見出し画像

使いやすいと評した人が4倍に!アンケートをもとにしたクラウド給与のUI改善

こんにちは、マネーフォワード クラウド給与💰のデザインをしているmaisです。ユーザーリサーチや分析等から仮説をたて、UIデザインを行うところが特に好きなデザイナーです。

今年2月に、お客さまからのご意見をもとにマネーフォワード クラウド給与の「従業員一覧画面」を改善し、満足度の大幅向上を実現することができました。
今回はこの施策に関する一連の業務フロー(アンケート設計と分析から施策案の作成、意思決定・合意の流れ)について、なぜそれをやったのか、どのように実現したかをご紹介いたします。

このnoteは大まかに以下の構成となっております。

1. アンケート設計

ことのはじまりは前任デザイナーのヨコサカさんから「従業員画面のUI改善のアンケートをとってほしい」という依頼を受けたことでした。画面を大幅改修したため、それに対するフィードバックを得たい主旨です。そのアンケートを設計するにあたり心がけたポイントがこちらです。

・次のアクションに繋げられる
・お客さまの負担にならない分量
・個人情報にあたらない回答内容

SaaSプロダクトは作って終わりではありません。次のアクション(改善)に繋げるための質問項目を用意し、Googleフォームを公開しました。

アンケート

1. 新しい従業員一覧の満足度はいかがでしたか?(不満1〜5満足から選択)
2. 従業員一覧へのご意見・ご感想がございましたら、ご自由にご記入ください。(任意・記述)
3. 従業員一覧を操作する際によく使う、または使いたい「絞り込み条件」や「検索項目」はございますか?(選択式)
4. 従業員一覧を操作する際によく使う、または使いたい「ソート項目」はございますか?(選択式)
5. その他マネーフォワード クラウド給与へのご意見・ご要望があれば、ご自由にご記入ください。(任意・記述)
6. 回答者さまの企業の従業員規模をお知らせください。(選択式)
7. 回答者さまのご担当業務についてお知らせください。(選択式)

コメントの入力は任意で、コメントを入力しなければ3分程度で終わる内容です。分量が多すぎると回答の負担が増えるため質問を吟味します。任意のアンケートは長くとも5分以内で終えられるように作ることが多いです。

また個人情報やセキュリティについては一歩間違うとお客さまに大きな不利益となってしまう為、社内の法務部とセキュリティ担当とも連携しながら間違いがないように作成/公開します。

アンケートの導線
給与担当者がプロダクトにログインし最初に表示されるページにバナーを配置しました。給与ソフトは性質上、ログインする時にはユーザーが非常に忙しいことが多いため、プッシュ型のモーダル表示やメール等はせず、あくまで気づいた方が任意で答えていただけるような形で実施しました。

画像1

アンケート実施期間は2ヶ月で、109件のご意見をいただくことができました。自由記述のコメントも約8割の方が記入くださっている、熱度の高いご意見です。

しかし満足度はあまり高くない結果となりました。
では一体どのような所に不満や要望があるのでしょう?

満足度1

2.アンケート分析

今回は以下の手順で主に自由記述のコメントを分析しました。

1. Google フォームをスプレッドシートに表示する
2. コメントを要約し、ユーザーの行為目標を抽出(簡単な価値分析)
3. ご意見の分野をわけラベルをつける(KJ法)

価値分析とは、ユーザーの言動や事象から本質的ニーズや目標を導き出すUXデザインの手法です。主にKA法や上位下位関係分析が用いられることが多いです。
KJ法とは、それぞれ切片にしたデータを関連性に応じて近くに置きグループを作る手法です。

今回は簡易的に上位下位関係分析の行為目標を抽出(2)し、さらにKJ法で意見が挙がった課題分類を整理(3)しました。
価値分析やKJ法などは付箋で行うのが一般的ですが、今回はスピード重視でSpreadsheets上で作業を行います。

アンケートのspreadsheets1

行為目標を件数別にソートした状態↓

行為目標

単純ですが、コメントを書いてくださる熱度のお客さまが多く困っている所ほど影響度が大きいと考えられ、早くなおすべきと考えます。
行為目標をソートし1番多かったのは「従業員間の移動を簡単にしたい」次に「部分一致で検索したい」3番目に応答時間が並びました。

