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ヴィパッサナー瞑想の記録

2024年7月6日(土)〜7月17日(水)
ヴィパッサナー瞑想10日間コースを終えました。
初日と最終日の移動日を含むと計12日間の日程です。

これまで2017年、2019年、2021年 いずれも年末年始を挟むスケジュール、場所は京都のダンマバーヌに通っていましたが、2023年はスケジュールが合わず、2024年夏の千葉に持ち越しました。
自分を整えるため、定期的な心の大掃除として座りにいっています。


今年滞在したのは千葉の瞑想センター、正式名称は「ダンマーディッチャ」

食堂キッチンとトイレ・シャワー棟
食堂の内部
瞑想個室 8番

どんな10日間だったか

1日目 呼吸を感じる
頭の中のおしゃべりが忙しい。自然な呼吸を意識しようとするも、意識すると不自然になるサイクルを繰り返す。

2日目 呼吸の出入り付近上唇と鼻の下の間(人中と呼ばれる箇所)に意識を集中
あらゆる思念が視覚的に頭の中を駆け巡る。ちょっとした幻視体験も

3日目 人中の感覚に集中
エゴ爆発。人から賞賛されたい、こんな自分は恥ずかしい、こんなこと意味がない、もう2度と来ない、目の前で落ち着きなくいる人にイライラ、もう消えて欲しい、などなど溢れてきますが、(うん、あるねー、さ、呼吸に戻ろ)、と過ごします。

4日目 アーナパーナ瞑想からヴィパッサナー瞑想に入る。苦行の始まり。
エロス爆発。びっくりするほどセクシャルファンタジーが立ち上がる。これも(ハッ!いま妄想にふけっていた)と気づき、呼吸に戻る。こういったわかりやすい執着や感情が早期に排出される感じです。

5日目 アディッターナ(決意の時間)
1時間姿勢を変えず、目を開けず、指一本動かさない決意の時間。1日に3回設定されます。これがヴィパッサナー瞑想10日間コースの最大の特徴です。
 過去のコースでは股関節が痛んで、どんなに決意しても1時間のうち1、2度は体の姿勢を変えていました。今回なんと5日目にして完全なる不動の1時間を完遂できました。1ヶ月前から柔軟と股関節ストレッチに励んだ成果です。
またこの日の夕方、私をイラつかせていた人(グループ瞑想の時間に不在なことが多く、怠けている人だと決めつけていました)が瞑想ホールに現れ私の前に座った時、一筋の慈悲の感情が湧いてきました。ポッと「来れたんだ、ああ、良かった」という気持ちが出てきました。
予想外の自分の心の動きに驚きました。

6日目 体の部分部分を丁寧にみていく
人の死について語られた前日の講話が残っていて。私が20歳の時に他界した父のこと、いずれ父の元へ行くであろう母親のこと、また自分の残りの時間を思い何度も涙が出てきました。また他にも慟哭や怒りがドンっと突き上げるように噴出したときに体に衝撃が走る体験も。

決意の1時間は一度できたからといって次も容易にできるわけもなく、3回のうち成功するのは1回程度。
疲れてくるとつい身じろぎしたり、背中や脚の痛みに耐えきれなくなります。
観察していくうちふっと消える痛みや移動する痛み、痛みから逃げずにぐーと集中すると脳内麻薬のように一瞬気持ちよくなる感覚を覚えたりしながら1時間を静かに耐えます。

7日目 体の複数箇所を同時にみていく。
意識を分割しながら感覚をみていくという指導があるのですが、これが難しい。1点に集中させるのが精一杯。集中できない状態で体の表面に意識を滑らせていくと、惰性で表面を行ったり来たりすることになります。その単調な作業に飽きてきました。

8日目 どんな感覚があるか留まって観察する
アシスタント指導者に質問し、やる気を取り戻します。どんな時も思念は止まらず、今後数ヶ月のうちにやりたいことが次々に頭に浮かぶ始末。仕事のこと、生活のこと、家族のこと、食べたいもの、etc

