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第467話 夫を殴りニヤニヤがダダ漏れの妻⁈ 佐々木健介さんの愛を見習えば、そんなのは屁でもない(書き直し集-その24)

※ この記事は2020年5月の記事の書き直しです。


◆油断大敵です

僕たちは、リビングでテレビを観ていました。

僕はソファーに座っています。
ゆかりちゃんは、ソファーには座らず、フローリングにぺたんと座っています。
ゆかりちゃんが、「厚手がイイの」と、こだわって選んだラグが敷かれていて、きっと、お値段以上の座り心地なのでしょう。

僕としては、せっかく、無垢の杉のフローリングですので、ラグを敷くのは、もったいないと感じます。
でも、
ゆかりちゃんの【たっての希望】ならば、僕はラグを敷いても構いません。


ゆかりちゃんの座り方は、正座から右に崩した、いわゆる女の子座りです。
時々こうして、直接床に座って、ゆかりちゃんはソファーにもたれます。

位置を説明すると、ゆかりちゃんは僕の左前です。

僕はソファーに座っているので、ゆかりちゃんの顔は、僕のお腹あたりの高さに位置しています。

唐突に、ゆかりちゃんが変な動きを始めました。

左手を握り、グーを作って、
左ひじをたたんで、
そのグーを、左肩に近づけます。

腰を起点にして、背骨を軸にして、左肩を右に回しまします。

ゆかりちゃんの顔が、後ろを振り返りました。
そのタイミングで、左腕が伸びる⁈

ドスッ!!

回転の効いた凄いボディーブローが、僕の下腹部に決まりました。

「お、おお、、」

僕は驚き、少し呻きます。
ちなみに僕は、この時、なにもしていません。失言も無礼も、なにもしていないのです。

ただ、静かにテレビを観ていただけ…。

「お、おお、な、なんでぇ~⁉」と、訊ねたなら、

「あかんなぁ~。常に用心しとかないとぉ~」

と、ゆかりちゃんは言うのです。

顔がドヤ顔です。


*** *** ***


それから、おおよそ15分後くらい経った頃、

「あ~っ! イライラする!」

と、ゆかりちゃんが大声で言いました。

「どうしたの?」と、聞きました。

「いじっている魚の目が、取れそうで取れない!」

と、ゆかりちゃん。


*** *** ***


そして、また15分後。

「わ♪た♪し♪は♪わ♪た♪し♪よ~~~♪」

と、ドレミファソラシド⤴♪ の音階で、突然、ゆかりちゃんは歌い出しました。

楽しそうに、満面の笑みです。

僕は、ためしに、「下がってみて」と、リクエストしました。

ドシラソファミレド⤵♪ と、音階を下がってみてという意味なのですが、まったくもって、理解してもらえませんでした。

なので、
「ド♪シ♪ラ♪ソ♪ファ♪ミ♪レ♪ド~⤵♪」と、僕は歌いました。
そして、説明を試みます。

「このメロディでさっきの、『わ♪た♪し♪は♪わ♪た♪……

ドッヴォ!!


ウゴッ、オ、オ…」

「あかんなぁ~、油断しちゃぁ~」

また、強烈なボディブローを入れられました。
さっきより、1.5倍、強烈です!

しかも、説明の途中です。
説明し切れていません。

今度のゆかりちゃんは、ドヤ顔が不完全です。
怖いドヤ顔をしているつもりなのでしょうが、込み上げる笑いに負けてニヤニヤがダダ漏れです。

楽しそうです。

それにしても、
ゆかりちゃんが僕の左前に座ったなら【油断してはイケない】って、何なのでしょう。

突然、「そんなルールだ」と、
なんなら、「以前からそういうルールだったじゃないか」と、そんな雰囲気をゆかりちゃんは、かもし出そうとしています。

自宅のリビングのソファーに座って、リラックスできないって、一体どういうことなのでしょう?
リビングはリラックスする場所であり、ソファーはリラックスするための物なはず。

さらに、、
世の中に、不意にパートナーから【強烈なボディブロー】が来るかもと、四六時中警戒している人って、いるでしょうか?

そんなの、佐々木健介さんくらいじゃないかな?

ゆかりちゃんが、北斗晶さんみたいになるのは、僕としては、かなり困惑します。
でも、それがゆかりちゃんの【たっての希望】ならば、その時は僕も肚をくくって、健介さんを目指すしかないですね。

だって僕は、
無垢の杉のフローリングにラグを敷いても、
突然ボディブローをしてくるとしても、
北斗晶さんみたいになったとしても、

僕は、ゆかりちゃんが大好きなのですから。




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