分野は全体で見ると従業員の移動に関する要望が多そうですが、行為目標の数は少ないものの「従業員の設定項目」分野に関するご意見も多いことが観察できます。違った観点の分析を組み合わせると、ご意見から別の傾向も見つけることができます

3.UIプロトタイプ(施策案)作成

なんとなくお客さまの要望のイメージが掴めてきました。現状と行為目標のギャップはどうしたら解決できるでしょうか?ここからは企画考案やプロトタイプを作成し、仮説/施策案をたてます。
私の場合は最初からプロトタイプを作成してしまうことが多いので、要望数が多いご意見や、要望が少なくても解決策が思いつくものを盛り込んだUIプロトタイプを作りチームに共有しました。

UIプロトタイプは実際にお客さまの触る画面がどうなるのかを確認できるため、システム開発の知識や職種に関わらず多くの人に感想を伺え、施策の有効性に意見いただくことができます。また実装後のイメージのギャップも小さくでき、デザイン段階で改善とレビューを繰り返すことでシステム開発段階での手戻りを防ぎ工数削減に貢献します。

プロトタイプ

作業は当時Sketch + InVisionで作成していましたが、現在はFigmaでUI作成〜プロトタイプのシェアを行っています。

4.バックログを作成し、職種横断で会議・施策の選定

プロトタイプと平行してバックログを用意し、提案の概要と施策のアイディアを記載します。ねらいは施策の費用対効果の整理と意思決定です。
お客さまのペインを解消するのに役立つアイディアでも、実現可能性が低かったり実装工数が見合わないと良いアイディアとは言えません。開発チーム(PdM, エンジニア)・デザイナー・CS・サクセスと職種を横断したMTGをセットし、各チームの温度感を合わせていきます。

バックログ

プロトタイプとバックログを見くらべながらエンジニアの方にそれぞれ簡単な工数見積を出してもらいます。中には要望は多いけど実現が難しいものもあり、その場合は工数が少なく似たことができる代替案なども一緒に相談していきます。

CSやサクセスの方には普段のお客さまの声や問い合わせなどのご意見をいただき、要望が多く効果が高そうな施策にランクをつけます。
そして工数と効果のバランスを見比べて実装したい施策を同じMTGで選定します。関係者が揃っている時に、どの施策を優先的に実現するかの合意まで決めてしまうとスピード感をもって意思決定できスムーズです。

そしてこれらの施策がリリースされたのが、2021年の従業員一覧リニューアルでした。こちらのnoteに改善点が詳しく書かれています。

5.今回の改善効果

施策に対するお客さまの反応はいかがだったでしょう?
今回も前回のアンケートを踏襲し満足度調査を実施しました。前回に比べて使いにくい(不満)と答えた人は減り、使いやすい(満足)と答えた人が増え全体で満足度が上がっていることがわかります。

満足度-比較

NPSスコアの算出方法を参考に、4,5を推奨者、1,2を批判者と分類し「推奨者の割合−批判者の割合」でスコアを算出したところ
初回アンケート:-54.1
2回目アンケート:41.9
となり96.1ポイントアップとなりました。
また使いやすいと評価(4,5)した推奨者の割合だけを見ても13.8%→56.5%と約4倍になりました。概ね良い結果となったようです。

今回は定性調査をUI改善に生かす実例としてアンケートを元にした分析〜施策案の作成〜意思決定・合意の流れを実例を交えご紹介しました。

今回は効果がはっきりと現れましたが、想定よりもうまく行かない時や数字に現れないこともあります。
しかしUI改善は一度きりではなく、お客様の反応や定量データのフィードバックから仮説+効果測定法を考え、再現性を高めながら改善のサイクルを回し続けることが大切で、それがチームの資産となります。

クラウド給与チームでは今後ともお客さまの声やデータを活用しプロダクト改善に取り組んでいきたいと思っております。このnoteがお役に立ちそうでしたらぜひスキお願いします😃

コメントやリアクションもらえると、とっても喜びます😇