第411話 初めて一緒に市役所へ行った時、ゆかりちゃんは少し大きな声だった(書き直し集-その7)
さて、今日は、第21話 市役所 を書き直す。
数日後この記事を、マガジン『書き直し集』に加えるときには、
この冒頭文や、◆〆の文章をカットする。
◆初めて一緒に市役所へ行った時、ゆかりちゃんは少し大きな声だった
以前、ゆかりちゃんと市役所へ行った。
愛知県K市に転入して、まだ間もなかったから、もう、7年前になるのか。
月日の流れは速い。
車の購入に、住民票が必要だった。
ゆかりちゃんは、
「K市はねぇ~、日曜日でも住民票とかが取れるのよ~」
「助かるわ~」
と僕に教えてくれた。
なかなかの、ご機嫌のようだ。
「第3日曜日だけは、住民票とか、取れないのよ~」
と、例外があることも教えてくれた。
今、記憶を思い返し、映像や音声を【脳内再生】しているのだが、
当時のゆかりちゃんは、猫を100匹ほど被っている。
最近のゆかりちゃんなら、
「第3日曜日だけは、住民票とか、取れんのやて~」
「気~いつけや~」
というハズだ。
けっして、「取れないのよ~」などとは言わない。言いっこない。
* * *
K市役所は、そこそこに新しい建物だ。
そして、なかなかオシャレな設計をしている。
目的の市民課は、多くの市役所がそうであるように、1階ロビーの、すぐ近くにあった。
ロビーは広く、その広さのまま、市民課のエリアへと自然となってゆく。
1階のスペースすべてが、ロビーであり市民課である、という感じの設計だ。
そして、2階部分は、そのほとんどが吹き抜けになっている。
だから、天井が高く、ものすごい開放感がある。
2階の間取り図は、大きな【 ロの字 】になるという、そんな設計なのだ。
ハシャギ気味のゆかりちゃんが、楽しそうに言う。
「じょーじ! 大きい筒抜けやねぇ~~~!」
ゆかりちゃんの声は、少し大きかった。
僕は、小さい声でツッコミを入れた。
「ゆかりちゃん、・・『吹き抜け』だよ~」と。
思えば、このころの僕は、まだ標準語だった。
今なら、「吹き抜けやでぇ」と、言っているだろう。
ゆかりちゃんが、笑いながら、
(間違っちゃった~)という顔をして、照れた。
照れたゆかりちゃんは、可愛かった。
と同時に、ゆかりちゃんから、猫が5~6匹、逃げて行った。
・・・はは~ん。
記憶を思い返して、見えたモノがある。
このようにして、
ゆかりちゃんが被っていた猫100匹が、少しづつ逃げて行ったのか。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。
◆元の記事
こちらだ。
◆〆
僕は、ゆかりちゃんの話す【東濃弁】が好きだ。
僕の、ふるさとの方言や、ふるさとの近くの【津軽弁】は、あまり好きではない。
女性が自分のことを、「オレ」とか「オラ」と言うからだ。
残念だが、可愛くない・・・。
ふるさとの女性は、なにも悪くない。
そのような環境で、生まれ育っただけだ。
むしろ東北の女性は、純粋で、奥ゆかしくて、愛おしい。
でも、言葉は、美しくはない。
だからなのか、僕は、東濃弁や京都弁や大阪弁の、可愛らしい方言に、憧れのようなものを感じている。
憧れは抱くが、54歳の僕は、けっして盲目ではない。
例えばこのようなYouTubeで、現実が理想と異なることも、ちゃんと学習済みなのだ。
理想ではなく、現実の、
妄想ではなく、真実の、
猫100匹被ってではなく、すべての猫が逃げ切ってからの、
その上での、ゆかりちゃんの【東濃弁】が好きなのだ。
「ほうやらぁ~」
などと、可愛いのだ。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。