あのころはセミダブルベッドで、仲良く寝ていた…
深夜0時を回っていた。
なぜ、目が覚めたのだろう、と僕は思った。
尿意があるわけでもない。夢にうなされた覚えもない。
ちょっと不思議な感じがした。
ゆかりちゃんが、何か言った。
これだ。
僕が目を覚ましたのは、ゆかりちゃんの声がしたからだ。
様子を窺ったが、眠っている気配100%だった。
たぶん、寝言だ。
また何かを言ったが、珍しく聞き取れない。
「ボソボソ……」
と、ボリュームが小さ過ぎ、活舌も悪い。
ボリュームが大きく活舌明瞭なのが、ゆかりちゃんの寝言じゃないか。
どうした?
今夜の寝言は、調子が悪いのか?
ん?
少し、寝言のボリュームが大きくなったぞ。
「たすけて…」
と言った。
間違いない、今、「たすけて…」と言った。
しかし、ゆかりちゃんは夢の中だ。
何かに追われているのか?
襲われそうなのか?
ならば、肩をゆすって目を覚まさせた方が良いのか?
しかし、「寝言に話しかけてはイケない」と聞いたことがある。
「たすけて」
「たすけて! たすけて‼」
ボリュームがどんどん大きくなっている。
「たすけて~~~~~~!!!」
もはや絶叫だった。
致し方ない。
僕は、「大丈夫?」と、史上最高の”やさしい声”で語りかけた。
「僕がいるから安心して」と、そ~っと言った。
ゆかりちゃんの左肩に、僕の右手を、そ~っと置いた。
羽毛が乗った程度の衝撃しか与えなかった。
その効果があったのか?
ゆかりちゃんの悲鳴が、止まった。
ゆかりちゃんは目覚めることなく、眠ったままだ。
寝息さえ聞こえない。
僕は、愛する妻を
という、超~~~難易度の高いミッションをコンプリートしたのだ。
ゆかりちゃんは顔を覗き込むと、キレイな顔で眠っていた。
「すやすや」と、小さな寝息が聞こえた。
枕もとのデジタル時計をチラろ見た。
時刻は0:31だった。
その時だった。
ゆかりちゃんは、肩に置かれた僕の手を、
「ぺシッ!」
っと、
払いやがった……。
うぐぐ…。
くっ。
ふう~。
・・・。
す~~~っ(6秒かけて吸ってぇ~)
・・・(1秒止めて)
ふ~~~っ(6秒かけて吐いてぇ~)
僕は、ゆかりちゃんが大好きなのだ。
おしまい
PS
私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
こちら ↓ です。
ご一読、お願いします!