた。
キュミルは口を結んでいた。彼の瞳は何かを探すように彷徨い、彼自身に課された責務について思索しているようだった。
次に、神学校の校長であろうと思われる男が私たちの方に進み出てきた。
彼の体格は壮健で、熟年の威厳を纏っていた。神父が着る特別な正装 ”シャスブル” を身にまとい、彼の銀色の髪は整えられ、深い知識と知恵を象徴していた。
彼の眼差し穏やかながらも厳しく、規律を強く守っていることを伝えていた。
そして、ゆっくりと彼の深みのある声が聖堂全体を響かせた。
「喜びを感じ、喜びを与えるために、試練を受けるのです。」それはただの宣言ではなく、命令とも励ましとも取れる言葉だった。
そのまま、彼はキュミルを直視した。彼の目は厳しいが、理解と情け深さも滲んでいた。
彼は冷静に言った。「キュミル、あなたはここから去ることになります。無期限の停学を言い渡します。しかし、これは罰ではなく、新たな旅路への招待状です。あなたは儀式を受けることになります。その儀式はあなたを試し、そして最終的にはあなたを強くし、より深い福音となるでしょう。」
キュミルは何か言いたげな、何処か納得してない様子だったが、此処は意見を交換する場では無い
その事を彼女も理解してる様で黙って真っ直ぐ前を向いていた。
私は「アーメン」(承知いたしました)と答えた。
私の声は静かだが、それは自分の決意を示す強い言葉だった。私の中で静かに、しかし確実に、新たな旅が始まることを知っていた。
帰り際、キュミルは僅かに顔を歪め、悔しそうに私に向かって言った。「何で私ばかりが…」彼女の声には不満が滲んでいた。
私は静かにキュミルの隣に歩み寄り、彼女に事実を伝えることにした。
彼女の行動が招いた結果について、彼女自身が理解するために。「キュミル、君が階段から突き落とした青年は、しばらく入院しなければならない状況だ。君が暴走して肋骨を折る重傷を負った人も居るんだよ。」と静かに告げた。
彼女の顔には驚きと戸惑いが浮かんだ。その後、私はさらに続けた。「事件の詳細は警察が調べることだ。教会はその調査に深く関与するべきではない。しかし、我々は多くの人と関わりながら生きてる。
だからこそ、我々自身があるべき道を示す責任がある。
そのため、何らかの対応を取らざるを得ない。それが君への停学処分だ。」
私の言葉はキュミルに深く突き刺さった。彼女の表情からは、自分の行動が招いた結果について深く反省している様子が見て取れた。
彼女の表情を見るに、自分が相手にどれ程の大怪我を負わせたも知らなかったし、そんな怪我をすると思ってすら居なかったのだろう。
彼女が、どんな理由で相手に危害を加えたのかは分からない。
例え、そこに正当な理由があったとしても、受けるべき処分は変わらないだろう。
暴走し、人に危害を加える様な者は、その者に合った学びを受けるべきだからである。
彼女に必要なのは、皆んなで楽しく授業を受ける事よりも、己の中の悪魔性と向き合い御す事なのだから。