![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/154110465/rectangle_large_type_2_b498c6203d1e9d127e1fabebc018cc01.jpeg?width=1200)
迷宮入りしたのはあの時のとりあえず
突貫工事は荒々しい爪痕を残さなかった。むしろ名外科医の縫合あとのようにも思える出来だった。しかし、私の助かる君5号が黒煙を上げて完全停止しているのを発見した時、その余韻はもろくも掻き消されて、ナイルの氾濫を目の当たりにした感覚は抗しがたい力を湛えていた。
突貫前も後も、私は口径の大きい配管を採用していることに気が大きくなっていた。設計にも現場にも”とりあえず”の空気が蔓延した。必要十分でなければ指示書とは言えない。配管周りも例外ではない。
フラッシングの頻度は既知のワークロードでない限り、ボリュームから正確に見積もる必要がある。確かに今回の青写真は、正確にワークロード1.23倍の前提であった。そろばんをはじくと全貌が見えてくる。あのときの”とりあえず”が思い出される。
設計も現場も横断的に配管周りの指示書を改定することになった。余韻のピークを迎えるはずだった昼過ぎから日帰りサウナで整うほどの時間が経ってもう日が暮れる頃合いだ。新しい指示書で再始動の指揮を執った。
本日明け方午前5:00現在、成否の判断の峠は過ぎて、私の助かる君5号は軽快なリズムを刻んでいる。