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「言葉にできる」は武器になる。

個人が発信力を持つ時代になっている。

発信する方法は様々ある。
話すことや文章を書くことは勿論のこと、絵や詩を書いたり、歌を歌うことだったり、なかには行動で示す、という人もいるかもしれない。
自分の思うことを表現する方法は結構沢山の方法や手段がある。

そんななか、今回読んだ「『言葉にできる』は武器になる。」は主に話すことや書くことで表現する人向けの本。
著者は「世界は誰かの仕事でできている。」とか「この国を、支える人を伝えたい。」というCMで有名なコピーを書かれた梅田さんという方。

この本を通じて私が受け取ったメッセージは2つ。
1つ目は「誰かに言葉で影響を与えるには小手先のテクニックを学んでも意味がないよ」ということ。

言葉が上手い下手については、実は気にしなくてもいい。
言葉は上手いや下手が重要ではない、大切なのは重いか軽いか。
なまじ言葉が上手くて、でも軽い、とかになると本心でしゃべっていない、チャラい人、になってしまう。
言葉が軽くて下手なら引っ込み思案、で済む。

実際、文章は流れるように書かれていても、どこか心がこもってない、と感じることはある。
特に相手を知っていると、それに気づきやすい。
この人、こんなこと考えてないだろうな、とわかってしまうから。
一方で、とつとつと話すけれど、とても感動するスピーチもある。

それで思い出したのが、先日ネット上や新聞で話題になった「七日間」という詩。

「七日間」
神様お願い この病室から抜け出して
七日間の元気な時間をください
一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい
あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ
二日目には趣味の手作り 作りかけの手織りのマフラー
ミシンも踏んでバッグやポーチ 心残りがないほどいっぱい作る
三日目にはお片付け 私の好きな古布や紅絹
どれも思いが詰まったものだけど どなたか貰ってくださいね
四日目には愛犬連れて あなたとドライブに行こう
少し寒いけど箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く
五日目には子供や孫の 一年分の誕生会
ケーキもちゃんと11個買って プレゼントも用意しておくわ
六日目には友達集まって 憧れの女子会しましょ
お酒も少し飲みましょか そしてカラオケで十八番を歌うの
七日目にはあなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ
大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう
神様お願い七日間が終わったら
私はあなたに手を執られながら
静かに静かに時の来るのを待つわ
静かに静かに時の来るのを待つわ
(参照:妻が願った最期の「七日間」 投書にこめられた夫婦の物語

本当に本当に心の底から願ったことだとわかるから、読むだけで泣きそうになる。
死を目の前にした人の言葉が重いのは、誰もが心の底から思ったことを話しているからだろう。死を前にして自分を飾るのはきっと難しい。
そして言葉を受け取る側も、いちいち意識はしていなくても、心の底からの言葉だと感じ取るのだろう。

巷にはコピーやライティングに関するテクニックを語る本が沢山溢れている。それらは「下手」→「上手」にスキルアップするものが多い。しかしそれらはあくまで表面的なこと。
この本のなかでは、どうしたら言葉が「重く」なるか、について書かれている。

その一つが2つ目のメッセージでもある「言葉を増やすには多くの体験をすること」

死を目の前にせずとも、自分の言葉に重さを持たせることは可能。
そのうちの一つが多くの体験をすること、と著者は書いている。

イベント業を生業にする以上、さまざまな面白い経験をしているというのは引き出しを増やすことに繋がるので、自分が面白いな、と思うことには積極的に行動するよう心掛けていた。
しかし言葉を増やすことに繋がる、という意識はなかった。
今後は、何か新しい体験をしているときに、どんな言葉が生まれるのか、ちょっと意識を向け、使える言葉を増やしたい。

「言葉にできる」は武器になる。/ 梅田 悟司 2016年出版】

言葉において大切なのは、人を動かす力ではなく、人が動きたいと思わせる力である。(Page.50)
「伝わる」と「動きたくなる」の間にあるもの。その差を生んでいるのは、志を共有しているかどうかである。(Page.51)
体験の減少とともに、動詞は姿を消し、語彙力の減退を引き起こしている。
そのため、できるだけ多くの体験、特に日常ではしないような体験をすることが、動詞をはじめとしたあらゆる言葉を増やしていくことに役立つ。(Page.235)

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