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リヤカーでパンを売り歩く

■ドリアンパン学校における「フィールドワーク」とは、一次情報を得るために動くこと。一次情報とは、「自分が」経験したこと。それこそが、その人やその店の「説得力」となる。誰かに教わったことや、本に載っていたことなどではなく、自分が経験したことを発信するべし。その内容はほかの人が簡単にはできないことであるほど説得力は増す。

■パンの味よりも、その人自身の説得力のほうがよっぽど重要である。

■フィールドワークの中でも特に、旅することは一次情報のボーナスステージである。

■フィールドワークをやるほど、説得力は増し、ほかのパン屋さんとは全く違うステージにワープできる。=戦いの輪から抜けることが出来る。


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私が今までの人生でやってきたフィールドワークを思い返してみるけれど、
うーん、乏しいなぁと思う。特に「旅すること」は私の人生に足りていない。若いころ、パン屋で働いてばっかりいないでもっと旅するべきだったとすごく思う!

お店を自分でやってみたこともひとつのフィールドワークになるのかもしれないけれど。というかやっぱりそれしかないので、書いてみる。ほかのパン屋さんはあまりやっていなかったこと。


はじめの4年くらい、自転車で行く大阪市内での移動販売をやっていた。
中国製のとってもうるさい電動自転車でリアカーを引っ張り、真っ白なパラソルを立てて、ビジネス街などでパンを売る。
半分くらいはゲリラだったので、警察におこられたり、近所のお店からいちゃもんをつけられたり、自転車はしょっちゅう壊れるし、天気に左右されるし、トラブルしかなかった。

でも、そのうちにお客さんがお店を目当てに待っててくれたり、ここで毎週売っていいよと地主さんに声をかけてもらえたり、近くのレストランから卸の注文を頂いたり、うれしい出会いもいっぱいあった。

お店は市場の中にあったので、広い市場の中でもパンを売り歩いた。
台車に引き出し型衣装ケースを取り付けた、特製の手押し車で市場内を歩き回る。お客さんは「おいネーちゃん!」と呼び止め引き出しを物色する。

まずは朝6時台、一番仕事が終わるのが早い鮮魚ゾーン。ここは夜中0時頃から働いている人が多い。ピカピカ光るでっかいマグロが転がる中を歩き回る。
態度もお口も荒っぽいのが魚屋さん。遅いとか種類少ないとか言われるし、はじめはちょっと怖いけれど、慣れるとみんな根はやさしくていい人。

活気あふれる魚売り場を抜け、ホッとしたら、7時台、果物ゾーン。マンゴーや桃やメロンの甘い甘い香りが充満する中を歩き回る。たまに「これ食べてみぃ」と試食にありつけるしあわせ。
そして最後は野菜ゾーン。ここは、3時~4時出勤のひとが多い。たくさん残っていると、気のいい社長さんが従業員さんたちにまとめて買ってくれたりするの、ありがたかったなぁ。

店頭に来てくれる市場で働くひとたちも含め、常連さんがほとんどで、毎日、買ってすぐに目の前で食べてくれる。「うまい!」とか「イマイチ!」とか「飽きた!」とか言いながらほぼ毎日。
だから、作るときはお客さんの顔が浮かぶし、できるだけ体によいものを、と思う。

前回つらかった部分を書いたけれど、こうして思い出していると、個性豊かなお客さんたちを思い出して思わず頬が緩む。スペシャルな経験だったなと思う。
パン職人、「つくる」「凝る」「こだわる」といった方向に行きがちだけれど、実際にお客さんの口からパンが入っていって、それが体の一部になるのだというのを目の前で見てきたことは大きいなと思う。


次のゴールを達成するにあたって、私がするべきフィールドワークはなんだろう。
やっぱりヨーロッパのパン屋さんは見ておきたい。
お店とお客さんの関係、生活におけるパンの存在を見たい。
大学生のときに旅行でフランスには行ったけど、美味しいパン屋さんお菓子屋さんめぐりが目的だったから、もったいないなかったな。

あとは、「働き方」と「手仕事」に興味があるので、そこに焦点を当ててインドとかモロッコに行ってみたい。できれば一人旅がいいな。
子どもが大きくなったら…あと5年したら、いけるだろうか。

あとは、最近は畑をやってみたり、小麦農家さんにお話を聞かせてもらったりしているけど、北海道の小麦畑やパン屋さんを訪れてみたい。
それから全国の、薪窯のパン屋さんに限らず、自分の理想の働き方をされてる人の元を訪れて話を聞いてみたい。

考えていたら、わくわく!
大人になっても遊ぶように学んでいたいし、冒険していたいなと思う。



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