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最後までトライし続けるチームでありたい。大阪マーヴェラス・酒井大祐が挑む、SVリーグ初優勝への道
大阪市に拠点を置くプロスポーツ8チームで働くクラブスタッフへのインタビュー特集企画「大阪を支える人々」。クラブに関わることとなった経緯やチームへの思い、大阪にまつわるお話などを伺います。
今回登場するのは、大阪マーヴェラス(以下、マーヴェラス)監督の酒井大祐(さかい・だいすけ)さん。2004年から2014年までJTサンダーズ(現・広島サンダーズ)でプレーし、日本代表にも選出されるなど男子バレー界で活躍。現役引退後はコーチとして指導経験を積み、昨年9年ぶりに古巣JTの女子チームであるマーヴェラスの監督に就任しました。現在は大同生命SVリーグの舞台で、チームを頂点へ導くべく指揮を執っています。
そんな酒井さんに、女子バレーの魅力や男子バレーとの相違点、さらに現在監督として感じている課題感、今シーズンこれまでで心に残っている試合など、さまざまなお話を伺いました。
「コート外でもしっかりやる」マーヴェラスの結束力を育む文化
ーまず始めに、指導者になられた経緯について教えてください。
もともと現役を終えたら指導者になりたいと思っていたんです。大学時代から教員を目指していて、部活動などでバレーボールを教えるのが自分の夢でした。
ありがたいことに現役中はトップレベルのチームや、日本代表でもプレーさせていただくことができたなかで、自然と「この経験を次の世代に還元したい」という気持ちが強くなっていったんです。
そんなときに当時所属していたチームからコーチの打診をいただきました。本音を言えばもう少しだけ現役を続けたい気持ちもありましたが、これもご縁だなと思い、指導者になることを決めました。
ー2004年から2014年までJTサンダーズでプレーし、9年ぶりに古巣へ戻る形となりました。今回、男子チームではなく女子チームの監督就任ということで、決断の背景についてお伺いできますか?
長らく男子バレーの世界に身を置いてきましたが、新たな挑戦を求める気持ちから、今回は女子チームで指導する道を選びました。とりわけ男女どちらかにこだわりがあったわけではありません。ただ、これまで女子バレーをじっくり見る機会がなかったので、「自分に監督が務まるのかな?」という不安は少なからずありました。
ー実際に女子チームを指導されてみて、男子と女子の違いをどういった部分に感じますか。
パワーやスピード、ラリーの長さに大きな違いを感じます。男子はサーブやスパイクで一気に勝負を決めにいくのに対し、女子は何度もラリーを重ねながらじわじわと相手を崩していく。その分、女子の試合はプレータイムが長くなる傾向がありますね。
また、コミュニケーション面では「男子は言葉数が少ない」と思われがちですが、最近の若い男子選手は逆に「もっと話をしてほしい」と思っていることもあります。女子は女子で自分で考え込む選手がいたりと、一概に「男子だから」「女子だから」と括れない面白さがあります。
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ー大阪マーヴェラスならではのチーム文化や特徴について教えてください。
前任の吉原(知子)監督が築いた「コート外の部分もしっかりやる」という文化が強く根付いていますね。たとえば、月に一度行われる体育館の大掃除や、選手同士で話し合って物事を解決する姿勢など、当たり前のことを当たり前にやる風土があります。そうした日々の習慣が、試合中の結束力や思考にも大きく影響すると思うので、これからも大切に受け継いでいきたいです。
また競技面でも「できるまでやりきる」「毎日全力で取り組む」という姿勢が当たり前にあります。そういった真面目さや粘り強さは、このチームの大きな強みだと思います。
男子バレーのエッセンスを取り入れチームを強化
ー監督1年目のシーズン、チームとしてどんなバレーボールを目指していきたいですか?
少ないラリーで効率よく得点できるバレーを目指したいですね。マーヴェラスには技術力の高い選手が多いですし、使える攻撃パターンも幅広い。場面ごとに「どの攻撃を選ぶか」を的確に判断できれば、ラリーを減らしながらも着実に勝機を広げていけると思います。
ーラリーを短くするために、具体的にどのような戦術を取り入れているのでしょうか?
たとえば悪い状況のときは、あえて難しいボールを返してヒットされる可能性を減らすように意識しています。他にも、「どこに落とせば相手が嫌がるか」を突き詰めることで、一発で決まるケースも増えてくるかなと。
実際にマーヴェラスの選手たちは、攻撃の引き出しを増やせるだけの器用さがありますし、女子バレーならではの巧みさもある。そこを最大限に活かし、チームとして大きな武器にしていきたいですね。
ー目指すバレーボール像を実現する上で、男子バレー特有のエッセンスを取り入れている部分などはありますか?