9日目 体全体を包む微細な感覚というけれど
腕や顔など普段表に出ている箇所は自由に意識を動かすことができるし、多様な感覚を観察できる。しかし足と足が強く重なっている部分やふともも、また腕の付け根の後ろ側、など普段衣服に覆われてあまり感覚を感じない箇所はぼんやりとしか知覚できない。コースが終わった後のことを考えて忙しく動く思考に耽っていると、感覚から離れてしまう。そのことに気づくと呼吸に戻って集中を取り戻しては、再び観察する。延々と繰り返し。
実際1時間のうち本当に集中できているのは10分間くらいだろうか。
コースの残り時間は少ない。時間は貴重だ。と自分に檄を入れて座る。

10日目 聖なる沈黙が解かれる日
日常に戻るためのクッションの役割の日です。沈黙の掟が解かれあちらこちらでおしゃべりが始まります。今まで目を合わさないよう顔を伏せがちだったためお互いにどんな顔をしているのか、表情もここでようやく様子がわかります。まるで行者のように超然としていた人が意外と明るく、朗らかだったり、枯れた雰囲気だった人が若者言葉で話していたり、本当に人は話さないとわからないものです。

「終始穏やかでしたね」「ヴィパッサナーが溢れていました」「座り姿が美しかった」など2人くらいに言われて素直に喜ぶ。
終わった時にあなたはこうでしたね、とお互いに言い合うのは千葉の文化なのだろうか。千葉と京都はそれぞれ独立して運営されており、土地の感じや雰囲気も全然違うのが両方を体験して感じたところです。

11日目 愛と慈しみ
自分を含み生きとし生けるもの全てに向けた愛と慈しみについての講話が琴線に触れる。宿、食事、指導、奉仕すべてを無償で分かち合ってもらったことを思い、大きな愛を感じて自然と涙が流れる。


瞑想のメカニズム

心の大掃除とはどういうこと?

いまのところ自分が理解したメカニズムはこうです。
まず10日間のコース中は5つの戒律を固く守らなければなりません。

1. 生き物を殺さない。
2. 盗みを働かない。
3. 一切の性行為を行わない。
4. 嘘をつかない。
5. 酒・麻薬の類を摂らない。

https://jp.dhamma.org/ja/code/

これに従い、デジタルを断ち、人とコミュニケーションを取らない状況に置かれると、新たな出来事や刺激がないため、自分の中にあるものがどんどん出てきます。普段覚えていないような長期記憶の中にあった昔の出来事、良い思い出も悪い思い出も。

特に嫌なことについて、たとえば昔、人から何か言われたこと、人からされた嫌な体験や辛いことはその時一度のことでも、繰り返し思い出してはつらい気持ちになったり、絶対に忘れるものかと復讐心を握り締めたり、今ならこう反論・対抗するだろうとリプレイ・リハーサルしたりする。反応と感情の強化ループが回ります。苦悩は自分の中で再生産されます。普段の生活においてもコース中であっても。

さらに上記で書いたようなエゴ、情欲、虚栄心といった心の癖が表に浮かび上がってきます。

ヴィパッサナー瞑想のトレーニングの中ではこれらを称して「心の澱」「汚濁」「苦悩」などと表現しています。

そこで「気づき」と「平静さ」を保つ瞑想訓練を通じて、新たな苦悩を生まないようにする。すると自ずと心の澱は消えていく。とされています。


”自ずと消えていく”部分は正直まだ実感が湧かないのですが、新たな苦悩を生まないようにする部分は仕組みとしても体感としても理解できました。

つまり、こういうことです。

【刺激】→【感覚器官】→【反応】→【快/不快】

人は外から刺激を受けると、皮膚や視覚聴覚といった感覚器官に知覚し、それらに反応して、これは好き!とかきらい!に分けています。これが幾重にも重なった結果、苦悩や執着となります。

そこで感覚器官と反応の間に「観察」を入れることで、無意識に反応するパターンを断ち切るのです。皮膚の上での感覚、体のあちこちで起きる痛みを使って、「観察する力」を鍛えるということ。

瞑想は癒しやリラックス、まして宗教ではなく、ハードコアなトレーニングだと実感します。

継続するということ

ヴィパッサナー10日間コースは検索すると様々な体験記が出てきます。行って帰ってくると人が変わるとか、人生で一度はいくべき瞑想法といった語りが多いように思います。

わたし個人の考えで言えば、10日間で劇的に何かが変わることはない(!)

