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僕たちは羽ばたいた

誰とも繋がりたくなかった。
今日のBGMは鬼束ちひろのMAGICAL WORLDとセカオワの銀河街の悪夢。
良かったら聴きながら読んでほしいです。

なぜ、ぼくはこの決して長くはない人生の中で虐待を受けたんだろう。
長年考え続けたその答えをぼくは見つけられないままだった。
否、きっとその答えはこれから先、生きていたとしても見つからないんだと思う。
そしてきっと見つけなくて良いんだと思う。
唯一の答えがあるとすればそれが答えなんだろう。
なぜならば、子どもだった頃の自分に罪はないから。
虐待が法で裁かれるようになった今もなお、親が好きな自分を、家族親族を憎めない自分を、少しいじらしく感じてしまう。
小さい身体で激しい暴力を受け止め、向けられる言葉の刃で心をグサグサに刺されながらも心を鋼に鍛え上げ生き抜いてきた自分を誇りに思う。

変わりたい。でも変われない。
この人生はその連続だった。
虐待なんて受けなければ。
ただひたすらに自身と向き合う。
いつもぶつかる壁はこれまでの背景が原因だった。
虐待を受けた過去さえなければ、もう少しマシな人生だったのに…
そうやって過去の経験や体験のせいにしている自分が居てた。
紛れもなく虐待のせいだとしても、そうしているうちは変われない。
頭ではわかっていても、容赦なく症状は襲ってくる。
それは少しずつ蓄えてきた自信をいとも簡単に足元から崩れ落ちていく。
一段一段全身にに力を込めて登ってきた階段なのに、後ろを振り返ると消えている。
そうやってぼくはいつも駆け足で階段を登ってる。
本当はみんなと一緒に地上を歩きたいのに。
土に種を植え、花を咲かせている仲間たち。
そんな仲間を羨ましく思う日もあった。
それでもぼくは、どうがんばってもそんな生き方をすることができない。

「ならば空を飛べばいいじゃないか。」

ある日、どこからともなくそんな声が聞こえてきた。

飛べないよ。
だってぼくの背中に羽根はついてない。

「羽根がなくても飛べるから。もう怖がらなくて大丈夫。まわりを見てごらん。みんなあなたがはじめて飛ぶことをたのしみに待ってくれているでしょう。」

気がつけば、これまで出会ったたくさんの人が
「がんばれー!がんばれー!」
「飛べるぞー!いけるぞー!」
と地上から応援してくれていた。

涙で前が見えない。
勇気を出して崩れ落ちる階段に向かって飛んでみた。

怖い。落ちる。

そう思って目を閉じた瞬間、不思議なことにぼくは空を飛んでいた。

あれ?どうして?

そこはとても暖かくてやさしくて、みんなのことがよく見える。
今まで応援してくれた人、今まで支えてくれた人、みんなの顔がこれまでにないくらい鮮明に。

ぼくたちは羽ばたいた。
消え去りそうな世界からまた一歩。
今日という日に感謝して。

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