選手と運営を繋ぐ役割を。セレッソ大阪ファンマーケ 深澤拓哉が語る「現場を知っているからこそできること」
<トップ写真:©2023 MAISHIMA PROJECT>
舞洲に拠点を置くプロスポーツ3チーム、大阪エヴェッサ、オリックス・バファローズ、セレッソ大阪で働くクラブスタッフへのインタビュー特集企画「舞洲を支える人々」。クラブスタッフとなった経緯やチームへの思い、舞洲にまつわるお話などを伺います。
今回登場するのは、株式会社セレッソ大阪 事業部 ファンマーケティンググループの深澤拓哉(ふかさわ・たくや)さん。2017年にセレッソ大阪に入社し、7年間のマネージャー業を経て2023年4月から、クラブスタッフとしてファンクラブやシーズンシートの業務を担当しています。現場と運営側、それぞれのお仕事内容をお話しいただきつつ、現職になって変化したことやこれまでの経験が活きたことをお伺いしました。
「スタジアムを満席にしたい」新卒でサッカー界に飛び込んだ理由
―現在のお仕事を具体的に教えてください。
今年の4月にファンマーケティンググループに異動したばかりなので、今はファンクラブに関するいろいろなことを学んでいます。シーズンシートの受付内容や、来年も継続して購入していただけるような施策、会員の方々向けのイベントなどを考えています。
シーズンシートとは、一定の金額をお支払いいただければ、シーズンを通じて観戦いただける年間チケットのことを言います。1試合あたりがお安くなるだけでなく、毎試合ごとのチケットを買う手間が省けたり、シーズンシート対象外の試合(ルヴァン杯のプレーオフ等)も先行販売があるなど、さまざまな特典があるんです。
―そもそも、セレッソに入社されたきっかけは何ですか?
大学時代に、所属していたサッカー部の監督から話をいただいたのが始まりです。監督のもとに、セレッソのマネージャーを募集しているので誰かいないかという話がきたみたいで。Bチームでキャプテンをやっていたこともあり、一番最初に声をかけていただきました。
実は裏方の仕事はもともとやりたいと思っていました。「チケットを売ってスタジアムを満席にしたい」という思いがあり、経営学部に進んでマーケティングの学科を専攻していたんです。
その一方で、この業界に入ることは狭き門であり、新卒はさらに難しいと考えていました。なので、希望の職種ではなかったもののサッカー業界に携われるきっかけになるならと思い、「ぜひ行きたいです」と即答しました。
選手から感情を伝えてくれることも多々。信頼関係を築けたマネージャー時代
―マネージャーになってみて、いかがでしたか?
考えていた通りの仕事もあれば、予想外にやらなければいけないこともたくさんありました。例えば、飲料水やボールの手配、管理、いろいろな場所の掃除など。あとは、新しいスポンサーさんがつくたびにウエアが変わるので、届いたものをひたすら開けて畳むという作業もします。
年が進むにつれて、個人的な依頼も多くなりました。入った当初は、年上の選手しかいなかったので、基本的には可愛がってもらったという印象が強いです。でも年々自分より若い選手が増えてきて、困りごとやメンテナンスなどの相談をもらうようになったんですね。頼られるのは嬉しい反面、勉強しなければ対応できないことも出てきました。
選手との関係性は、年齢はあまり気にせず対等というか、みんなと仲良くしているイメージですね。もちろん、選手を支えるという立場は根底にあります。
―選手とのコミュニケーションの取り方で意識していたことは何ですか?
選手は僕に言えない話や、内々で終えたいことも当然あると思うので、そこは踏み込まないようにしています。また、どの選手にもフラットに接するように心がけています。
選手とのコミュニケーションで印象深いのは、入って間もない僕に、当時いた茂庭照幸選手と木本恭生選手がよく声をかけてくれていたことです。正直、選手の名前すらあまりわからなかったので、とてもありがたかったですね。お二人は、僕に限らず新入りの選手にも同じようなことをしていたそうなので、すごいなと思いました。
―一番嬉しかったこと、難しかったことを教えてください。
スパイクやユニフォームなどの用具を整備する、ホペイロという仕事も担っていたので、選手から「これのおかげでうまくいった」と言ってもらえるのが嬉しかったですね。選手たちは感情を伝えてくれることが多いのでありがたいです。
一方で、スパイクのカスタムといった選手の要望と、安全や強度を考えている作り手の意向の差をどう埋めるかは難しかったです。履きやすさ、蹴りやすさを重視したい選手の気持ちもわかるけれど、怪我はしてほしくないので、落としどころを考えるのがなかなか大変でしたね。
1年目はルヴァン杯優勝というタイトルを獲らせてもらいましたが、忙しくて実はあまり覚えていません(笑)。マネージャーを7年間やらせていただいて、振り返ると本当に早かったと思います。
初めて知ることばかり!クラブスタッフという仕事
―マネージャーからクラブスタッフになったきっかけは何でしたか?