確かにコース中に普段と違う意識状態になる、思いもよらない感情が溢れる、自己理解に至るなどスペシャルな体験は一定程度あるものの、10日間だけであれば、エクストリーム旅行体験に留まります。コースがあけてスマホを立ち上げれば30分で元通りです。

気づきと平静を得て、苦悩を滅していく道は果てしないです。まるでゴツゴツとした岩を薄い布で撫でていき、いつか表面つるつるの玉にしていこう、くらいの気の遠くなる道だと感じます。自宅に戻ってからも朝晩1時間の瞑想を推奨されていますが、毎日継続することが大いなる力になるのは筋トレや語学習得と同じですね。

健康管理について

朝から晩まで座って動かないのでいつもと同じ量を食べていては太ってしまいます。基礎代謝分が摂取できれば良いと思い、1日2食の食事ではご飯はしゃもじに3分の1、おかずも大さじ2杯程度に留めました。帰ってきたら体重が2キロ減。また朝・昼・晩 ストレッチは欠かさず。
股関節、腸腰筋、ハムストリングなどストレッチしつつ、座禅で股関節を開いていた結果、前屈したときの体の柔軟性が増しました。

1日のスケジュール

https://jp.dhamma.org/ja/code/



持ち物

  • 上3枚 肩が隠れるゆったりとしたTシャツなど

  • 下3枚 緩めのズボンとジャージの下

  • 下着3セット

  • フェイスタオルと手拭い1枚づつ

  • ビニール袋 :部屋でのゴミのまとめ用

  • 水筒

  • マスク

  • プラスティック容器とクリアファイル:虫確保用

  • サンダル:外履き用

  • スリッパ:食堂用

  • 生理用品

  • シャンプー、リンスをミニボトルに詰め替えたもの

  • 洗濯用粉洗剤を小さなジップロックに大さじ2杯程度

  • 小さい懐中電灯:登山用

持たずによかったと思ったもの

・バスタオル(洗うのが大変だし干し場も限られている)
・身体用石鹸(洗顔ソープで兼用しました)
・キャッシュカードやクレカなど(財布の中は寄付用の現金と保険証のみ)
・パジャマ(昼と夜は共通の服で着回しました)

持っていけばよかったと思うもの

・身体用ウェットシート(シャワーの時間が限られるのでさっぱりしたい時にあればよかったかと。手拭いを濡らして拭いていました)
・虫が寄ってこないオーガニックのアロマ的なもの
総じて夏の備えが足りなかったです。


帰ってきたあとの変化

・自分の呼吸
内外の刺激に伴い、何かが来ることを予想する期待や不安など、思考として輪郭がまとまる前に、呼吸が変化することを先に感じます。

・身体表面に感じるもの
呼吸同様ですが、何かが外で起きてたり(人の声でも、車の往来でも)、考えが起こるとき、認識するより少し前に、体の表面にピリッとする感覚を覚えるようになりました。
呼吸も体感覚も順番はなんとなくそんな気がする、という程度なので神経科学的にどうかはわかりません。

・話すのがゆっくりになった
実際のスピードがというより、自分の中で「話している」と気づきながら話すのでゆっくりと感じるのかも

・前ほどビールを美味しいと感じなくなった
大手メーカー系のビール、プレミアムであっても前ほど美味しいと思わなくなりました。地ビール系は多様な味わいがあるので別な気がしますが、総じて今後は量が減るかも。


行ってみたい方へ

今回わたしが座ったのは千葉のセンターですが、両方体験した結果私のおすすめは京都。
年間を通してスケジュールが組まれていますので、以下からチェックしてみてください。
※京都も千葉も、最後のバスは現金のみなので小銭を用意するのをお忘れなく。

https://www.dhamma.org/ja/schedules/schbhanu


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