舞台『パンドラの鐘』を観に行ったら財布が重くなった日の日記
6月8日、渋谷のシアターコクーンで『パンドラの鐘』を観た。
久しぶりに生のお芝居を観た。生身の人間がすぐ目の前で演じているのにはやっぱり特別なエネルギーを感じる。
何より一番の感動は「成田凌が走り回ってる……!」だ。割といつも自信なさげ&ダルそうに立っている役が多いからめちゃくちゃ新鮮だった。声大きかった。祝・初舞台、おめでとうございます。ぱちぱちぱち。
序盤、正直なところ置いてけぼりをくらった箇所もある。そこでこの音はどうなんだろう? と思ったところもある。でも、とにかくラストの成田凌に空気を持っていかれて泣いた。台詞はもちろんミズヲの言葉なんだけど、ひとりで舞台に立っている成田凌自身が発しているような気がして、なんかこう……普通にマスク濡れた。まーた成田凌に負けた。悔しい。何の勝負かは知らないけど。
あー、舞台というものは面白いなあ。
劇場を出た後、ふわふわした心地のまま人混みにまぎれて駅に向かい歩く。東急百貨店のすぐ目の前の交差点で信号待ちをする。向かい側にはビッグイシューを売っているおじさんがぽつりと立っていた。青と黄の国旗のイラストに「NO WAR」という手書きのポップがついている。
そのとき、作品のひとつの背骨である「届くに賭ける」という祈りの言葉がよぎった。このままではミズヲは賭けに負けっぱなしだ(観た人は分かってくれるはず)。私が勝たせてやらなきゃいけないんじゃないか。
というわけで、偽善でもなんでもいいや、とりあえずあのおじさんからビッグイシューを買おう。そう思った。でも困ったことに財布の中に小銭がない。こんなときに限って一万円札しか入っていない。キャッシュレス決済の影響がこんなところで。しかたなく東急百貨店に戻って地下のパン屋さんで買い物をして小銭を作った。
が、しかし。私は結局ビッグイシューを買えなかった。また交差点の信号待ちに立ったとき、販売員のおじさんは休憩なのかどこかに行ってしまっていたのだ。無念。無意味に財布が重くなって、明日の朝ごはんがパンになっただけだった。ごめん、ミズヲの負けを覆せなかったよ。
でも大丈夫、もう1回観に行くからさ。今度こそ。どうかおじさんがそこにいてくれますように!
日記はこの辺で。ネタバレありの感想はふせったーにつらつら垂れ流しました。
ちなみにこの作品は『蝶々夫人』をオマージュしている部分が多くある。知らなくてもたぶん分かるけど、知っているともっと面白い。今回は予習なしで挑んだので、卒論のテーマが『蝶々夫人』でよかったなと心底思った(あれは論文と呼んでいい代物ではないが)。
いつも以上にとりとめがない。でも日記だからいいか。
おわり。