【短編小説のような】雨
午前零時前、今日も駅前で人を待つ。
誰、とは決まっていない。
「こんな遅くにお一人ですか。」
そう声をかけてくれた人。
「良かったら今からお食事でも」
薄く微笑んで頷く。
そしてお食事のあと、ホテルで熱を帯びた空しい戯れ。
全てを済ませ、衣服を纏う背中にかけられた言葉。
「あの雨の中、何をしていたの。」
ああ、この人もなのか。
「今日はありがとう。あなたとはここまでですね。」
少しでも、こちらに興味を持ってしまった人には興味がない。
「さようなら、今日は楽しかった。」
乾ききらない傘を持って外に出た。
「あ、もうすぐ日の出だ。」
雨も上がり、薄く青くなってきた空を背に歩き出した。
「次はいつ雨が降るかな。」
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