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俺的2024年ランキング
まえがきみたいなもん
30代後半にもなって何をしているのかよく分からなくなることもあるが、毎年自分のハマったものランキングをつけている。2020年に始めてから今年で5回目。昔からランキングというものが好きだ。先日、邦楽のオールタイムベストを発表していたXアカウントが叩かれていて気の毒だった。ランキングなんてもんは無責任であればあるほど良いに決まっている。その点、この俺的、私的ランキングというものは最高である。ケチのつけようがない。評価項目や基準なんて自由。というか不要。ただ各々が心にグッと来た順でランキングすれば良い。感覚を信じろ。これを読んで感化される人なんていないと思うが、もしいたら是非あなたのランキングをシェアしてほしい。
では、オジサンのオジサンによる誰のためのものか分からないランキング、いってみよう。もったいぶらずに1位から紹介していくぜ。
1位 『豆大福』
茨城にあるコアミガメというサウナに奥さんと行った時のこと。古民家を改築してサウナに仕立てた施設はとても趣深く、隣の川が水風呂代わり。ホスピタリティも素晴らしく、近所の方から頂いたというフルーツを出してくれたりもした。帰り際、もし良かったらと豆大福を手渡された。
「い、要らんなぁ」
と思いながら受け取った。昔から餡子は好きだが豆大福は苦手。周りの赤えんどう豆の食感がザラザラして嫌だった。まあでも家に持って帰るか。
翌日、夜に銭湯サウナから帰宅するとなんだか小腹が空いていた。昨日貰った豆大福があるじゃない、と奥さんに言われて、ああ捨てるのも勿体無いし食べるか、と思って少し後ろ向きな気持ちで頂くことにした。
「え、美味いやん」
周りの赤えんどう豆も嫌じゃなくなっていた。逆に香ばしくてええやん、くらいの。もう一度同じものが食べたい。でも茨城なので難しい。美味しい豆大福を近場で見つけるしかない。この日を境に僕の豆大福を巡る旅が始まることになる。まず、ネットで検索すると「東京三大豆大福」なるものがあるということが分かった。まずはこの3店舗から回っていこう。FFの方からもその店舗のひとつである『瑞穂』さんが美味しいよ、と教えてもらった。ある土曜の朝、僕はお店に向かった。到着すると既に10人くらいが列を作っている。15分くらい待っただろうか。いざ、実食。
「う、美味過ぎる…」
柔らかな餡はきめ細かく、舌に乗せたと同時に溶けていく。塩味を含んだ餅はぶ厚く、でもふわふわで柔らかい。超優等生的。豆大福界のマカリスターが口の中でどっかんミドルを決めている。速攻、もう1人のマカリスターをたいらげた。この日から僕は、予定の無い毎週土曜の朝にお店の列に並ぶことになる。表参道で洋服なんか見ず、豆大福だけ買って帰る日が来るなんて。
豆大福は実に面白い。皆それぞれに個性がある。餅の厚さや塩味の含ませ方、こし餡とつぶし餡の選択、えんどう豆の塩味の有無、また、大福そのものの大きさや、餅と餡子の比率。その全てが微妙に違っていて奥が深い。例えば、赤坂の名店『塩野』さんは外側の赤えんどう豆に塩味を持たせ、餅には塩味を含ませていない。エッジの利いた豆大福である。初めて食べた時はコナテと評したが、エリオットかもしれない。小ぶりだし。何の話やねん。
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2位 『Yannis & The Yaw』
9月のサッカー観戦旅行に行くちょうど同じ時期のこと。FoalsのYannisが新しい作品を上梓した。聴くとFoalsが持つソリッドさや性急さはそのままに、グルーブはビンビン、それでいてラフ、でもどこか温かさを感じさせる。全ての楽器が踊るように絡み合い、ひとつの曲を成していた。シンプルに曲も良い。すぐさま僕は作品の虜になった。その雰囲気を作るのに最も影響を与えていたのはドラムだった。最高に心地良い。誰が叩いてんねん、と思って調べるとTony Allenというお爺ちゃん。ナイジェリア出身のドラマーで2020年に亡くなっていた。2人は2016年にプロジェクトをスタートさせ、コロナ禍と彼の死を経てようやく今年、Yannisが作品に仕上げたのだった。
『Lagos Paris London』は今年、僕が一番聴いた作品である。9月から聴き始めたのに再生回数がナンバーワン。当然、サッカー観戦旅行の機上でも聴き続けていた。僕は空の上で衛星通信を契約し、なんとなく渡英期間のライブを検索していた。するとロンドンに到着する同日、彼らの公演があることが分かった。でも、残念ながらチケットは売り切れ。更にネットを検索し続けているとチケジャム的なところに2枚だけ残っている。2割増しのプレミア価格がついているが背に腹は変えられない。思い切ってチケットを購入した。
ロンドンには予定通り夕方に到着。ホテルのチェックインを済ませ、時差ボケでフラフラのままバスに飛び乗り会場へ向かった。友人も付き合ってくれた。ライブは20時半から。雰囲気の良い会場だった。みんな飲んだくれて騒いでいる。そして、とにかくデカい。178cmの僕がつま先立ちしながらライブを観たくらいだ。当然、Tony Allenはそこにいない。でも、YannisとサポートメンバーたちがTonyの意志を受け継ぎ最高のライブを披露してくれた。感無量だった。海外でのライブ鑑賞は初めてだった。アートって最高である。作家がいなくなっても作品の輝きが色褪せることはない。
