駒の返還と過去の自分の成仏
先日、丸ビルホールで芸大の受賞者の演奏会があり、拝聴させてもらった。
若さ溢れる勢いのある勧進帳、結構でございました。
その会の折、在学中の指導教官から長々と借りっぱなしになっていた三味線の駒をようやく返還でき、自分の中で意外と大きな節目となった気がしたのでこのnoteにも書き留めておく。
藝大の一年生のとき、指導教官だった杵屋三澄(東音瀬川靖代)先生から借りた駒を6年経過しようやく返還できた。この日を迎えられて本当によかった。事あるごとにこの駒を返さねばと思い、日々を過ごしていたが、大失恋で自暴自棄になり廃人同然の生活をしていたり、それからようやく立ち直り小康状態になれたと思ったらコロナで学校への入場すら難しい状況になったりで借りてから6年以上、別科修了時に返しそびれてからは4年以上の年月が経過してしまっていた。デリケートな品物なので郵送という選択はなく、また、この駒で良い音色を知れた事から会って御礼が言いたかった。
思えば藝大に入学するとき女装も恋愛も封印し「これからは男の中の男として生きる」。そんな出来もしないことを決意して学校に入った。ただ、元来軟弱であり、ふわふわと気の向くままで本能的な性格、そしてタイプを見るとすべてをほっぽり出してその人の事しか考えられなくなる、動物的な体質の自分にそんな鋼のような気骨ある精神は続くわけもなく。
そして例の忌わしい大失恋の際、本気で指を詰めて相手に送りつけてやろうかと思った。でもそれを食い止めたのは三味線のことが脳裏をよぎったから。左の小指を詰めても三味線は弾けるかもしれないが、なんかハジキとかに影響しそうだな、また弾く日が来たら取り返しがつかないかも知れないと思い、そこまではしなくていいかと思いとどまった。自分に三味線を厳しく指導し、藝大入学を実現させてくれ、長じては三味線弾きとはどうあるべきか、三味線弾きとはなんたるかを教えてくださった杵屋五助先生、一年生の時事細かに指導いただき、音色の良さ、調子、勘所の大切さ、そしてイキを合わせること、珍しい上調子とかも教えてくださった杵屋三澄先生、二年生の時指導いただき、整然とした間、ノリの大切さを教えてくださり、飲み会とかにも連れてっていただいた杵屋五三郎先生…
本当に色んな恩義を思い出します。結局三味線弾きにはならず、その恩に報いることはできなかったけども三味線を通して向き合ったことは自分の糧になり、復帰した日本舞踊には直接的に役立つ面も多い。そして何より、芸事の精神。これこそが自分が美容や踊りをやる上で何よりも糧となり役立っている。
今日の駒の返還を以てようやくその、「男の中の男」とかいう出来もしない信念を持った、過去の無理していた自分が成仏した気がするわ。
今後は自分の気持ちに素直になります。そして芸事にもまた新たな気持ちで向き合います💁♀️
Instagramからの引用文です。
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