第496話 明太フランスが絶品のパン屋さんの店内で、夫婦げんかしちゃアカン

※ この記事は2020年5月の記事の書き直しです。


◆パンセット

僕とゆかりちゃんは、モンシェルというパン屋さんのモーニングが大好きです。

僕は、モンシェルさんの明太フランスが大好物で、たぶん目に入れても痛くありません。
お店でも、人気の商品です。

お店は、半分のスペースがパン屋さんで、もう半分はカフェスペースです。
カフェでの人気メニューに、パンセットがあります。

パンセットAは、400円です。
パン屋さんで、自分の好みのパンを 1つ 選んできます。それに珈琲などの飲み物を選んで、合計価格が400円。

パンセットBは、500円です。
パン屋さんで、自分の好みのパンを 2つ 選んできます。それに珈琲などの飲み物を選んで、合計価格が500円。

僕は、このパンセットBが大好きで、ほかの注文をしたことがありません。
しかも1つのパンは、必ず明太フランス(ハーフ)です。

ゆかりちゃんは、ときに違う注文をしますが、それでもやはりパンセットBを選択することが1番多いですね。

もし、パンセットOKのモンシェルさんのパンを、買って帰るならば、その価格は1個、130円~180円します。
なので、パンセットBは、かなりお得なのです。

仮に160円のパンを2個買ったなら、それだけで320円。
そこに180円プラスしただけで、美味しい珈琲がいただけるのですから!


◆小さな違和感

その日は、僕もゆかりちゃんも、ともにパンセットBを注文しました。

それぞれ、好みのパンを選び、それをいただきました。
珈琲も美味しくて、とても幸せです。

ゆかりちゃんが、2つ目のパンを指して、

「このパン、ちょっと大きいから袋もらって、持って帰るわ~」

と言いました。

僕は、「少し食べてくれない?」と、そう言うのかと思っていまして、予想が外れました。

そして、それとは違う感覚も察知したのです。
良く分からないのですが、なにか、小さな違和感を感じたのです。


◆グレーゾーン?

妙な違和感を覚えて、僕はその正体を探りました。

そして、気づきました。
パンセットAと、パンセットB の差額は、100円です。

しかし、ゆかりちゃんが選んで、でも食べずに持ち帰るパンは、もし最初から購入するならば、それは150円のパンなのです。

生真面目に言うなら、パンセットAの400円と、パンの代金150円が本来の価格になります。

ただ、ゆかりちゃんは最初からそれを狙っていたわけではありません。
普段はパンを2つ、ちゃんと食べます。
その日は、たまたま、ボリュームのあるパンを2つ選んでしまっただけなのです。

そのことは、僕には、ちゃんとわかっていました。


◆小さな声で【説明】

僕が、違和感の正体を探って少し黙ってしまったことが、ゆかりちゃんには不愉快だったようです。

(じょーじは文句があるんだ)

と、思い込んだようなのです。

「なに?」

と、聞かれました。

僕は簡単に、説明しました。

「持ち帰るならば厳密には、パンセットAの400円プラス、パンの代金150円だなぁ、と思ったんだよ~」

そして、
「でも、ほんの少しの罪悪感を持つなら、全然かまわないと思うよ~」

と、僕は言いました。


◆小さな声で【文句】からの【バトル】

僕は、【説明】したつもりなのですが、ゆかりちゃんにしてみると【文句】をつけられた、ということなのでしょう。

ゆかりちゃんは、僕の態度も発言も、全くもってお気に召さなかったのです。

「せっかく楽しいモーニングなのに!」
「なんでこんなことで文句言われなあかんの⁈」
「みんなやるし!」
「ひろみちゃんなら絶対やるし!」
「お店の人もダメって言わないやん!」
「なんで、じょーじに文句言われなきゃならんの!」
「ダメなの⁈」
「腹立つ!」

もう、プンプンです。

つい、僕の小声にもトゲが加わります。

「だから、『かまわない』って言ってるよね」
「ほんの少しの罪悪感を持てば、って」
「それが無理なの?」
「本当に、ホンの少しの罪悪感さえないの?」

と、僕も、引き下がりません。

店内で、めっちゃ声を潜めてのバトルです。
犬も食わない夫婦げんかを、超~小声で、長いことやっていました。


◆文化の違いかな?