話は逸れるが、フットボールにもそういった側面があるように思う。僕はたまに「額縁に飾りたい試合」と評することがあるが、フットボールはルールや規則の中で、お互いのスタイルやエモーションをぶつけ合う。さながらジャムセッションから生まれた作品のようなものである。ライブ性と共に語られることが多いフットボールというスポーツだが、永続性のあるアートでもあるだろう。リヴァプール v バルセロナなんてまさにそうだ。まるで映画である。何度観たことだろう。
余談だが、ライブの翌日、僕はフォレスト戦をアンフィールドで観戦した。いや、勝たんかい。いくら払ろたと思てんねん。偉そうな口を叩いたが、そこに芸術を見出すことは難しかった。やっぱりフットボールはアートなんかじゃないのかもしれない。
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3位 『EURO2024』
この大会の直前にXのビッグアカウントな人とJリーグの試合を観させてもらう機会があった。その時に盤面のどこをどのように観るのか、色々聞きながら試合を眺めることができた。去年の今頃、僕はまだ試合のワンプレーを切り取ってそれを図解し、自分なりに咀嚼しているだけだった。それをいろんな人が目に留めてくれて"戦術的"であると評価され、更にはそれを揶揄されたりもした。怒りは全く無かったがちょっぴり悔しかった。同じ頃、リヴァプール界隈で最も戦術に明るいと思っている方に、らいかーるとさんの本を紹介してもらった。これも凄く助けになった。もちろんその方のポストも常日頃から参考にさせてもらっている。
こうしてフットボールの見方を手に入れた僕は、自分の中でそれをしっかり消化したくなった。ユーロ2024を全試合観ることにした。試合が始まるとそれぞれの国のシステムをまず整理し、お互いどこに勝機を見出しているのか、その狙いにフォーカスしながら観戦をすることにした。全試合観終わった頃にはワンランク昇格〜!した実感があった。まだまだ途中で映像を止めたりしないと見極められない部分はあるが、これからもリヴァプールのフットボールを言語化して、その素晴らしさを理解していきたい。
今では前述した図解による自分なりの解釈は無駄ではなかったと感じている。個人戦術の積み重ねがチーム戦術になる。そして、逆も然りなのだということを最近はひしひしと感じている。チーム戦術があってこそ個人戦術を輝かせられる側面もあるのだと。リヴァプールで次々と個人がそのスキルを磨き上げることに成功しているのは、スロットのチーム戦術の落とし込みに依るところが大きい。つくづくええチームである、今季のリヴァプール。
ちなみにこの大会でペドリの素晴らしさを知り、今季はバルセロナの全試合観戦界隈をやらせてもろている。カップ戦とかは追いきれないけど。
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4位 『Leverkusen』
なんと言っても昨シーズンのトレンドと言えばLeverkusen。ホルダーとレシーバーがいくつも線を結び、あっという間に盤面を進めるその様は新しいフットボールの形にすら見えた。そう、まさにアート。フォレスト戦に負けるようなリヴァプールよりもアート。美しかった。強かった。
シーズン前半戦を見逃していた僕は年明けからサブスクに加入し、見逃し配信を観ながらその素晴らしい轍を追いかけ続けた。最終的には早起きしてヨーロッパリーグの決勝を観たりもしていた。
いろんなチームのフットボールに触れることはとても重要である。贔屓のチームが苦戦した時にああすれば良いのに、というアイデアが素人ながら思いつくようになった。フットボール観戦の幅がとても広がる。
今季、昨季のレバークーゼンに当たるようなチームはどこなんだろう。もしこのチーム面白いよ、というチームがあれば是非教えてほしい。
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5位 『Friko』
ここ数年、2000年代初頭のロックンロールリバイバルのような雰囲気が感じられて嬉しい。当時、The Strokesの『Is This It』を聴いて、どっぷり音楽に浸かるようになった自分からすると超ウェルカム。バンドサウンド万歳。最高。
その中で最も僕を魅了したのはFrikoだった。彼らの魅力は荒々しさと繊細さを兼ね備えた楽曲の数々。めちゃめちゃええやん!とDMを送ると返信をくれたりするチャーミングさも兼ね備えている。また、彼らの楽曲は喜怒哀楽の全てを備えているのが素晴らしい。自分がいつどのような状態で聴いてもスーッと身体に染み込んでくる。
フジロックも彼らを目的に行くことにした。もちろん単独公演にも。今年聴いたアルバム第2位は彼らの作品。これからも初期衝動そのままに突っ走って楽しませてくれ。あと、このフェスで観たQoodowはみんなにもっと知られてほしい。
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6位 『Marc Casadó』
