「大丈夫」の使い方が間違ってますが、それが何か?
ゆかりちゃんと一緒に、ソファーでテレビを観ていました。
僕の手に、ゆかりちゃんが自分の手を重ねてきました。
(おお?)
こんな風に、ちゃんと重ねてきました。
なんの冗談だろうか?
でも、冗談な感じでもない。
チラと、ゆかりちゃんの顔を見ると、ゆかりちゃんはテレビに視線を向けたままです。
こんなことは滅多にありません。
たまにはケンカするのも良いのかも……。
ケンカのあとは「燃える」とも言うし……。
ゆかりちゃんが、さらに積極的になったみたいです。
僕の右手を引き、ゆかりちゃんの両手で包みました。
(ま、まじで、マジか?)
ゆかりちゃんは、僕と眼を合わせ、
「あげる」
と言いました。
山口百恵さんの、『ひと夏の経験』が、僕の脳内に流れます。
僕の脳内には、もう1人、別な僕が居ました。
そいつは、冷静な僕です。
そいつは、ゆかりちゃんが精いっぱい色っぽい表情をしているのに、
そのゆかりちゃんの表情の中の、わずかな引きつりを見つけます。
そいつは、「ふん。お互い50代やん」と鼻で笑っています。
僕はそいつとは違って、ドキドキしていました。
僕は、純粋なのです。
ゆかりちゃんは、僕の手のひらに何かを握らせました。
コレです。
失敗しました。
冷静なもう1人の僕を全無視して、ゆかりちゃんを押し倒せば良かった。
そっちが面白かったハズだ。
あれ? 純粋は?
大丈夫です。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。
おしまい
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