男子のように一発で決める場面を増やすためにも、アタックのバリエーションは豊富に持っておきたいなと。たとえばブロックアウトを狙うだけじゃなく、プッシュを使ったり、長く強く打ったり。あとはスパイクの強度を高めればサーブの威力も上がるので、シーズン前は攻撃面の強化に力を入れて、打ち込みの本数を増やしました。
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ーSVリーグ開幕から2ヶ月弱が経過しました(取材日 2024/12/19)。現時点での課題などがあればお聞かせください。
正直なところ、今いちばんの課題は自分自身だと思っています。メンバー交代のタイミングや練習メニューの組み方、試合中の声かけなど、振り返ると「もっといい方法があったのでは?」と感じる場面が多いんです。
もちろん、選手にとって最善の選択を常に考えていますが、試合時間や出場メンバーに限りがある以上、すべての選手が納得できる判断ができるわけでもありません。何が正解かは実際にやってみないとわからない部分も大きいので、今はとにかく試行錯誤の連続です。
ー試合中のメンバー交代についてお伺いしたいのですが、最も判断が難しいのはどのような場面でしょうか?
やはり一番難しいのは、チームが劣勢に立たされている場面です。試合の流れが悪いときに、誰をどのタイミングで交代させれば流れを変えられるのか、それを判断するのは本当に難しいですね。
自分が選手だった頃は、「今ならセッターを代えるべき」「あのヒッターは調子が悪そうだから交代させるべき」という感覚があったのですが、監督となったからといって当時のフィーリングをそのまま活かすわけにもいきません。まだまだ経験値や嗅覚が足りないと痛感する毎日です。
ー今シーズンで一番印象に残ってる試合があれば教えてください。
ヴィクトリーナ姫路との試合で2-3で敗れた一戦ですね。大幅にメンバーを入れ替えて2セット先取できたものの、反則を取られてから流れが崩れてしまいました。正直、自分の采配次第でもう少し勝利に近づけたのではないかと思っているので、悔しさが強く残っています。
SVリーグ初優勝を目指し、最後までトライし続ける
ーSVリーグ元年として始まった今シーズン、女子バレーを新しいステージに引き上げるためには何が必要だと感じていらっしゃいますか?
男子バレーが大きな盛り上がりを見せるなか、女子バレーも新たなファン層の獲得にチャレンジしている段階です。実際、各チームやリーグ全体で「もっと開かれた方向へ進もう」という動きがあり、その取り組みが広がっているのを肌で感じます。その上で、女子バレー全体としてどんなビジョンを掲げ、どこを目指すのかが最大の課題だと感じています。
同時に、各チームが「今のままで本当にいいのか?」という問いを常に持ち続け、より魅力的なアプローチを模索することも欠かせません。ファンが増えてこそビジネスとして成立しますし、人気を高める手段として、アイドル的な選手を前面に押し出したり、「うちのチームはこんな魅力がある」という付加価値を打ち出したりと、いろいろ策はあるはずです。
現状では観客が一部の男性に偏っているため、シニア層や女性、家族連れといった幅広い層に観戦を楽しんでもらえる工夫が不可欠だと感じています。「ここに来れば楽しい」「面白い」と思っていただければ、自然とファンは増えるはず。ファン層の拡大が、今後の女子バレー界を大きく左右するカギだと思っています。
ーちなみに酒井監督から見た、現在のマーヴェラスの付加価値は何だとお考えですか?
ひとつは価格面ですね。ファンクラブの会費も手頃ですし、最前列のチケットも他のチームと比べるとかなり安いかなと。さらに、試合後のサイン会に気軽に参加できるのも、大きな付加価値じゃないでしょうか。
一方で、バレーボールそのものを楽しんでもらいたいという気持ちもあります。選手が最後まで諦めずに戦う姿勢や、得点が決まった瞬間の喜ぶ姿は、生で見ると胸に迫るものがあるので、ぜひ会場で味わっていただきたいですね。勝敗にかかわらず、常に高いクオリティの試合を提供できれば、それ自体が大きな付加価値になると思っています。
ー最後に、今シーズンの目標やファンへのメッセージをお願いします。
やはり狙うはSVリーグ初優勝です。多彩な選手が揃っているので、いろいろな組み合わせを試しつつ、最終的にはベストな布陣で頂点を狙いたいと思います。
それと同時に、選手一人ひとりの成長を後押しすることも大きな目標です。もちろんトップリーグである以上、むやみにミスを許されるわけではありませんが、それでも失敗から得られる学びを大切にしたいと考えています。
マーヴェラスは、最後までトライし続けるチームでありたいですし、そうして走り抜いた先には、みんなで笑い合える瞬間があると信じています。ファンの皆さんには、そんな挑戦を続ける姿を温かく見守っていただけると嬉しいです。今シーズンも熱い応援をよろしくお願いします。
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