
「あなたの、心に残る言葉を教えてください」「では僕は、ある青年のツブヤキを披露いたします」
ゼロさんの企画に参加します。
有名人や偉人の言葉ではない。
検索しても出てこない自分にとって「大切な言葉」を教えてください。
ゼロさんの記事 ↓
僕がまだ18歳。社会人となって数か月でした。
先輩が、ボソッとつぶやいた一言です。
◆松井さん
僕は、高校を卒業して、S運輸に入社しました。
仕事は、2トントラックの集配を行なうセールスドライバーです。
最初の半年間は、いろいろな先輩の、横乗りをします。
先輩の集配業務を手伝いながら、仕事の流れやコツを覚えるワケです。
松井さんは、たぶん23歳くらい。僕より5つくらい年上の先輩です。
僕は、松井さんの横乗りが大好きでした。
松井さんは、6時に出社します。定時は8時なのにです。
松井さんには、いつも「7時までに来て」と言われました。
雀の涙程度ですが、固定給プラス歩合の給料形態だったのです。
配達や集荷の件数や量が多ければ多いほど、給料は多くなります。
でも、本当に雀の涙程度なので、松井さん以外は誰一人として、歩合なんて気にしていないのです。
松井さんは、配達も集荷も、ほかの人の2倍以上行ないます。時には3倍近いこともありました。
1番早く来て、1番遅くまで働く。
僕は、この1年後に、超ハードワークで有名なS急便へ転職しましたが、松井さんの仕事量は、S急便以上でした。
松井さんは、歩きません。常にダッシュなのです。
重い荷物を持っていてもです。
ジョギングや駆け足、ではなくダッシュです。そのダッシュはメッチャ速くて、手ぶらの僕より、一斗缶2つを持つ松井さんの方が速かったのです。
仕事に真剣に取り組む男のオーラ。
それを、間近で浴びる快感。
気さくな先輩や、話し上手で冗談のオモシロイ先輩の横乗りは、楽しくはあります。しかし、快感なんて感じません。
松井さんの横乗りは、違う世界、という感じでした。
僕まで、松井さんの雰囲気に近づけたような…。
カッコイイ男になったような…。
そんな勘違いができる世界だったのです。(今思えば)
松井さんには、なんとなくですが、明確な目標があるみたいでした。
貯金額なのか、独立起業なのか。
「松井君は、家を買いたいんだよ」と、高橋さんという40代の先輩が言ってました。
そのウワサの真偽はともかく、漠然とした夢なんかじゃなく、明確な目標がある。
それは、18歳の小僧の僕にも、ビンビンと伝わっていました。
僕は、キャップのひさしの形。キャップの被り方。吸っているタバコの銘柄まで、松井さんの真似をしました。
男の僕が憧れたのです。
当然のように、松井さんは、女性社員の憧れの的でした。
そして、管理職者の信頼も厚い。
だからこそ、松井さんは、同年代の男性ドライバーから、ものスゴク嫌われていました。
その人たちの、松井さんへの悪口は、ほとんどが「守銭奴」というもの。
大いに、ひがんでいました。
堂々と、ねたんでいました。
カゲ口を言う人。
無視する人。
敵意をあらわにする人。
同世代の男性ドライバーには、総スカンをくらっていました。
注:事務の男性社員は、困った時に助けてくれる(配達でも集荷でも、すぐに行ってくれる)松井さんを嫌うハズなどなく、逆に、感謝していました。
何度目かの、松井さんとの横乗りのときに、僕は意を決して言いました。
「松井さん、同世代の先輩たちに、凄く、嫌われてますよ」
松井さんは、「ああ」と言ったあと、
「俺がアッチ側の人間なら、同じこと言ってるだろうからなぁ。まあ、仕方ないよ」
と言ったのです。
爽やかに言ったのです。
そして、僕を見て「ニコッ」っと、ほほ笑みました。
僕は、1、2秒、考えました。
松井さんの言葉の意味が、ふいに理解できて、
感動してしまって、何も言えなくなりました。
本当は、
僕 「松井さん、同世代の先輩たちに、凄く、嫌われてますよ」
松井「ああ」
僕 「松井さん。…僕は、松井さん派ですから」
松井「ふっ。ああ、ありがとう」
と、伝える予定だったのです。
松井さんは、味方など必要としていなかった。
松井さんは、自分を総スカンしているヤツらの、その気持ちまで考えていた。
大好きな言葉なので、もう一度書かせてください。
「俺がアッチ側の人間なら、同じこと言ってるだろうからなぁ。まあ、仕方ないよ」
今、思い出してもカッコイイ。
泣けるほどカッコイイ。
泣いちゃう。
ひがんで突っかかってくるヤツらにさえ、やさしい。
カゲグチを言って無視するヤツらにも、やさしい。
なにそれ。
23歳の青年が?
本当に、カッコ良すぎです。
これ、実話なのです。一切、盛ってません。
◆企画、企画参加、ありがとうございます
ゼロさん。ステキな企画をありがとうございます。
そして、この企画を知ったのは、チェーンナーさんのこの記事のおかげでした。
4月16日までの企画です。
まだ間に合いますよ~。
◆〆
この松井さんのことは、1度か2度、noteで記事にしました。
なので妻のゆかりちゃんは、何度も聞かされ、かつ、読まされた話です。
でも、また書いて良かった。
あらためて、僕は心底、この言葉が好きだと分かりました。
18歳のときに、このような、ダイヤモンドのように美しい言葉に出会えた。
僕は幸せ者です。
そして、ゆかりちゃんに出会えた。
最高に幸せな人生です。
100点満点ゲット済み。ここからは幸せ以上しかない。
スゲ~幸せか、
超~幸せか、
空前絶後の幸せか、とにかく幸せ以上は確定しています。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。
チャオ!
※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1095話です
いいなと思ったら応援しよう!
