第481話 金銭的詐欺にも結婚詐欺にも絶対に騙されない、由緒正しい血統の妻
※ この記事は2020年4月の書き直しです。
◆エイプリルフール
僕は、毎年ウソを言います。
ゆかりちゃんに年に1度、4月1日のみ、ウソを言ってきました。
毎年毎年、ゆかりちゃんは律儀に騙されてくれます。
どうやら、疑うということが、ゆかりちゃんは苦手のようです。
これは美徳だと思います。
心、清らかな証拠ではないでしょうか?
今年も、「五月人形が1万円で売れた」という僕のウソを、信じてくれました。
子どもが独立すると、ひな人形や五月人形問題が発生しませんか?
飾るわけでもなく、かといって、捨てるのも気が引けます。
ひな人形は、「人形供養に出すべき」と、僕もゆかりちゃんも思いました。
5月人形は、どうするのが正解なのでしょうか?
リサイクルショップを、片っ端から当たりましたが、引き取ってくれるところは見つかりません。
この状況を、ゆかりちゃんも知っているので、
「そうだ!『売れたよ』と言ってみよう」
と、思いついたのです。
まだゆかりちゃんは、売れたものと思っています。
◆金銭的詐欺、結婚詐欺
毎年、素直に騙されてくれる、ゆかりちゃん。
疑うことが苦手な、ゆかりちゃん。
これは普通、心配になる美徳でもあります。
なぜなら、悪い人や詐欺師などに、騙される特徴でもあるのですから。
しかし、僕は、まったく心配していません。
①ゆかりちゃんは、金銭的詐欺には、絶対に騙されない
ケチなのです。
由緒正しい血統の、ケチ、なのです。
良く言えば、金銭感覚が、しっかりしています。
そして、金融の「プロ」です。
家計でも、僕の少ない給料でさえ上手にやりくりして貯金する、という離れ業をやってのける天才なのです。
警戒心大ですし、
保留にするクセが凄いですし、
「上手い話なんて絶対にない」と確信しているのが、ゆかりちゃんなのです。
②結婚詐欺にも騙されない
僕に夢中だから、とかではありません。これは少ししかありません。
でも、どんなイイ男がゆかりちゃんを口説いても、決して落とせないのです。
ゆかりちゃんは、「裏切らない人間」なのです。
ゆかりちゃんの辞書には【裏切り】の文字がありません。
小心者なので「バレなければ良い」とは思えず、「バレたらどうしよう」と気をもみます。
そのように苦しむということを、知識として知っているからなのか、
はたまた、ウソをついて苦しんだ苦い経験があるからなのか、
いずれにせよ、
「ウソをつこう」
「騙そう」
という、そういう発想が、ゆかりちゃんにはないのです。
◆大河ドラマ「麒麟がくる」
ゆかりちゃんは、大河ドラマを観ない人でした。
でも、今年は観ています。
「麒麟がくる」です。
ゆかりちゃんの地元の近くが、舞台になったりします。
それで興味を抱き、歴史の面白さに目覚めつつあります。
歴史好きの僕は、この変化がメッチャ嬉しいです。
毎週、欠かさずに、ゆかりちゃんは「麒麟がくる」を観ていて、
逆に僕は、ドラマ断ちすることを決めました。
ドラマは時間を奪います。
文筆家業を始めた僕には、時間が足りません。
せっかく、ゆかりちゃんが大河ドラマを観ていて、すごく残念ではあるのですが、連続ドラマは観ないと決めました。
◆吝嗇(りんしょく)
大河ドラマを観ていたゆかりちゃんが、
「吝嗇(りんしょく)って、なぁに~?」
と、僕に質問しました。
「ケチってことだよ~」と、僕は答えました。
「じゃあ、お兄ちゃんは吝嗇かぁ」
と、ゆかりちゃんは言いました。
爆笑です。
ゆかりちゃんのお兄さんは、たぶん、日本で5本の指に入るケチです。
値引き交渉は、営業担当者が怒り出すまで行なうのです。
セールスマンが怒ったなら、
「ん? なんだその態度は? じゃあ買わん!」
と、ならないのがお兄さんです。
「怒り出したら『値引き限界のサイン』だ」と、お兄さんは考えています。
担当者をが怒りだすまで無理難題を言って、
「もう買っていただかなくて結構です」と言い出して、
(お! ここが限界なんだな)と判断して、
「まあまあ」となだめて契約する。
これがお兄さんの基本スタイルと、ゆかりちゃんは解説してくれました。
常に、限界まで値引きしたいのが、お兄さんです。
間違いありません。
お兄さんは吝嗇です。
ゆかりちゃんが、由緒正しい血筋のケチというのは、このお兄さんのエピソードが根拠です。
僕は、充分な根拠と思っています。
◆〆
気が弱く騙せない、ゆかりちゃん。
日本で5本の指に入る吝嗇な兄を持つ、ゆかりちゃん。
その血統ゆえ、金銭的詐欺には絶対に引っかからない、ゆかりちゃん。
でも毎年、
僕のエイプリルフールネタには簡単に引っかかる、ゆかりちゃん。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのです。