「オレって、違いがわかる男だからさ」と言って、あえてニヤリとしたのに…
僕は、珈琲が大好きです。
好みは、酸味のない苦い珈琲。珈琲豆がメッチャ黒い深煎りが大好きです。
僕は、豆をミルで挽きます。
時間もかかるし面倒ですが、この方が断然、香りが強くなりますから。
妻のゆかりちゃんも、最初だけ豆で購入しミルで挽きましたが、今では面倒だからと粉で購入しています。
***
同じ豆で、同じ挽き方をしているのに、味が異なることがあります。
最初は、僕の体調の良し悪しが原因かと思いました。
でも、体調が原因ではなさそうでした。
淹れ方、に違いがあるのではないか?
と、思い至りました。
蒸らす時間や、お湯の温度、お湯の注ぎ方。
それらをインターネット検索して、調べました。僕は、基本さえも分かっていなかったのです。
以上のことを、僕は、ゆかりちゃんに語りました。
ちょうど珈琲を淹れているとき、ゆかりちゃんが隣に座っていたからです。
僕は、少しボケてみようと思いつき、
「オレ、違いがわかる男だからさぁ~」
と言って、ニヤリとしました。
ゆかりちゃんは、無言です。
僕の顔を、チラリとさえ見てくれません。僕の「ニヤリ」は台無しです。
ゆかりちゃんは、何の前ぶれもなく歌いだしました。
「ダバダ~♪ ダ、ダ、ダバダ~、ダバダ~♪
ダバダ~~♪ ダバダ~~♪ ダ~~~~~♪」
懐かしい、と僕は思いました。
コレ ↓ です。
この曲、すっかり忘れていました。
僕、頑張ってボケたのに……。ボケでは敵いません。
ゆかりちゃんのボケは、天才でした。
ただ、思い出したから歌う。
このようなシンプルなボケって、理屈っぽい僕には、できないんです。
◆〆
後になって、僕は思いました。
「ダバダ~♪・・・」
と歌った、その時の、ゆかりちゃんの歌声と顔は、少し得意気でした。
得意気と言っても、(どや? オモロイやろ~?)というドヤ顔ではなく、(あら? 私、イイ声で歌えているわぁ~)という、自分の歌声に酔っている顔でした。
大丈夫です。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。
おしまい
PS
私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
こちら ↓ です。
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