第72話 6月10日のケンカ 2
昨日の記事では、ゆかりちゃんは知ってのとおり正確ではない。
将来、ゆかりちゃんと読み返すかもしれないので、正確に残すため追記する。
◆きっかけは僕の一言
散歩から帰り、雰囲気は(ケンカは終了~)となった。
僕は、昨日の記事に書いた最後のことを、ゆかりちゃんに伝えたかった。
1.家族には、【家族にダメ出しが厳しい家族】と【家族を全力応援・全力擁護の家族】と2つあると思う
2.両極端だと思う(なんでだろう?)
3.僕の実家の話(悪い例)
4.友達の例 2つ(良い例)
5.※結論 僕は、応援して欲しい
このように伝えたかった。
ただ、僕の言い方が悪かった。
1の【家族にダメ出しが厳しい家族】と言ったときにトゲが混じった。
まるで「さっきのゆかりちゃんがそうだったけど」と、そう言ったかのように響いた。
これは、僕の器が小さいからだ。
ゆかりちゃんは、反撃という反応に出た。
1が終わってすぐだ。話はまだ2へ進んでいない。
ゆかりちゃんは防衛のために、「だったら私だって言いたいことある」と、全く論点の異なる不満を言ったのだ。
◆僕にとっては大事な前提
僕は、一度目の結婚をしたときは、年収1000万円以上だった。
離婚するときは、年収は2000万円になっていた。
しかし、離婚。
僕は、金がすべてはないと体験した。
僕は、高収入の会社を辞めて、「もう2度と『嘘』の必要な仕事はしない」と決めた。
世間は【売上】や【契約】、あるいは事を荒立てないために、ときには人間関係を良好に保つために、僕に嘘を求めた。
僕は、頑なにそれを拒んだ。
それを受け入れるのなら、辞めたブラック企業に残った方が正しいことになる。
やりたいことをやる。
それ以上に大事にしたのは、やりたくないことは絶対にやらない、ということだった。
僕は、嘘の必要のない会社を選んだ。
収入は激減だ。
幸い、そこまで物欲に囚われてはいなかったので、特別困ることはなかった。
ただ、精神的には「情けない」と自分の現状を思ったりはした。
僕は、そんなタイミングのときに、ゆかりちゃんに出逢ったんだよ。
僕は、低収入の僕を受け入れてくれたことが嬉しかった。
しかも、いずれは事業を起こして高収入をと考えていた僕に、ゆかりちゃんは「ささやかな暮らしで充分」と言ったのだ。
リスクを覚悟して起業するのは、私は嫌だと。
「ふたりで頑張り、ちゃんと貯金をしていけば、老後だってなんとかなる」と。
僕は、世の中に貢献する人間だと、自分のことを、そう定義していた。
たくさんの人を幸せにする使命があると思っていた。
だが、使命を書き換えた。
持論があったのだ。
この世に生を受けたのだから、最低でも1人の人を幸せにしなければならない。
君が嫌がるのなら、リスクを負うチャレンジはやめよう。
ささやかでいい。
ちゃんと君を幸せにしよう。「しよう」はおかしいか。ちゃんと「じょーじのおかげで幸せだったわ」と、僕の今わの際で、そう君に言ってもらえる生き方をしよう。
そう、使命を書き換えたのだ。
◆「しょせん」
僕の老後のプランは、退職金を元手にフランチャイズチェーンのオーナーになることだった。
もしくは、ラーメン屋か。
ラーメン屋は、体力面が心配だ。65歳ではなく60歳くらいではじめた方が良いだろうか。そんなことを考えていた。
安いアパートを買って、というアパート経営も検討していた。リスクを限りなく最小にして。
ただ、猛烈に仕事に打ち込んだことのある僕には、現在を誇れない、そんなモヤモヤがいつも付き纏った。
僕は、つい年収2000万円時代のゼネラルマネージャー的口調になる。
偉そうにものを言う。
たとえ正しかろうが、低収入のサラリーマンが言ったって説得力はない。
でも僕は、過去をすべて話したし、そんな僕を受け入れてくれたゆかりちゃんだけは、わかってくれると思っていた。
僕はモヤモヤを抱え、でも、ゆかりちゃんにだけは甘えて、偉そうなことを言う。大事なアドバイスだったり、普遍的な原則だったり、ゆかりちゃんのためになると思って講釈を垂れた。
低収入の夫の戯言が繰り返され、きっとゆかりちゃんは辟易してたのだろう。
「じょーじ、偉そうに言うけど、しょせん低収入のサラリーマンじゃない」
この「しょせん」という言葉に僕は切れた。
薄々わかっていた。
だから、図星を突かれた感じだった。
これでもかってくらい、凹んだ。
めちゃくちゃ底辺に落ちた。精神的危機に陥った。人はこうして鬱になるのかと思った。
