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やばい、まじやばい! 「意識」は異次元のクラウドとつながっている

やばい、まじやばい!
何がやばいって、昨日、うちの茶蔵教授が学会で発表した「異次元クラウド仮説」。
医学界は無視を決め込んだけど、医学とは全然関係のない量子力学、宇宙物理学の権威達が大騒ぎしてる。

教授が「異次元クラウド仮説」を考え始めたきっかけは、海馬の中に特殊な感応細胞を発見したことだった。

詳しい経緯は省くけど、どうやら脳ってのは、RAMのようなもので、一時的な「記憶」を司る役目に過ぎず、我々の「記憶」と「意識」はどこか別の次元に存在するクラウドのようなものに個々に保管されていて、そこから必要な「記憶」、「意識」をその感応細胞を通して引き出して使う仕組みと考えた方が合理的という結論になったんだ。

人間は異次元クラウドとは生まれながらにその感応細胞で自動接続されているものらしい。

教授に言わせると、RAMの容量とクラウドから情報を引き出す能力の組み合わせで、人間の頭の良し悪しがどうやら決まっているらしい。

「お前が馬鹿なのは、生まれつきRAMの容量も少なければ、感応細胞の性能も低いからで、いくら努力をしても無駄だから適当にやってればいい」
って口の悪い教授は言うけど、そう思っていたとしても、教え子のオレにそれ言ったらダメだろう。


研究を通じて、接続に何らかのバグが発生すると、他人の「記憶/意識」のあるクラウドに接続してしまうこともわかってきた。

物理学、数学、化学、音楽、芸術といった分野で活躍する天才と称される人達は、他人の「記憶/意識」のクラウドに誤接続して、それを活用しているようなんだ。

天才がよく訳の分からない事をよく言うのは、他人の「意識」のあるクラウドに接続しちゃってるからなんだな。
生まれつきの天才というより、生まれつき接続バグを持った人と言った方がいいかもしれない。

そして、天才達は過去の学問体系や理論を短期間にマスターしたというようりも、最初から全体を理解していた(のを思い出した)と考えた方が良いこともわかってきた。
どうも天才たちは過去の人達の「記憶/意識」のクラウドにも接続しているらしいんだ。
つまり過去の人達の膨大な「記憶」と「意識」は消えちゃうんじゃなくて、クラウドにずっと格納されたまま残っていることがわかってきたんだ。

これってすごいだろ。

また、この接続バグ説で、一定数の統合失調症は接続バグによるものであると説明がついた。
前世の記憶を持つ人、誰それの生まれ代わりだと言う人が時々現れるのも合理的な説明がつく。
ただバグってるだけで、頭おかしい人じゃなかったんだな。

そして、今回の学会発表での一番のキモは、教授が立てたもう一つの仮説。

それは、今後生まれてくる未来の人達の「記憶」と「意識」も含めて、クラウドには最初から全ての「記憶」と「意識」が存在しているんじゃないかということ。

何言ってるかわかんないだろ。

これまでの天才達の発想、思考プロセスや、歴史上の数々の大発明の誕生プロセス、歴史的転換点となった意識変革の起こりようなんかを精密に分析していくと、自分のRAMの処理能力 & 時間の経過とともに蓄積が進む自分のクラウドへのアクセス+過去の先人達の「記憶」と「意識」を蓄積したクラウドへのアクセスだけではどうにも説明がつかないんだ。

むしろ、未来における「記憶」と「意識」にアクセスした結果と考えざるを得ない。

天才が未来の「記憶」にアクセスできるなら、もっと一気に科学技術が進むんじゃないかって?

それは、その時の天才の理解水準と意識水準、そしてその時点での社会の許容度合いにかかってると教授は言ってる。

いくらすごい未来の「記憶」にアクセスできても、天才の理解水準、意識水準がそれに見合ったものになってないと理解できないし、仮に天才が理解し世に送り出せたとても、社会がそれを許容できなければ、まったくフィージビリティがないんだよ。
・・・って、これは教授の受け売りだけどね。

そして、未来の「記憶」と「意識」も最初から存在するものであるなら、時間が過去から未来へ進むものだという時間の概念自体がそもそも間違っている可能性があると教授は言っている。

この世で我々が目にしている全ての事象は既に存在する事がランダムに出現しているだけのことにすぎなくて、それを我々は時間だと思い込んでいるんじゃないのかって。
そうなると、自分の「記憶」と「意識」は時間の経過とともにクラウドに蓄積されていくものではなく、ランダムに出現する事象に個別反応して、クラウドに最初から存在している都合の良い「記憶」と「意識」が紐づけられてるだけなんじゃないのかってことだった。

もはやオレには何言ってるかわからない・・・

けど、量子力学や宇宙物理学の専門家、はたまた数学者、宗教家といった畑違いの世界の人達がすごい大騒ぎをしている。
昨日から研究室に世界中からコラボしないかって問い合わせが殺到してる。教授の言ってることは、かなりすごいことらしい。わからんけど。

でも実は教授には今回の発表に間に合わなかったもう一つの大きな仮説があるんだ。

それはもっとぶっ飛んでいる。

異次元クラウドが存在するとなると、マルチバース(多元宇宙)が否定できなくなるんだ。
そうすると並行宇宙にいる別の自分(無数の並行宇宙に無数存在している可能性が高い)とクラウドを共有してる可能性が出てくるんだ。それもかなり高い確率で。

体験しなかった過去の記憶、現実とはちょっとズレてる記憶、リアルな夢、予知夢なんかはそれで説明がつきそうだし、そして、これが一番重要なんだけど、人間の「意識」とはいったい何なのか、「意識」はどのように構成されているのか、死後に「意識」はどうなるのか等の長年の謎にも何らかの説明がつきそうだ。

「意識」には初めも終わりもなく、最初からクラウドに存在していて、例え自分が肉体的に滅んだとしても、クラウドの中で、そして無数の並行宇宙で「意識」=「自分」は永遠に存続する・・・となると、人類の死生観が変わるかもしれない。

茶蔵研究室では、今後は「意識」に焦点を当てて、異次元クラウドをマルチバース理論からアプローチしていくことになる。
教授は仏教を含む宗教哲学的な側面からのアプローチも視野に入れておく必要があるとか訳のわからない事を言ってる。

オレの理解がとうてい追いつくとは思えないけど(オレは元々脳外科医を目指してて、路線変更で仕方なく研究者になったクチなんだよ)、筆頭研究員が音を上げたら研究室の後輩達に示しがつかないからね。

次の論文発表に向けて、なんとか頑張るよ。

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マジバイ
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