やばい、まじやばい! ”ああん気持ちいい” しか言えなくなったーーー!
やばい、まじやばい!
何がやばいって、「ああん気持ちいい」しか言えなくなった。
昨日の夜、会社帰りに家の近くのセブンで焼肉弁当買ったのね。あれ好きだから。
で、レジで精算して、店員からレンジで温めたお弁当を受け取る時に「ありがとう」って言おうとしたら
ああん気持ちいい
って口が勝手に言ってた。
え? って顔で店員は私のことちらっと見たけど、自分の言ったことにびっくりして固まってた私を見て、瞬時にこれは関わったらダメな部類の人だって判断したみたい。
何も聞こえなかったような顔でお弁当を渡してくれた。
私は恥ずかしさのあまり、もう一目散でコンビニから逃げ出した。
で、今朝。
会社に行って、オフィスに入っていつものように「おはようございまーす」って明るく爽やかに挨拶したら、またもや
ああん ♡ 気持ちいいーーーーー!
って明るく爽やかに言ってた。
あわてて口を抑えたけど、向かいの席の後輩の翔子ちゃん大爆笑。
これはなんかやばい! 超やばいことが私に起きてるってようやく気づいた。
せっかくばっちりメイクして来たのに、汗が顔からどっと吹き出してきた。
このまま会社にいたらまずい。
そう思って私は行き先掲示板に適当なクライアントの名前を書いて会社から飛び出した。
とにかくどこかで一人になろう。一人になって考えよう。
私の足は日比谷公園に向かってた。うちのオフィスから内堀通りを真っ直ぐ行けばすぐだからね。
そしたら日比谷公園の交番の真ん前よ。
あともう一息で公園というところで、いきなりヒールのかかとがグネってなって、私は交番前の歩道にもんどりうって後ろ向きにひっくり返った。
足首は変な方向に曲がってて完全に捻挫してるし、膝も路面に変な角度で打ったみたいで、すっげー痛い。
痛てーーー! ちくしょーーー! と言ったつもりが、口から出たのは
ああん気持ちいいーーーーーーーー!!
ああん気持ちいい、ああん気持ちいい と言いながら、苦痛に顔を歪めて日比谷公園の交番前で大の字で苦悶している私の横を何人もの通行人が通り過ぎていったわ。
でも最悪はそれからだった。
交番から警官二人があわてて出て来て、路上で悶絶してる私に聞くのよ。
「大丈夫ですか?」「どうされましたか?」
こんだけ苦しんでるんだから、大丈夫なわけないでしょ。もう見たらわかるでしょ。
大丈夫ですかー?
ああん気持ちいいぃぃぃ! ああん気持ちいいぃぃぃーーー!
どうされましたかー?
ああん気持ちいい! ああん気持ちいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
もう語尾でしか私の感情を表現できない。
で、私が送られたのは病院じゃなくて、すぐそばの丸の内警察署。
交番から”変な女が暴れてる”って通報されたみたい。
私の右足首は倍ぐらいに膨れ上がって紫色に変色してるし、膝は擦りむいて出血してた。
さすがに警察署のおじさんは心配してくれて「足首とか痛むんじゃないの? だいじょうぶ?」って繰り返し聞くんだけど、
当たり前でしょーーーーーー!
見てないで早く病院連れてってーーー!
って必死に訴えても、口から出るのは、
ああん気持ちいいぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!
こりゃ薬かなんかで頭完全にいっちゃてるねー っておじさんは真面目な顔で言い出してる。
このままだとなんか違う病院に送られそうな予感がびんびんにする。
誰か助けに来て!!
山根さん、お願い、助けて!