そして考えた。
考えたら、シーソーの理論じゃない!と浮かんだ。
4象限で考えた。
ローリスク・ハイリターンのゾーンが見えた。
ゆかりちゃんも「ささやかでいい」とは言ったものの、やはり経済的成功や、多少の贅沢は味わいたいはずだ。
だから「しょせん」って、出ちゃったのだ。
それに、僕は、やはりビジネス界で暴れたい! 自分の力を試してみたい。
ゆかりちゃんを幸せにした上で、そのほかの多くの人も幸せにしたい。
ローリスク・ハイリターンを模索し、調べ、考えた。
好きなことをやれば、モチベーションも続くだろう。
好きなことをやるのだから、少なくとも幸せではある。・・・ま、この場合は僕だけだが。
そして出した結論が、サラリーマンをやりながらの副業だ。
副業は、文筆家、作詞家、投資家だ。
文を書く。
投資は株式投資からだ。やがてはアパート経営もやる。
文を書くための出費は、このパソコンだけ。
株は、保険を解約して作った80万円だ。
全部、ゆかりちゃんに話した。
5年という期限も設けた。
経費ももうかからない。
ただ、時間を作るために、会社は変わらないが部署を変える。
時間は増えるが、収入はさらに減る。
ゆかりちゃんはOKしてくれた。
「じょーじならできる!」
「将来、ちょっとは贅沢させてよ~!」と言ってた。
◆現在
副業を始めて5か月。
「文筆家」と名乗るのは、超~恥ずかしい。
「おまえが?」
「は?」
「いやいや、無理だから」
「なんか実績あるの」
と、色々な声なき声が聞こえるのだ。
株式投資の現在の確定利益は、12,300円。
ただしこれは、複利で運用するので使えないお金。
文筆活動での収入は、0円。
◆ケンカ 第2ラウンド
散歩から帰り、仲直りの雰囲気になり。
僕のトゲのある言葉がきっかけになり。
ゆかりちゃんが、異なる論点で反撃したのだ。
「収入減って、わたし不満だし」
「将来だって、不安だし」
話し合って決めたことだ。
説明した。
今、ちょうど言いたかった。なぜ応援してくれないの。
また責めてしまった。
さっきの今だから、自責の念もすぐ浮かぶ。
でも、ゆるせない。
ゆるしたくない。
いやいや、おまえの使命は、ゆかりちゃんを幸せにすることだろ。
自分を自分が責める。
かろうじて同じベッドで就寝したのだった。
3時は、頭が怒りで目覚めた。
3:30は、悶々としてだった。
4時は、自責の念だった。
◆ケンカは不毛だ
体力・精神力をめちゃくちゃ消費した。
快眠できなかった。
時間の浪費だった。
建設的じゃない。
気分が最悪になる。
これは、絶対に避けるに限る。
ゆかりちゃんが、僕に切れるなんてことはない。
僕が、何倍にもして返すと思われているからだ。
僕たちのケンカは、僕がゆかりちゃんを責める。これだけだ。
つまり、僕次第でケンカはなくなる。
◆しかし
こう書くと、普通は
「ううん。じょーじ、わたしも悪かったわ」となりそうなものだが、ゆかりちゃんは、そうはならない。
5年以上も、ラブラブと普通とケンカと仲直りと繰り返してきたのだ。
わかるのだ。
この場合のゆかりちゃんは、「そのとおりやわ」「やっとわかったか」となる。
間違いない。こう言う。
これに、僕は不満だ。
僕は、さんざん考えて、深掘って、吟味し、紆余曲折し、悩み、考え直し、そしてたどり着いているのだ。
ゆかりちゃんは1工程しかしてない。
怒った。じょーじが反省した。「やっとわかったか」
これはおかしい!!
しかし、また僕は深掘ってしまう。
ゆかりちゃんの対応に不満を持つ。これは関心の輪か?
影響の輪に集中するのが基本だ。だが・・・。
妻なら、僕の影響は大きいのでは?
いやいや、そもそも妻を変えようとする、そういう考えが間違いだ。
妻をコントロールしようと思っているのか?
夫婦だから、価値観をすり合わせてもいいのではないか?
いやいや、やはり関心の輪だ。
僕は、僕がコントロールできることに集中しよう。
ゆかりちゃんは、現在まさに関心の輪のど真ん中だ。
渡部の不倫に息巻いている。
ある意味、平和だ。
逆に良いのかもしれない。
理屈っぽいゆかりちゃんって、なんか嫌だし。
今も、歌詞を完全に歌えないCMソングを歌っている。
「ク~リ~ヤ~♪ アサヒが♪ 家で冷えてる♪ 心ウキウキワクワク~♪」
ヤじゃないよ。
ア。
クリア。
指摘はしていない。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きだからだ。