第4話　わたしを見て！

今日、僕は、朝から麻雀だった。

会社の大先輩たちに誘われ、4人でやる3人麻雀。1日中戦った。

昨夜のゆかりちゃんは、なにやら、あちこちに出かける計画を立てていた。僕がいない休日を、まるで「自由って、サイコー！」と語っているかのように、楽し気に予定を組んでいた。

帰宅したら、ゆかりちゃんが

「わたしを見て！」

と言った。

なんだ？　脱ぐのか？

そんなのは20代の女性が言うと、めちゃめちゃ嬉しいセリフだが、お互い50代だよ？

ゆかりちゃんは、僕の正面に立った。

もう一度、

「わたしを見て！」

と言って、僕の手をとった。

・・・この流れは？　・・・目を閉じるのか？

「今日は、スッピンなの！」

「エステに行ったら凄いの！」

「今日は、ものすごく顔がキレイなの！」

「肌がキレイになったの！」

「お、おお！」

僕は、もう一度、「お、おお！」と、言った。

というのは、ゆかりちゃんは、普段から肌がきれいなのだ。スベスベなのだ。今日が特別きれいかというと、僕には違いがわからない。いつも、きれいなのだから。

でも、わからないとか、変わらないとか、そんなことは言わない。

そんなヤボは、言っちゃいけないのだ。

それゆえの「お、おお」なのだ。ウソをいうことなく、ゆかりちゃんの意見を肯定しているのだ。

すごく満足気な、ゆかりちゃん。今度は、ひとりごとを言っている。

「このきれいな顔。写真に撮っとこ」

そして、スマホで自撮りをはじめた。

そして、

「・・・写真じゃ、わからないなぁ」

と、ボヤいている。

僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。