互いに2度目の結婚だ… 見つめ合うのではなく,同じ方向を見つめ一緒に歩こう…
「仮面夫婦なんです……。
子どもが大きくなるまでのガマンっすね。
嫌いなんですよ、お互いに……。
もう何年も、会話してないし……」
会社の後輩の、片岡くん(仮名)が、そう、吐き捨てるように言った。
片岡くんの趣味は、ソロキャンプ、登山、バイクツーリング、釣りで、奥さんや子供と一緒に行ったりはしないと言う。
休日は趣味に逃げ、家庭は崩壊しきっている。
そういう説明を聞いた。
僕も、1度目の結婚は、10年で破綻した。
今では僕が悪かった、と思うが、
当時は「妻が悪い」と、100%信じていた。
だから僕は、片岡くんに何も言えなかった。
そもそも片岡くんは、
僕に、アドバイスも慰めも、なにも求めていなかったし……。
このような説明を、僕は、妻のゆかりちゃんに行なっていた。
* * *
僕は昔、「『好き』という理由で結婚するから、離婚するのだ」と、何かの本で読んだ。
その書籍では、
と説いていた。
このことを僕は、
交際中のゆかりちゃんに、3回くらい語った。
僕は、バツ2にはなりたくなかったし、ゆかりちゃんも「バツ2は避けたい」と言っていたから。
同じ方向を見て、一緒に歩もう。
そのような共通認識が、僕たちにはあった。
あったハズなのだ。
だから僕は、ゆかりちゃんに、こう言ったのだ。
「片岡くんは奥さんが『好き』で、それで、結婚したんだろうね」
ゆかりちゃんは、ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら、
「あらぁ~~~?
私のことが『好き』だから、
私と結婚したんじゃないの~?」
と、言った。
僕は、今そういう話をしていない、と思った。
そして、それを説明するのはもっと面倒くさい、と思った。
すると、ゆかりちゃんは空気を察し、
「てへぺろ~~~!」
と、言った。
ローラさんの言い方ではなかった。
イッコーさんの「どんだけ~~~!」の言い方だった。
なんなら、人差し指を立てて左右に振っていたような気もする。
僕は、少し腹が立った。だから、
「80歳になっても『てへぺろ~~~!』って言えよな」と言った。
「ん~~~、覚えてたらね」
と、憶える気がないと伝わる声で、ゆかりちゃんは応えた。
僕は危うく、「どんだけ~~~!」と言いそうになったが、何とか堪えた。
堪え切り、何も言わなかった自分を、
僕は褒めてあげたい、と思っている。
おしまい
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私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
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