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おかみさんの努力は認めます(神業です)が、店主の努力は疑問でした

僕は、昔からラーメン好きです。
18歳からです。だから、ラーメン歴38年です。

美味しいとウワサのラーメン屋さんや、新規オープンしたラーメン屋さんには、ほぼ100%食べに行きます。

大好きなラーメンは、豚骨ラーメン塩らーめん家系ラーメンです。
一風堂さん鶴亀堂さんは大好きです。
塩らーめんは、春日井市の山汁ラーメンさんが大好きです。
家系ラーメンは、特に、壱八家さん松壱家さんが大好きです。愛知県春日井市なら一松家さんも美味しいです。

最近は、鶏白湯ラーメンも好きです。
ただ、鶏チャーシューは、まだ僕は、その美味しさを分かっていません。
どうしてもまだ僕は、豚チャーシューの方が好きです。

さて。
今日は、ラーメンを作る店主ではなく、おそらくは、その店主の奥さま。
おかみさんの【神業】をご紹介いたします。

実話です。


◆とある商店街

仕事の現場が、商店街にある店舗でした。
12~13年前のことです。

その現場のナナメ向かい側に、ラーメン屋さんがあったのです。

38年もラーメン屋さんに入り続けてきた僕には、入る必要のないラーメン屋さんが外観だけで分かります。

見た目がオシャレで良さげな外観のお店であっても、なぜか、本物か偽物か分かっちゃうのです。
※注意:本物or偽物の定義は、僕の独断と偏見です。

その商店街のラーメン屋さんは、全店入店済みになっていました。
現場ナナメ前の、例のお店を除いてです。


◆スタンド看板

入らない、と決めてあったのに、そのラーメン屋さんに目を向けてしまいました。

店の入り口は、ガラスの引き戸です。横に「ガラガラ」と引いて開ける、アルミサッシの出入口でした。
ガラスは、たぶん型板ガラスとかいうヤツで、デザイン(模様)があるのでハッキリとは見えないガラスです。明るさは透します。

その入り口の前に、スタンド看板がありました。
メニューが書かれているようです。

「ラーメン以外に、なにかあるのかな?」

と僕は思って、つい、近づいてしまいました。


◆店内

僕は、そのラーメン屋の店内にいて、席に座っていました。
座ってしまってから、僕はひどく後悔しました。

店内も、入る必要のないラーメン屋さんの特徴だらけだったのです。

コップも、やや曇っています。店内全体が全て霞んでいます。
テーブルは、ベタついたりはしませんでしたが、クロスが色褪せていました。


「中華料理店」なら、救いがあります。
ラーメン以外の、例えば、レバニラ炒めは美味しいかもしれません。

しかし、メニューを見ると、完全にラーメン屋さんでした。

醤油ラーメン
塩ラーメン
味噌ラーメン
餃子
ビール
ジュース

というメニューだったのです。

常連客が1人だけいて、店主と世間話していました。


僕は、なぜ、入店してしまったのか?
記憶を巻き戻してみました。

≪記憶の確認中≫
看板のメニューを見ていたら、ガラガラとガラス戸が開いて、
「どうぞ~、中にもメニューがありますから…」
と、おかみさんが言って……。

その声のボリュームはとても小さく、商人らしい笑顔もなかった……。
愛嬌タップリの逆、愛嬌ひかえ目だったなぁ。
(そんなんじゃダメじゃないか)って、一瞬思ったっけ……。

で、なぜ僕は入店した?
吸い込まれたのか?
魔法か?

回れ右して離れるか、苦笑いして離れるかする予定だったのに。
目的のメニューも、ちゃんと見ていなかったし……。

タイミングが絶妙だったのかな?
声が小さいのも逆に良いのか?
笑顔も、頑張りすぎていないのが、これまた良かったのかな?


僕の注文した醤油ラーメンを、おかみさんが持ってきてくれました。
やはり、笑顔はありません。もちろん無礼もありません。

なんの変哲もなく、アニメ『オバケのQ太郎』の小池さんが食べているような醤油ラーメンでした。

味は、僕の口には、まったく合いませんでした。
よほど空腹でない限り、「1,000円あげるから食べて」と言われても断るほどのクオリティーでした。

日清のラ王を出してほしかった。
そう思ってしまいました。


◆おかみさんの神業かみわざ(魔法)

女将さんの立ち位置が、出入口のガラス戸に近すぎます。
おかみさんは外を気にしているようです。

ガラガラ

「どうぞ~、中にもメニューがありますから…」

若い男性客が、吸い込まれるように入店しました。


あっ、と、僕は声が出そうになりました。

僕の時と完全に同じです。

こんなにもマズイ このお店がつぶれない理由は、おかみさんです。
おかみさんの、あの神業のおかげです。


観光客がたくさん来る。
リピーターを獲得しなくても良い。
そういう【地の利】もあります。

タイミングが早すぎても遅すぎてもダメなのでしょう。
声も大きいとダメだったのでしょう。
笑顔を頑張っちゃうと、入店率が落ちたのでしょう。

おかみさんは、真剣に、試行錯誤を繰り返したのです。
工夫し、改善し、技を極めたのです。

そうやって身に付けた【神業】なのです。

僕は、女将さんの努力に、頭が下がる思いでした。


◆再検証

僕は、この話を、現場スタッフに語りました。
みなさん、「たまたまだろう」と、本気にしてくれませんでした。

翌日の昼休みに、僕は、ちょっとその店を観察してみました。

観光客のカップルが、看板のメニューを見ている。

ガラガラ

入店した。

やはり、おかみさんは、ベストタイミングを心得ているのです。

僕が観察した約10分間弱で、3組の通行人が入店しました。
成功率は100%だったのです。


さらに数日後、この話を信じてくれなかった現場スタッフと、今度は一緒に観察しました。

通行人が看板に寄る。
見る。
ガラガラ
入店。

これが2回連続で発生。

スタッフも、「マジか?」と、驚いていました。


◆〆

このラーメン屋さん、まだ営業しているかなぁ。
ネット検索したなら、お店はまだありました。

今度、神奈川県に行ったなら、何がなんでも、また観察したいなぁ。


これまで僕は、この話を数人に語ってきました。
だいたいは、笑っていただけます。
驚いてもいただけます。

【少し話を盛ってるのだろうなぁ】と思っている気配を感じます。

でも、本当にこのまんまなのです。
話は一切盛ってません。


この話、なぜか、ゆかりちゃんにはウケませんでした
しばらくしてから、また話したら、そのときはウケました。

1回目、何があったのでしょうか。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。






おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1333話です
※この記事は、過去記事の書き直しです


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奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家
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