もともと運営をやってみたい気持ちがあったので、上司に希望を伝えました。
ただ、パソコンをほとんど触ったことがなく、ファンクラブやイベントのことも全然知識がなかったので、今は新卒と同じくらい学ぶ姿勢でいます。満席となる試合も少しずつ増えてきたので、引き続きみなさんにスタジアムへ来場していただけるよう頑張っていきたいです。
―今はどんな企画を考えているのでしょうか。
会員の方に喜んでいただけるイベントは、もっと増やしていきたいです。選手たちも参加したいと言ってくれていますし、スケジュール管理はマネージャー時代の仕事でもありました。うまく調整して選手をより多くのイベントに呼びたいです。
年に1回「SAKURA SOCIOパーティー」という、選手との体験型イベントをやっているのですが、それをクリスマスにも行うなど、季節ごとに開催できたらと思っています。
コロナ禍を経て舞洲での練習見学が再開され、練習後のサイン対応なども解禁になりました。なのでサイン会だけではなく、会員ならではの特典や企画を選手と相談して考えていきたいですね。
ー選手もそういった企画への参加には前向きなのですね。
今年は選手からキッズ会員向けにサイン会をやりたいという声があり、実は夏に1回実施しているんです。会員にはファミリー層も多いので、みなさんに喜んでいただけたようで良かったです。
そうしたイベントの企画を考えるのと並行して、スタジアムで初観戦する方を増やすことも重視しています。この業界には「3回目の壁」という言葉があり、年に3回観戦していただけたら次のシーズンも観に来てくださる方が多い傾向があるんです。繰り返しスタジアムに足を運んでいただけるような施策を目指していますね。
―マネージャーという現場サイドの経験が、今に活きていることはありますか?
選手と距離が近い立場にいた僕が異動したことで、発言を遠慮していた選手たちが運営側に意見を言いやすくなったのではと思います。子ども向けサイン会も、舞洲の練習場での選手との会話から実現したことです。
ただ、選手は入れ替わることが多いので、今後は僕と接点が少ない選手も出てきます。なるべく選手の声を拾い上げるようにしていきたいですね。
セレッソ大阪が誇る、大きな2つの強み
―仕事のお話をお伺いできたところで、続いてはセレッソの魅力を教えてください。
入社前は、柿谷曜一朗選手や山口蛍選手など男前な選手が多いというイメージを持っていたくらいで、正直なところあまり知らなかったんですよ。
ですが入社直後からずっと思うのは、家族感のような一体感があるということです。選手だけでなく、サポーターの方も一丸となって戦えていると思っています。セレッソはその面でも日本一を目指せるのではないかと思っています。
他に、オンとオフでメリハリをしっかりつけている選手が多いこともセレッソの持つ良さだと思いますし、個人的に好きなところです。とくに瀬古歩夢選手は、よくふざけているのですが、練習や試合になるとパッと切り替えができるんです。そういうチームの雰囲気がいいと思いますね。
―入社してから一番印象的だった試合は?
直近で言うと、2022年のルヴァン杯 フロンターレ川崎戦での山田寛人選手のゴールが記憶に残っています。あと、入社1年目となる2017年に同じくルヴァン杯の準決勝 ガンバ大阪戦で決めた木本選手のゴールが今でも忘れられないですね。1-1の同点で迎えたアディショナルタイムでの、強烈な劇的ヘディングでした。
勝利が決まった時は、何と言ったらいいかわからないくらい痺れるんですよ。呼吸はできないし、立っていられないしで、とにかく隣にいるトレーナーと一緒に大喜びしました。またあの感情を味わいたいので、次はタイトルを獲るしかないと思っています。
―最後に、メッセージをお願いします!
日の目を浴びることは多くありませんが、チームには選手のことを考えながらサポートしている人間がたくさんいます。選手だけでなく、そういう僕たちのことも好きになって、ちょっとでもいいので応援していただけたらと思いますね。