帰宅してからも、珍しくゆかりちゃんが、いつまでも怒っていました。

「友だちの、誰に聞いたって、きっと私は悪くない」

と、かたくなでした。

今思えば、関東や東北の文化と、この東海地方の文化の違いだったのに、
それに思いいたらなくて、
互いに「非常識だ!」と決めつけ、非難していたのだと思います。

僕の思う、関東や東北の文化では、決して『お客さまが【上】』ではありません。
お客さまと店員は【対等】です。

対して、
今の僕が思う、この東海地方の文化は、確実に『お客さまが【上】』です。
商売人やビジネスマンは、「まあ、客が言うんだから仕方ない」と、お客のわがままに腹を立てません。

腹を立てつつも、あきらめるのです。
それが常識のようです。

ちなみに、僕の常識は、
『客の立場だからといって、わがままを言うとか、上からの物言いをするとかは、とても【恥ずかしい行為】』というものです。


◆その日の夜

ず~っと、ゆかりちゃんが怒っていて、僕も不愉快でした。

僕は、同じベッドで寝るのが嫌でした。

「僕は、今日は、こっちの部屋で寝る」と、言いました。

別々に寝る宣言です。

「ケンカしても同じベッドで寝る。それがルールだよね」

と、ゆかりちゃんが、すごく哀しそうに言いました。

僕が言い出した、わが家のルールでした。

このルールを、
「守りましょう」と、
ゆかりちゃんが言ってくれたおかげで、僕たちは同じベッドで眠りました。

自分で決めたルールを、自分が破るのか? という思い以上に、
ゆかりちゃんの哀しそうな表情が、僕の心に刺さりました。

これ以上、哀しませてはいけない、と反省しました。


◆翌日以降

僕は、一晩寝て起きれば、怒りは無くなります。
忘れるのです。

なぜか昔から、根に持てません。持ちたくても忘れてしまいます。

朝、ゆかりちゃんと、普通に挨拶を交わし、自然に仲直りできました。

と、思っていたならば、
3日後ぐらいに、実は、ゆかりちゃんは、まだ根に持ってってビックリしました。


◆しばらくたって

ゆかりちゃんは、『3日後』どころか、半年くらい根に持っていました。
親友のひろみちゃんに、

「わたしは悪くないよね?」
「みんなやるよね!」
「なのに、このじょーじが、ったく、偉そうにさぁ~!」

と、饒舌に文句を言っていて、僕は、メッチャ笑いました。

もしかしたなら、まだ、根に持っている可能性があります。


ちなみに、
僕たち2人は、今、同じベッドでは寝ていません。

ケンカではありません。
ルールの変更です。

熟睡を重視して、今は別々の寝室で寝ています。

このルール変更も、最初は、

「一緒に寝るっていうルールでしょ!」
「なんで⁈」
「嫌だ!」
「じょーじが決めたルールじゃない!」

と、それはそれは大変で、1度、ルール変更をあきらめたほどなのです。


今では別々の快適さを、僕以上にゆかりちゃんが享受しております。

僕は、
「それほどまでに『僕と一緒に寝たかったの?』と思ったんだよね~」
と、そのように友人たちに話します。

聞き手に僕のトークはウケませんが、そのあとの、ゆかりちゃんがアタフタする様子が、みんなの笑いをゲットします。


◆〆

パンセットB事件は、今、ゆかりちゃんの中では、どうなっているのでしょうか?

僕の予想では、

「じょーじは、細かい!」

って感じだと思います。


僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのです。




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奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家
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