サトウキビと生きる島 ー辺境離島探訪 南大東島
沖縄に暮らしている当時、僕が考えたのは「どうせなら、住んでいる今だからこそ行く気になるが、県外からは観光でわざわざ行かないような島々を巡ってみよう」ということ。離島旅行の記憶をたどります。
北大東島編から続きます。
北大東島から飛行機で到着したのは、南大東空港。こちらも可愛らしい空港ですが、北大東空港よりちょっと大きいか。
そもそも北大東島(北大東村)と南大東島(南大東村)が、どれほど違うのか、簡単に比較してみましょう。
【北大東村】
①面積 11.94㎢
(上記は北大東島のみ、ほか米軍射爆場のため無人の沖大東島1.15㎢がある)
②人口 590人 / 世帯 326世帯 / 村議会定数 5
③郵便局1、駐在所1、消防署1、幼稚園1、小中学校1
【南大東村】
①面積 30.57㎢
②人口 1,289人 / 世帯 680世帯 / 村議会定数 8
③郵便局1、駐在所1、消防署1、幼稚園1、小中学校1
全体的に、北大東島の倍くらいの面積に倍くらいの人口がいるため(人口密度はさておき)、南大東島の方が、相対的に集落としては栄えている印象でした。
さて、北大東島では自転車疲れしましたが、南大東島では空港近くでレンタカーを借りて観光に出発しました。何よりまず訪れてみたかったのが……
あれれ? ここにも南大東空港? いえ、真ん中に映る看板をよーーく見ると、
ラム酒の製造過程が。入口の「(株)グレイスラム」という看板も読めますでしょうか。そう、ここは旧空港の建物を居抜きで使った、ラム酒の製造工場なのです。南大東村の特産であるサトウキビを使った「沖縄県産ラム酒」を製造・販売しています。
中に入ると時代をめちゃめちゃ感じる空港施設が(あえて?)そのまま残っています。ここのカウンターでフツーにラム酒が買えます。
なぜ南大東島でラム酒?と疑問に思った方、原田マハさんが実話をモデルにした小説を執筆しております。ご興味がわいた方、ぜひご一読ください。
僕はラム酒をあまり飲まないため、ケンジさんのバー(この記事参照)にお土産で買って帰りました。そのラムを使ったラムコークを一杯作ってもらい、爽やかに飲み干しましたが、飲みやすかった! なお、沖縄本島でも「県産ラム」として比較的手に入りやすいと思います。ほら、泡盛離れとか言ってる場合じゃないって思うでしょ?(笑)
そのあとは、かつてサトウキビを輸送していたという県内最古の鉄道であるシュガートレインの跡地を見に行ったり(かわいい)※写真はInstagramから拝借
日の丸山展望台から、「お盆のよう」と評される、南大東島の島内風景を一望して景色の美しさに息を呑んだり、
漁港まで降りて、沖縄本島との間を隔てる太平洋の荒々しさを想像して、ため息をついたりしました。
当時スマホとデジカメを併用しておりデジカメの写真を紛失しているため、全体的に写真が残っていないのですが、星野洞などの観光名所も巡った……と思います(おぼろげ)。
夜は市街地の観光客向けホテルに宿泊し、近隣の居酒屋を一人ではしごして、ビールを片手に刺身などをつまみました。一人旅だと品数がたくさんはオーダーできないのが残念ですよね。
ちなみに南大東島では、一部食通の間で「食べたことがないほど美味だが、その晩はパンパースが必要」「幻の深海魚」と噂されるインガンダルマを試みる旅行客も少なくないようですが、ただでさえお腹を壊しやすい僕、そんな危険な食材に手を出すつもりはなく、通常メニューでご機嫌に酔っ払いました(インガンダルマが気になる方はご自分で検索してみてください)。
どこの店で誰から聞いたのかもはや覚えてませんが「南大東村には若い女の子が少ないので、空港に若い子が降り立ったら、その日のうちに島中にニュースとして駆け巡るよ」というしょうもないセリフがなぜか記憶に残っております……。そんなこと言ったら北大東村はどうなるの?とちょっと思いましたね。
本来、2泊するつもりの南大東島で1泊しかできなかったことを残念に思いつつ、翌日午前には空港を発ち、那覇経由でうるま市石川に戻りました。南大東島はサトウキビにまつわる産業や施設が多い一方で、沖縄本島や他の離島の島々とはまた違った、雄大な自然の美しさがとにかく印象に残っています。
本記事の最後に。「旅立ちの島唄〜十五の春〜」という映画をご存知でしょうか。高校がない南大東島では、島民の子供たちは皆中学卒業後、高校進学のために島を離れます。この映画はその南大東島を舞台に、とある少女の旅立ちとその家族の機微を描いた映画です。
南大東島を訪問する際には、こちらも鑑賞してから出かけてみると、島ですれ違う子供たちの将来に思いを馳せるなど、感慨もひとしおかもしれません。……僕は今に至るまで観ておりませんが。