前述の通り、ユーロ2024を全試合観たことで今季はバルセロナ観戦界隈をやらせてもろているが、プレシーズンで最初に目に留まったのがカサドだった。なんかああいうコントローラータイプが昔から好きである。ということで、彼のすんごいなぁと思うところを羅列していく。
①プレスタイミングが抜群
相手の1歩目、ワンタッチ目への観察力が高く、ストロークが大きくなったところに勢いよく入り込む。背後からもセーフティに圧を掛けられる。アンカーとしては重要なスキル。
②非保持の優先度設定が優秀
①に関連するが、エリア管理と人管理の移行タイミングが的確。その他、押し込まれた局面ではドブレバディと連携しながらニアゾーンケアorアークケアを徹底。
③ボール捌きがスムーズ
スムーズに次のプレーに移ることができる場所にワンタッチでボールを置くことができる。それも両足でできる。
④視野が広い
常に奥を選択肢に入れられる。遠い場所には正確なロングボールを届けることもできるし、近場にも間髪入れずにボールをリリースすることができる。
⑤コントロールスペースの作り方が上手い
相手を背にした状態でも上体モーションだけで相手をいなして時間を稼げるし、囲まれても細かいタッチで最小限のマイスペースを確保できる。
あとは一気に局面を打開する縦へのプレゼントパス。くー!となるやつ。また、あのレヴァンドフスキへの超絶スルーパスを見せてほしい。
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7位 『スペース/ドラフト(X)』
今年はスペースにお呼ばれしてお喋りしたり、最近ではリヴァプールの実況スペースを主催するようにもなった。やってみると分かるが言語化だけではないスキルが必要とされる。言語化のスピードはもちろん、それを適切なタイミングでサラッと差し出すスキルも必要。一般人には非常に難しい。実況解説を生業とされている方はほんとに凄い。でも、素人は結局みんなでワイワイやるのが一番だ。そういった想いもあり、実況"解説"スペースとは銘打っていない。もっと若い人たちのエモーショナルガンガンな実況スペースも聞いてみたいな。
そして、オフシーズンのドラフト。これも超超超楽しかった。まず若者だけでワイワイやってりゃ良いものを僕のようなオッサンにも門戸を開いてくれたことに大感動。みんな超優しい。本当にありがとう。これまではただ試合そのものを目的に試合を見ていたが、なんなら今はドラフトに参加したいから試合を観ているところもある。ほんとに。それくらい楽しい。追伸。初参加の際、15巡目でGKを選んだことを改めて土下座させて頂きたい。来春も呼んでもらえるように試合を観続けるぜ。
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8位 『サン・セバスチャンの飯』
とにかく死ぬほど美味い。以上。
というわけにもいかないので少しだけ。1月にソシエダの試合を観に行ったが、結果、試合よりも大感動したのが飯。どこで食べても爆裂に美味い。ただ、今回は絶対押さえておくべきお店を2つだけ紹介する。ひとつ目は『GANBARA』。ミシュランの星も取っている有名店だが、どれもクソほど美味しい。僕は飲めないけどワインやサングリアを一緒に楽しめたらどんなに素晴らしいことだろうと夢想する。もうひとつは『La Viña』。モノホンのバスクチーズケーキが頂ける。とにかく全員に食べてほしい。とろっっっとろなのである。ああ空輸したい。今までのバスク風チーズケーキは何だったのだろう。マジで風。ただの風。
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9位 『LUUP』
めちゃくちゃ世間の風当たりの強いLUUPであるが、今年は死ぬほどお世話になっている。通勤もLUUP。いつもなら30分かかるところが20分。電車で知らないオジサンに押し潰されそうになることもなくなり超快適。また、休日にいつもなら電車を使うエリアをLUUPで移動すると楽しい。街と住宅街のグラデーションが感じられてとてもワクワクする。たまに奥さんとやるがオススメである。これからの時期、耳が取れそうになるので耳覆える系キャップを探そう。もし読んでくれたひとでLUUPユーザーがいたら安全運転で一緒にイメージを変えていこう。
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10位 『Yeji Sei Lee』
2月。東京藝大の卒業・修了作品展なるものがあることを何かで知って最終日に訪れた。パワーとアイデア溢れる数々の作品に触れて大満足だったのだが、Yeji Sei Leeさんの作品は飛び抜けていた。度肝を抜かれた。展示されていた部屋を後にしたが、もう一度戻って見たくらい。いつか彼女の絵を家に迎え入れられたら良いな。
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ということで俺的2024年ランキングは以上です。ランキングを見て思ったが、Xでの皆さんとの関わりから新しいものへの探求が始まっていることが超多い。本来であればこんなオッサン、文化から突き放されたって良いのだ。みんなに生かされた2024年。本当に感謝しかない。ありがとうございます!毎年言ってるが、来年こそはこのランキングに芸人や作家をランクインさせたい。